「一皿○○円」
回転寿司チェーン店の激安価格を可能にしているのは、寿司ネタに「代用魚」を使用しているからだと言われている(真偽については未知の領域だけれど)。
みんなが「タイ」だと思って食べていたのは、外国に生息している大きなナマズで、「アナゴ」だと思っていたのはウミヘビ。「マグロ」は、赤くて大きなマンボウみたいな魚で、「アワビ」は、なんとなく似てるけどぜんぜん違う種類の貝。本来はヒラメ一匹から僅かしか取れない「エンガワ」は、巨大な深海魚から大量に・・・
偽装魚従来は、流通・消費されることがなかった外国種や深海魚。消費者にとって、馴染みが薄い名前や姿の魚は敬遠されやすく、スーパーなど小売店の店頭に並べて販売されたりはしない。外食産業で切り身や加工食品として利用されるのが常で、代表的なのが回転寿司のネタなのだ。
これは偽装問題にならないのか?
ホテルやレストランなどの食品偽装が、大きく騒がれて社会問題化した時も、回転寿司のネタについては話題に上がらなかった。
よく考えてみると回転寿司の商品は、高級魚を謳って詐欺的に利益を上げているわけではない(これが重要なポイント?)。どこまでも格安な売値であり、消費者も「トロを一皿100円で食べれるハズはない」と理解していたりする。代用魚の使用を認識しつつ、「違う種類の魚だけど、安くて美味しいからアリ」と考えている消費者も少なくはない。
企業にとっては、高級魚と味が似ている商品をできるだけ安く提供しようという努力の結晶であり、また漁業経済においても、大衆魚の資源枯渇への対策にもなる優れたアイデアの一つなのだ・・・
「2,000円台で買えるワインが、市場価格2万円のワインに勝った!」
「約10倍もの価格のワインと比較しても引けをとらない。最高のコスパ!」
ワインショップの店頭やメールマガジンなどでよく見かけたりする、ちょっと大げさな広告。有名評論家が高得点をつけた、人気ワイン漫画に登場・・・などとアピールが凄い。
実際のところは飲んでみないと解らないけれど、こうした掘り出し物を探すのはおもしろい。ワインにも「代用」という考えを取り入れると、また楽しみが広がるかもしれない。
高級ワインを飲むことは、その名前のステイタスに酔いしれたり、文化や歴史・・・ロマンと一緒に夢のような味わいを愉しんだりと、魅力は計り知れない。しかし、毎日そういったワインのコルクを抜くことができる裕福な人はどれぐらいいるものか。普段はデイリー用のカジュアルなワインを愉しみ、何かの記念日にだけ特別に、ちょっと背伸びしてゴージャスな銘柄を注文する、といった庶民には、気軽に愉しめる「安くて美味しいワイン」が重宝されるのではないか。
ブラインドで、「ブルゴーニュ産の高級なシャルドネ」だと思った白ワインが、ワインショップで千円台で購入できる「南アフリカ産のシャルドネ」だった・・・「ブルゴーニュ産の高級なピノ・ノワール」だと思った赤ワインが、やはり千円台の「スペイン産の自然派ガルナッチャ」だった・・・ここ最近の個人的な体験。伝統や規定に縛られず、自由な発想で創りだされる新しいワインの品質が、どんどん向上しているように感じる。ある程度、ワインの経験値がある飲み手も、同じように騙されるに違いない。いろいろと「代用」できそうだ。
高級ワインも素晴らしい。でも手頃な価格のワインも常に「安かろう悪かろう」とは限らない。TPOに合わせて自由に選べば、楽しみは何倍にもなる。
デートや接待の時は、ちょっと敷居が高いカウンターの高級寿司店。ファミリーで気軽に楽しみたい時は、チェーンの回転寿司店。といった具合に使い分けるのと同じように。
余談。
先日、泥酔したお客様が飲み残した、ボルドー産の手頃な価格の赤ワイン。高級ワインのみを信仰する自称ワイン通なら、きっと歯牙にも掛けずスルーするであろうカジュアルなライン。グラスに注がれてから、テーブルに4時間以上放置されていた。
コルクを抜いた直後の味わいから、どれほど変化しているかが気になり、少しチェックしてみた。体力が無いワインなら、とっくに味わいのバランスが崩れているだろう・・・
これが予想外の状態だった。味わいも風味も、とても活き活きしていたばかりか、グラスの空間いっぱいにパワーが満ち溢れていた。今まで「ここがピークだろう」と決めつけていた、さらにさらに先に未知の美味しさが隠れていた。
名前や価格ばかりに囚われていると、おもしろい掘り出し物を見つけ損なう。本当に美味しいワイン。人を幸福にするワイン。今後もじっくり探してみよう。