コンセプトとビジネスモデル 第1回 小売業のコンセプトの変化
今回は、起業する上で最も重要な「コンセプトとビジネスモデル」について語ろう。
(まぁ・・・Pslamさんのリクエストが発火点だが・・・いづれやろうと思っていたのでいい機会だ)
コンセプトとビジネスモデルについては、最も重要でありながら、実のところキチンと理解していない起業
家が多い。
最も重要な事なので、複数回の記事とする。
長くなる覚悟しておくれ(笑)
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■コンセプトとは、発想、構想、概念の事だ。
■ビジネスモデルとは、その構想をビジネスとして実現させることだ。
ビジネスが実現するということは、コンセプトを発想して、そのコンセプトを顧客に理解させ、顧客の財布
を開かせ、サービスまた商品を提供するまでの全過程のビジネスの仕組み及び収益構造を指す。
できれば肌感覚で掴み、新しいビジネスの着想や発想が生まれたとき、その発想は、ビジネスに本当
になるのか?採算は合うのか?
と考える際に、ビジネスモデルに落とし込む癖をつけると・・・その新しく閃いたコンセプトが花開くかどう
か、おおよその見当はつけられるようになる。
起業家にとって極めて大事な癖だ。身につけよう。
本当に身につけられれば、このブログを読む必要などなくなる。少なくとも私の説教じみた部分は(笑)
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■wikiにも載っていない本当のビジネスモデルの歴史
20年も前には、ビジネスモデルなどという言葉などなかった。ビジネスモデルなる言葉が如何にできて
きたか、順を追って考察していこう。
こんなこと・・・wikiじゃ載ってない(笑)断片的には載っているが・・・統計だてて学べないだろう。
ビジネスモデル・・・・
ビジネスモデルをきちんと理解するために・・・例としてわかりやすい流通業を取り上げる。
IT業なんて取り上げたら・・・何がなんだか・・複雑すぎて・・・だろ(笑)
もちろん、名前は違えど「金の儲かる仕組み」として、19世紀にも儲かる仕組みはちゃんと存在していた。
歴史を覆すような大きな技術革新が起こった時は、必ずと言っていいほど、ビジネスモデル(金の儲かる
仕組み)も劇的に変わっている。
「鉄道」という交通手段の大きな技術革新は、石油を発見する事よりも、それを運ぶ輸送手段として鉄道
をいかんなく利用したロック・フ○ラー(禁止語句なので○)を世界一の金持ちにのしあげた。
ロックフ○ラーのコンセプトは、石油業界でNO.1になるといったシンプルな野望であったかもしれないが、そのNO.1になる為の手法はM&Aや鉄道という新しい輸送手段、垂直統合と・・・多岐にわたる。
大量生産と大量仕入れがやっと可能になりつつあった米国に鉄道という新しい技術革新が訪れたこと
は、画期的な起業家を多数排出させるきっかけになった。
いつの時代も画期的なビジネスモデルは、最新技術を見事なまでに取り込む。
リチャード・シアーズという男は、ミネソタ州のノースレッドウッドという駅の駅長だった。
1886年、ひょんなことから、シカゴの宝石商からの腕時計が大量にノースレッドウッドの業者に間違って届いてしまった。地元ののその業者は、「そんな間違って届いた時計はいらん。」と言ったので、駅長であるリチャードがその腕時計を買い取り、駅長仲間に売りさばき、結構の儲けを出した。
気を良くした、リチャードは、駅長をやめ、なんと腕時計会社を始めてしまった。
リチャードは時計には素人だったので、修理のできる人物を募集したところ、求人にアルバー・C・ローバックという男が働きたいと来た。
二人は、郵送で腕時計を販売し出した。
当時、米国の農民が住んでいるような地方には、まともな販売店などなかった。
腕時計からはじまった商品は、みるみる間に広がり、扱い品目は20万点にもなった。
786ページにもなる分厚い商品カタログには、何十種類のコーヒー、紅茶、缶詰、家具、100種類を超えるスパイス・・・果ては銃まで載っていた。
カタログは、米国の地方の人々に無料で配られ、さながら、米国の希望ある将来と豊饒の文化の象徴の百科事典のようであった。
この会社は、当時の世界最強の通販会社 「シアーズ・ローバック社」である。
その影響力は、現代のアマゾンより上だったであろう。
