※これは古い記事です。
あたらしい記事はこちら

【2010/06/27UP】

このところ、なんとなく、邦楽の、とくに新世代の女性Artistの質感が変わってきているよな気がします。
ワールドカップみつつ、つらつらと考えてみました。

いちばんは、ハイトーンになったこと。
これは安室奈美恵、華原朋美、観月ありさ、globeなど、「小室ファミリー」といわれた一連の女性Vocalistの影響があると思う。
彼女らの超ハイトーン曲をふつうにカラオケで唄っていた次世代層が育ってきたということか・・・。

■ 歌ってみた Can You Celebrate


■ 歌ってみた I'm proud


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たとえば安室奈美恵の『CAN YOU CELEBRATE?』。
曲の構成はPOPというよりむしろプログレ的な大作で、音域も広くどうみてもトーシロの手に負える曲じゃない・・・。
にもかかわらず、その曲は売り上げ、カラオケランキングともに数々の記録を打ち立て、紅白ではダントツの瞬間最高視聴率を記録した。
こんなシンガー泣かせの難曲が、当時カラオケでバリバリに歌われていたというのはある意味驚異だ。(1997年オリコン年間カラオケリクエスト回数1位)
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CAN YOU CELEBRATE? - 安室奈美恵


■ハイトーンヴォーカルの例(I'm proud - 華原朋美)

→ 〔直リンク〕 (埋め込み無効の場合)

でもって、声質がやたらフェミニン。
Rapにはたおやかな女性Vocalが意外に合うが、そういう背景もあるのだと思う。

つぎに、音数、というかことば数が多いこと。
'80年代だったら「わすれかけてた~」が、「わあすれかけてえた~」となって、ひとつの音にのることばの数が圧倒的に多い。
これは絶対、Rapの影響があると思う。じっさい、彼女らとRapのコラボ(ふつうfeat.~~とされる)はやたらに多くて、MC(韻を踏んだRap)なんぞもふつうに入ってくる。
(例.↓の02や07)

んでもって、すこぶるR&B or ヒーリング。
小室ブームのあとのJ-POPシーンは一気にR&B寄りに振れたが、いまでもMariah CareyやWhitney HoustonをFavorite Musicianに挙げる女性Artistは多い。
海外育ちのバイリンちゃんもかなりいて、発音もほとんどネイティヴ。

2010年以降増えてきているのが、ケルト的なヒーリング感覚あふれるもの。ラテン系や無国籍言語?などもつかっていて、不思議系かつ清楚系。
とくに声優系はこの流れが多い。

最後に曲構成。
イントロ~Aサビ~Bサビ~ブリッヂ~A'サビ~エンド、つうよ~な従来型の構成じゃなく、「サビがあるのかないのかわからないが、なんとなくずーっとサビにきこえる」といった、ひねった曲が多い。
これもRapやTranceの影響があると思う。

↑の例
■ Lisa Halim - いつまでも... feat.中村舞子

難曲。そうとうテクいると思う。

この4つの特徴が合わさると、どうなるか・・・。
そう、歌が巧くないと、とても聴けないシロモノになる。
でも、巧ければ女神的オーラを発し、空中を浮遊するような、SPLASHするような独特の高揚感をもたらす。

で、そんなやつを意識して聴いてみると、だれもかれも、巧い巧い!!
でもって、ルックスばっちりの歌姫系(^^)

そんなわけで、今回は、彼女たちを”女神系歌姫”、創り出す音楽を”ハイトーンJ-POP”と銘打って、10曲ほどリストしてみました。
(リンク切れもありますが、この時点での記録(リスト)としてそのままにしておきます。)

