イエメン風カブサ―チキンとじゃがいも入り炊き込みご飯 | COCOのおいしい話

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Kabsa ー 中東のお料理です。双子の姉のジャスミンと一緒に、サンフランシスコ近郊のS市に留学していた時に、イエメン人の彼とつきあっていた日本人のA子ちゃんに教わりました。

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付け合わせはちょっと中東を意識してひよこ豆入りのサラダにしました。野菜はきゅうりと黒焼きにして皮をむいた赤と黄のパプリカ。ドレッシングはヨーグルトに白ごまペースト少々、オリーブオイル少々に塩・こしょうです。

チキンはしっとり、じゃがいもホクホク、ご飯はふわっ。
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このお料理を初めて食べたのは、留学生のためのオリエンテーションのクラスの親睦パーティーでした。イエメン人留学生の家で開かれたのですが、彼の家の玄関に一歩入った瞬間から、嗅いだ事のない、エキゾティックとはこういう匂いの事ねと合点が行くような、何ともいえない芳しい香りが漂って来ました。後でわかったことですが、クミンやコリアンダーを始めとする、複合したスパイスの香りだったのです。

台所で男の子たち(中東から来ている女の子はほとんど見た事がありませんでした)が作っていたのは骨付きの鶏肉とお米を一緒に煮たお料理でした。ご飯が真っ赤に染まっていて、また、香港から来ていた留学生たちが「辛過ぎる」と顔をしかめ、キッチンのトラッシュに捨てていた(!)のを目撃した後だったので、「うわ、唐辛子がいっぱいなのかな」とおそるおそる食べてみたのですが、思った程辛くはありませんでした。これも後でわかったのですが、赤いのはトマトとパプリカの粉だったんです。

その後A子ちゃんと、彼氏のモハメ(とA子ちゃんは呼んでいました)と知り合い、仲良くなって食事に招び合うようになり、例のこの料理が「カブサ」という名前であること、イエメンの代表的なお料理である事を知りました。「代表的」 ー 何しろ、A子ちゃんが彼氏やその友人たちと一緒に食事をすると、出て来るのはいつもこれで、他の料理を作っているのは殆ど見た事がない、ということでしたから。

このお料理、使うスパイスは2種類だけなのですが、長いことそれがクミンとパプリカだとは分からなかったのです。A子ちゃんが使っていたのはモハメの実家から送って来るもので、彼は英語名を知らなかったらしく、A子ちゃんは「赤と緑のカレー粉」と呼んでいました。私たちも彼女から分けてもらって作っていたし、スパイスを使う料理などしたことがなかったので、見当がつかなかったのです。

その後姉と私はサンフランシスコに引っ越し、そこで大学生活を始めました。A子ちゃんとモハメは何度か遊びに来てくれましたが、その後彼らも別の街に越して行き、いつの間にか連絡を取り合う事も少なくなり…。後には「カブサ」のレシピが残りました。A子ちゃんがくれた「カレー粉」ももう無くなっていました。

色と香りを頼りに、姉とスーパーの棚でスパイスを見比べ、「カブサ用カレー粉」を探しました。クミンはすぐに見当がついたのですが、赤い方は色々あって迷いました。最初チリパウダーのあまり辛くないものを使ったりしましたが、どうも香りが違う。最後に行きついたのがパプリカの粉で、これがビンゴ!だったのです。

長くなりましたが。

チキンにはしっかり目に塩・こしょうをもみ込んで下さい。でもこのお料理で一番おいしいのは、チキンの味とスパイスの香りがしみ込んだ、ふわっと軽いご飯です(おっと、ジャスミンはチキンもおイモもゆずれない、といいます。つまり全部おいしいのです。)。あれば Basmati Rice が一番ですが、なければタイ米などのパラパラに炊きあがるお米を使って下さい。



イエメン風カブサ

<材料(4~6人分)>
*鶏もも肉(骨付き)4~6切れ
*じゃがいも 中くらいの物 2~3個
*玉ねぎ 中くらいのもの1個
*米(Basmati などの長粒種) 2と1/2カップ
*トマトの缶詰(小) 1缶(400gくらい)
*グリーンチリペッパー(セラノ、ハラペーニョなど)1~2本、なければ辛いししとう 3~5本
*あればシラントロ(=香菜、コリアンダー、パクチー)なければパセリ 刻んでカップ1/2~1
*にんにく 2片
*クミン 小さじ2
*パプリカ 小さじ3
*塩・こしょう
*サラダ油 適宜

<作り方>
1 鶏肉は皮があれば取り除き、しっかりめに塩・こしょうする。
2 じゃがいもは皮をむいて大きめの二口大くらいに切り、水にさらしておく。
3 玉ねぎ、チリペッパーはみじん切りに、トマトはざく切りにしておく。
4 大きな鍋に油を引き、玉ねぎのみじん切りを炒める。
5 にんにく、チリペッパー、シラントロを加え、更に炒める。
6 チキンを入れ、表面の色が変わるまで炒める。
7 水300ccとトマトを汁ごと加えて一度沸騰させる。
8 塩・こしょう、クミン、パプリカを加え混ぜ味を見て、かなり濃いめの味付けに整える。
9 水を切ったじゃがいもを加え、ふたをして弱火で20分程煮込む。オーブンを200℃(400°F)に余熱しておく。
10 米を加えて混ぜ、沸騰したらふたをして温まったオーブンに入れ、40分程炊く。

☆実は私はにんにくは入れないで作る方が好きなのですが、そこはお好みで。
☆トマトの缶詰はダイス状に切ってある物が便利です。
☆シラントロは煮てしまうとクセがなくなるので多めに入れても大丈夫です。
☆お米は洗わずにそのまま使います。
☆火加減で水加減も変わって来ます。お米を加えて混ぜたとき、全体がドロリとする感じが適当です。さらさらしていたらお米を、こてこてしていたら水を足して下さい。
☆手順は簡単ですが調理に時間がかかるので(2時間程)早めに取りかかって下さい。



その後A子ちゃんは帰国し、日本の方と結婚したと聞きました。

この料理を作るたび、私は彼女とモハメ、そして暑くて寒かったS市の乾いた空気を思い出します。

A子ちゃん、あなたは今、この料理を作る事があるのでしょうか? あのスパイスはクミンとパプリカだったよ。





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