シアーズ・ローバックのコンセプトとビジネスモデルをおさらいしよう。
コンセプト
当時、米国の地方は、まともな販売店も、まともな交通手段もなかった。
街に一軒あるかないかの商店で、人々は商店主の言い値で商品を買わされていた。もちろん選択技もない。
そんな地方の消費者(購買飢餓難民とでもいうか)に対して、地方の売店に取って代わろう。購買飢餓難民に、豊富な選択技と簡単な入手方法・・・そして適正な価格で、うれしい、楽しいショッピングを提供しよう。というののである。
ビジネスモデル
大量仕入れによる、仕入れ料金の低下、すなわち価格を下げた。
膨大な量の商品をカタログに載せ、それを無料で顧客に配った。そのカタログ事態に価値すらあった。
大量の顧客の注文、配送の一元化と効率化。
驚くことに、シアーズ・ローバックは、このころすでに、あまり販売頻度が少ないものは、メーカーから直
接配送させていた。各種のメーカーの販売代理店も多数行っていた。現代のアフリエイトに近いことをす
でに行っていたのだ。
恐るべし!
膨大な種類の商品の仕入れ、膨大な在庫管理、顧客の注文から、期限通りの発送。その新しく開発さ
れた顧客管理の技術や倉庫管理システム、ベルトコンベアや各種の装置を利用した極めて効率のいい
商品を売りさばくシステムは、後に「サプライ・チェーン・マネジメント」の元祖となり、ヘンリー・フォードも
後の車の大量生産システムの参考にしている。
シアーズローバックのその後
そのフォードのおかげで、鉄道だけの社会から車社会が訪れると、農村から大都市へ人々は移り住んでいく時代となる。
シアーズ・ローバックは相変わらず最強の通販会社に君臨し続けたが、時代の変化にも対応している。
試しのつもりで、通販会社の自社ビルの片隅で、直販店を開店した。
1928年ごろには、その異常なまでの選択技の多さと低価格を提供する巨大販売店は、またたくまに、人々を魅了し、全米で27店舗を数えるまでになる。
世界初の大規模小売店である。
その後、このモデルは現代の世界最強小売業のWalmartが引き継ぎ、日本には、当初デパート(百貨店)として伝来し、その後郊外型チェーンモデルとなる。
もちろんGMS(ゼネラル・マーチャンダイズ・ストア)の原型である。
シアーズ・ローバックのコンセプトとビジネスモデルで重要な点・・・ここで起業家(スタタン大学在校生)が最も注目しなければならない点。
・・・は、何であろうか?
宿題にしよう。
と言うたいところだが、述べておこう。
コンセプトにおいて・・・重要な点
それは、シアーズが売ったものである。(クリックする前に少しは考えて欲しい 笑)
シアーズが売ったモノは、物ではない。
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1909年・・・ウールワースが開店している。
この店は、まだ、バラエティストアの範疇を出ていないが、画期的なのは、エブリディ。ロープライスの走りだと言うことだ。
食品以外のあらゆる商品を取りそろえ、店舗の商品構成を統一、店舗形態の統一を行い、なんと本部一括仕入れを行った世界最初の小売業である。
チェーンの走りであり、米国人も、イギリス人も、このウーリーズ(愛称)で、親に連れられ、人生最初の飴やチョコ・・・レコードを買ったと言う人は多い。
1916年・・・クラレンス・ソーンダースという起業家が、画期的なことを考え出した。テネシー州のメンフィスでの1号店での出来事である。
当時の店の形態は、全て対面販売・・・たまに西部劇で見るだろう・・・あれだ。
それを、このクラレンスはやめた。
世界初のセルフサービスを考え出したのだ。
おかげで、クラレンスは、多数の特許を習得し、大変な金持ちになった。
閉店後に商品を陳列し、オープンには、商品が店舗にずらりと並んで、客は自由にそれを手に取って品定めができる。
これはビジネスの性善説・・・大切な商品が盗まれやしないか・・・という性悪説を覆す方式だった。
1930年・・・世界最初のスーパーマーケット・・・「キングカレン」がNY州クイーンズにオープンする。
歴史的な出来事だ。
クローガーという当時の有名食料品店の社員がやめて・・・オープンしている。
明日に向かって撃てのウォーレン・ビューティーが強盗でもしそうな店だが、れっきとした世界初のスーパーマーケットだ。
コンセプトは、「高く積み上げ・・・安く売る!」
う~んわかりやすい!