気にいったら買ってあげてね。
※ YouTubeの試聴(クリック)は自己責任にてお願いします。

01.23:45 - Juliet

■ なにかとナゾの多い女性3人のユニットで「ナツラブ」「フユラブ」「ハルラブ」の連続ブレークで知られる。なにもかにもがやたらにエモーショナルな佳曲。

02.会えなくても feat. 西野カナ - WISE

→ 〔直リンク〕 (埋め込み無効の場合)
■ HIPHOP系ユニットWISEが西野カナをfeat.。ときおりファルセット気味になる艶のある声質が個性的。

03.明日へ架ける橋 - Mai Kuraki

■ 押しも押されぬメジャー系。圧倒的な存在感はやはりタダモノじゃない。ちと変わった曲調の難曲だがサラっと唄いこなしてる。

04.ONE DAY - m-flo(feat.加藤ミリヤ)
<Web動画復活!>

■ コラボの多い2人ユニット(以前は3人)m-floが加藤ミリヤをfeat.。
デビュー当時、ポスト宇多田ヒカルと呼ばれただけあって、R&Bテイストの炸裂ぶりはハンパじゃない。はっきりいって、このLIVE凄いわ。。。

05.Eternal Empire -The Emperor Grants You Audience- (Suikoden Celtic Collection 2) - 上野洋子


(おまけ)協和発酵 焼酎「かのか」CM (曲名:「風と花と光と」)

■ 焼酎「かのか」のCMで透明感あふれる美声が注目をあつめた。
プログレ系ユニットZABADAKのVocal出身のためか、ソロでも難解な曲が多いが、類まれなヒーリングヴォイスなので「かのか」のような澄み切った曲をもっと唄ってほしい。

06.KONAYUKI - 阪井あゆみ

→ 〔直リンク〕 (埋め込み無効の場合)
■ モデル出身だが声質にすぐれ、今後の期待株。けっこう曲にめぐまれている。

07.うまく言葉にできないけれど - SoulJa feat. 果山サキ

■ 女性Voのfeat.を得意とするRAP系ユニットが果山サキをfeat.。
よく知らない人だが、メリハリの効いたハイトーンが優。典型的なRAP+女性Voの佳曲。

08.Trust You - 伊藤由奈
<Web動画消滅>
■ ハワイ生まれのバイリンちゃんでとにかくやたらに巧い。しかもいい曲をかなりもってる。Mariah Careyの大ファン(from.wiki)らしい。

09.ずっと二人で - BENI

→ 〔直リンク〕 (埋め込み無効の場合)
■ 沖縄出身。旧安良城 紅。童子-Tともけっこうコラボってる。ややハスキーだけどフックのある声質で上智出身の知性も感じられる(^^)

10.サダメラレタウンメイ ~Predestine 19~ - PLΛTINUM

■ 女性3人組の新鋭ユニット。Vocal2人のハモりが絶品でMCもよく効いている。
途中のRAP部分がなければ格好のヒーリング系チューンだが、これがないとダメ?

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【ボカロとアニメとセツナ系】【2014/07追記UP】
(別記事■ utsuboの音楽のバックボーン-5から抜粋・編集)

2007年以降「初音ミク」(歌声合成DTMないしVOCALOID(ボカロ)系キャラクター)を媒体として多くの楽曲が創作され、なかには非常にレベルの高いものもあり、これがJ-POP(ないし、アニソン系)のサウンドクリエイターの層の厚さを築いたことは確かだと思う。
ボカロは、イメージそのままにハイトーンやビブラートなどを駆使した曲がつくれるとされ、その意味では(人が)歌うのはむずかしいが、歌いこなせればきわめてクォリティの高い楽曲となる可能性を秘めている。
この切り口からもやはり高い歌唱力をもつ女性Voが求められ、実際につぎつぎと育ってきているのだと思う。

そのわかりやすい例が”歌い手”。
彼女らは、「歌ってみた」という切り口から、おもにボカロ系の難曲を優れた声質と高いテクで歌いこなし、従来からの音楽好きをもうならせている。
そして2014年現在、ボカロや歌い手を抜きにしては日本の音楽シーンを語れない状況となっている。

オリジナル・VOCALOID(ボカロ)/GUMI


歌い手/花たん ※ 曲の魅力をきわめて高い歌唱力で見事に表現している。


また、サンプリングされた楽器パートを「弾いてみた」というかたちでコピー、アレンジするプレイヤーも増えていて、そのレベルもまたまたハンパではない。


■ supercell 「君の知らない物語」(Cover Vers.、原曲は2009) / 繊細なメロで構成される曲の例 (ナゾの動画だが、これアマチュアさんのセッションだとしたらそうとうなレベルだと思う。)

