アメリカ合衆国の対キューバ「制裁」について【2】 | PAGES D'ECRITURE

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フランス語の勉強のために、フランスの雑誌 Le Nouvel Observateur や新聞の記事を日本語に訳して掲載していました。たまには、フランス語の記事と関係ないことも書きます。

前回の アメリカ合衆国の対キューバ「制裁」について【1】 の続きです。



『経済制裁:キューバに対する残虐で不合理な政策の失敗』

Sanctions économiques
Échec d’une politique cruelle et irrationnelle contre Cuba
par Salim Lamrani


27 septembre 2007


(つづき)

保健衛生の領域も決して免れない。この分野での損失は3000万ドルになると評価されている。こうして、キューバ眼科研究所「Ramón Pando Ferrer」はハンフリー・ツァイスによって商品化されている網膜検査機器の取得を拒否されただけでなく、多国籍企業ノヴァルティスによって供給されている医薬品Visudyne(ビスダイン、加齢黄斑変性症の光化学療法に使用される薬)の取得も拒否された。同じ方法で、アボット研究所は小児向け麻酔薬Sevorane(セボフルレン、日本での商品名はセボフレン)の販売を拒否した。アメリカ財務省はまた、特に心臓不整脈(訳注:不整脈ではなく、心臓弁膜症と思われる)に冒された小児向けの人工心臓弁の販売を禁止した。教育、文化、交通、住居、工業と農業の分野もまた経済制裁によって大きく影響を受けた。

2008年のアメリカ大統領選挙の民主党候補、バラク・オバマは既に、キューバに押し付けられた経済的懲罰に反対の立場を表明している。オバマに続いて、コネチカット州選出の民主党上院議員で、同じく大統領候補のクリストファー・ドッドも同様だ。ドッドは大統領に選ばれたら、制裁を解除し、ハバナの大使館を再開し、ラジオとテレビマルティの破壊的で非合法な番組を終わらせ、不法移民を増進するキューバ人調整法を廃止すると断言している。「イラク戦争を除いて、これ以上に国際的に評判の悪いアメリカの政策は他にない」と彼は言明した、「下劣な失敗」と呼んで。

経済制裁の目的、それは常にキューバ政府を転覆させることだが、アメリカ間問題担当の国務次官補、れすたー・D・マロリーによって1960年4月6日に明確に定義されていた。当時のアメリカ間問題担当国務次官補、ロイ・R・Rubottomジュニアの覚書で。
「キューバ国民の大多数はカストロを支持している。有効な政治的反対勢力はない。(・・・)。(体制に対する)国内の支持を消滅させるための唯一の可能な手段は、経済的不満と欠乏によって幻滅と失望を引き起こすことである。(・・・)。キューバの経済力を弱めるために、あらゆる可能な手段が迅速にとられるべきである。(・・・)。非常に強い影響力を持ち得る措置は、キューバに対する全ての資金供給と物資の配給を拒否することであろう。それによって金銭的収入と実際の給料が減ることになり、飢餓、絶望を引き起こし、政府を転覆するように仕向けることになる」。

「この条約では、集団殺害とは、国民的、人種的、民族的又は宗教的集団を全部又は一部破壊する意図をもつて行われた次の行為のいずれをも意味する。」と規定する1948年9月9日のジェノサイド禁止条約が第2条で告発するように、それはまさしくジェノサイドの企てである。項目bとcはそれぞれ、「集団構成員に対して重大な肉体的又は精神的な危害を加えること。」と「全部又は一部に肉体の破壊をもたらすために意図された生活条件を集団に対して故意に課すること。」をほのめかしている。これ以上明確にすることはできないだろう。

半世紀近く続いている容赦ない経済的嫌がらせは、その任務に失敗した。フィデル・カストロ議長の引退にも関わらず、革命政権は依然として然るべき所にあり、かつてないほど強固である。キューバの独立は、不合理なだけでなく残酷な政策に固執させるほどに、ワシントンに常につきまとう一つの現実である。


Salim Lamrani
Enseignant, écrivain et journaliste français, spécialiste des relations entre Cuba et les États-Unis. Il a notamment publié Washington contre Cuba (Le Temps des Cerises, 2005), Cuba face à l’Empire (Timeli, 2006) et Fidel Castro, Cuba et les États-Unis (Le Temps des Cerises, 2006).


http://www.voltairenet.org/article151760.html


映画『シッコ』をご覧になった方なら、キューバの医療制度がどれだけ優れているか、お分かりになると思います。日本の独裁者政府が目指す、北朝鮮以下の公的医療とアメリカ的な金持ち向け医療制度の並立、と比べたら、どちらに理があるかは、明らかです。しかし、そのキューバの医療も、アメリカ様の「残酷で不合理な」経済封鎖によって、必要な医薬品、医療機器が入手できないという危機に直面しています。

ただし、16年連続の国連決議、ブッシュ政権の終焉により、アメリカ様による執拗で病的な封鎖も終わりを告げる可能性があり、そうなると、キューバは将来、日本の医療難民の受け入れ先としても期待されます。アホか。

話は脱線しますが、来るべき日本の医療崩壊に向けて、例えば英国がそうであるように、インドなどへの医療ツアーを考えている人もいるかもしれません。しかし無駄です。日本の医療費は、インドや中国に比べてもはるかに安いからです。渡航費用と現地での医療費を加えたら、日本で医療を受ける費用に比べて、圧倒的に高額になってしまうのです。日本の超低医療費政策が物価水準や国民所得を考えると、どれほど異常であるか知るべきでしょう。

日本に知人のいる中国の人が、日本にいる間に白内障の手術を受けたいと言っていたのを思い出します。日本で全額自費で手術を受けても、中国で手術を受けるよりはるかに安いからだそうです。アホらし。

近い将来に起こるであろう日本の医療崩壊の際には、手術を受けるために3年待ちになるであろう日本のガン患者が、早く手術を受けるために、キューバにでも殺到することになるかもしれませんが、そのための渡航費は日本の極めて低い医療費をはるかに上回るものになるでしょう。結局、日本の一般の人は手術を待っている間にガンが進行して死ぬのを待つことになり、一部の金持ちだけがアメリカ様の手先の高額医療を受けて生きながらえるという、生命の機会の究極の不平等の時代が到来するでしょう。某トラのモン病院などで割安で待たずに手術を受けられる特権的官僚と、大金持ちだけが生き永らえる国に。




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