でも、当時としてはとてつもなく斬新だ。
キングカレンの店内の写真が見つけられなかったので、別の当時のスーパーの写真を・・・
キングカレンが、意識していたのは、ほぼ間違いなく、当時、人々が食品を買っていた「市場」であることは間違いない。
魚屋、肉屋、八百屋、乾物屋・・・・集まる市場に対してのカウンターカルチャーである。
起業家は、いつの時代も、メジャーを叩く!
ビジネスモデルは
大量仕入れの低価格
ウールワースのクラレンスが考え出したセルフサービスの採用
ショッピングカート(画期的!)
そして・・・そして・・・ワンストップショッピングだ。
あたり前だが、当時の主流の「市場」はワンストップショッピングだった。それを超えるには、絶対必須だたんだろうな。
そう思うと必然的ワンストッピングが発生したのがわかる気がする。
このキングカレン、もうひとつ活かしたことをしている。
顧客の為に駐車場を用意しているのだ。
このキングカレン・・・大ヒットして、あっという間にチェーンになった。
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1950年代には、早くも・・・顧客囲い込みを念頭にしたスタンプカードを考え出すやつが出始める。
そして、時代はモータリーゼーションと共に、ショッピングセンターなるものを作り出し、果ては、宇宙的な
品数を誇るハイパーマートなるものまで、創りだすことになる。
行きつくとこまで、行った感のある流通業・・・・・・・・・スケールメリットは限界に・・・・
いやいや・・・・・
起業家の知恵は、際限がない。
顧客を会員制にして・・・卸売業者のように扱い・・・
ホールセラーという業種が現れる。
ディスカウンターの登場である。コストコなんかが有名だな。
そして・・・
スケールメリット・・・すなわち・・・あまりにも大きくなり過ぎた店舗・・・
巨大になり過ぎた恐竜に・・・
端から端まで行くのに・・・店内をすべて見るのに、何時間かかるんだよ!・・・という顧客の声に答える
やつらが現れ出す。
それは、都市の新しい生活スタイルに合った提案をし出す。
「真夜中のカーボーイ」って映画知ってるか?
人々は・・・夜の8時には寝てた時代から・・・大都市では・・・うろうろする奴らが現れ始めた。
っで・・・
1946年・・・
ウチハ「7時から11時までオープンしてますよ!」という店ができた。
サウスランド社のジョン・グリーンが、7-elevenという名称で店舗をオープンさせている。
もっとも、7-elevenの名前の前に冷蔵庫の氷を売る販売店として、休みなし・・・つまり今では当たり前
の「everyday open 」の長時間営業をやって、顧客に受けたのが理由だったと記されている。
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こうして見ると、すぐれたコンセプトが世に出るときには、必ずといっていいほど、技術革新と共に人々のライフスタイルの変化を伴っている。
シアーズの鉄道しかり、スーパーマーケットの冷蔵庫の普及、都市型生活者の増加など・・・
第二に、その当時の「メジャー」なる、販売方法(ビジネスモデル)が時代の変化についていけなくなり、
経年劣化を起こした間隙をついて、カウンターカルチャー的に新規のコンセプトが生まれている。
一連の流通業の簡単な歴史を通して、コンセプトの変化とビジネスモデルの推移をみてきたが、まだ、
「ビジネスモデル」という言葉は世に出てこない。
次回は、ビジネスモデルという概念が世に浸透する事に、もうひとつの概念が必要であったこと、そし
て、3つのピザ屋のビジネスモデルを詳細に比較検討することで、商売の仕組みとはなにかを考察しよう。
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表題の写真http://obviousmag.org/en/archives/2010/04/trespassing_on_beauty_-_photography_of_industrial.html