日本のアニメは各国で高い評価を得ているが、それはストーリー展開やキャラクタ-設定の巧みさ、緻密なグラフィック技術とともにアニソンの果たす役割も大きいのではないか・・・。
また、アニソンはその性格上、ストーリー性や情緒感をもつものが多く、それがリスナーの感情に訴えやすいということもあると思う。(日本独自の繊細な風土や思想などをモチーフにするものも増えてきた。)
また、声優がアニソンを歌う例も多い。声優はもともと声質や表現力に優れているので、ハンパな歌手など軽く凌ぐ歌いぶりを聴かせてくれることも少なくない。


■ 園崎詩音(雪野五月) 「you / thanks (ひぐらしのなく頃に)」 / ゲーム・アニメ系のストーリー性高い曲の例

併行して、J-POPでも「セツナ系」といわれるフォーマット(というか曲調)が人気を集めている。これはメロディや歌詞が「せつなさ」を感じさせるもので、やはりリスナーのパーソナルな感情に訴えかけるものだ。
「セツナ系」は西野カナ、加藤ミリヤ、JUJU、中村舞子などの「女神系歌姫」が代表格とされ、hip hop/Rap系ユニットとのコラボ(ふつうfeat.とされる)による名曲が多いのも特徴で、中村舞子のように自身のメジャーデビューよりも先にfeat.曲で人気を集める例もすくなくない。


■ Because... feat. 中村舞子 LGYankees (2008) / feat.型「セツナ系」の代表曲

こうしてみると、J-POPでは「繊細な情緒感」がすこぶる高くなってきていると思うが、これはかつての「四畳半フォーク」や演歌などの「マイナーコードを多用してしっとりと歌い上げる」というものより、むしろメジャー系コードやRap、ブレイクビーツなどをつかいつつこれを醸成していくものが目立つ。 (淡々と流れながらも泣ける・・・ ^^)
「メジャー系コードやブレイクビーツをつかいつつ、繊細な情感を出していく」というのはできそうでなかなかできないので、ここでもJ-POPのレベルの高さがうかがわれるのでは・・・。


■ 志方あきこ 「西風の贈り物」 (2005)

2008/06にはAOR系の名曲紹介をYouTubeブログ埋め込みで紹介しているので、この頃にはWeb音楽環境はいまとほとんど変わらない状況にあったと思う。(アップロード曲は格段に増えているが・・・)
いずれにしてもYouTubeやDailymotion、あるいはスマホで縦横無尽にWeb検索できるようになったことが大きい。
ゲーム系、アニメ系やボカロ系などは、これがないとほとんどアプローチ不可だと思う。「レコチョク」でも限定配信曲がかなりあるので、やはりWeb動画の存在が大きくなる。とくに「セツナ系」はレコチョクから火がつくことが多い。(Web動画で視聴できるものがかなりある。)
Web動画検索は同系の雰囲気をもつ楽曲を関連検索でがしがし引っぱってくるので、無名Artistをプロモートする効果も高いと思う。
さらに、「ニコニコ動画」にログインすれば、ハイレベルの”歌い手”たちのテイクがずらりと並ぶ。


■ Revo & 梶浦由記(&FictionJunction) 「Dream Port Live 砂塵の彼方へ」

2006年以後、「女神系歌姫」系は声優系Artistやボカロ系の”歌い手”を巻き込んで質・量ともに充実の一途をたどり、視点によってはいまや世界屈指のレベルにあるのではないか。
J-Popもまだまだ捨てたもんじゃない。というか、ひょっとするとこれから今までにないあらたな頂点に向かうのかもしれぬ・・・。

■ utsuboの音楽のバックボーン-1
■ utsuboの音楽のバックボーン-2
■ utsuboの音楽のバックボーン-3
■ utsuboの音楽のバックボーン-4
■ utsuboの音楽のバックボーン-5

■ 女神系歌姫 【Angel Voice列伝 】のリスト