(続)ルノー従業員連続自殺-遺族・同僚の証言【1】 | PAGES D'ECRITURE

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フランス語の勉強のために、フランスの雑誌 Le Nouvel Observateur や新聞の記事を日本語に訳して掲載していました。たまには、フランス語の記事と関係ないことも書きます。

3月7日 までに取り上げていた、ルノー従業員の連続自殺に関しては、その後、日本の一般書店で入手できる Le monde の国際版にも掲載されましたが、それはこの日までにここで取り上げた記事と殆ど同じものでした。


その後、3月17日によみうりテレビでは報道されたようです。


ルノーで自殺者続出 会見で改善プラン発表

 フランスの自動車大手「ルノー」で、4か月の間に技術者の自殺が相次ぎ、警察が捜査を開始した。これを受け、ルノーは日本時間16日夜、緊急会見を行った。

 ルノーでは去年10月、39歳の技術者が、自らが勤務する新車開発施設「テクノセンター」の6階から飛び降り自殺した。また、今年1月に44歳の技術者が、先月は38歳の技術者が自殺した。3人は新車開発の担当者で、「仕事がつらい」という内容の遺書が見つかっている。

 ルノーの労働組合代表は「自殺した人の奥さんは『夫は家でも仕事をして、夜遅くまで起きていた』と言っていた」と話している。

 05年にルノーの社長に就任したカルロス・ゴーン氏は、改革路線を打ち出し、「2009年には今年よりも80万台多く売る」と述べた。さらに26種類のニューモデルの開発など、4年間で成し遂げる改革には厳しいノルマが課せられていた。

 自殺した技術者は新車の開発を担当していた。開発のペースに至ってはそれまでの4倍の仕事量となり、仕事をする時間帯は決まっていたが、徹底した成果主義のため、仕事を家に持ち帰ることが日常的だったという。

 ルノー側は当初、自殺の原因を「個人または職場のコミュニケーションの問題」としていた。しかし、労働条件について警察が捜査に乗り出すとゴーン社長も改善プランを作るよう指示した。そして、日本時間16日午後8時、緊急会見を行い、「これからマネジャーに、部下のおかしな兆候を察知できる教育を受けさせる」と述べた。また、改善プランには「社員同士が1週間に1回、仕事内容などを話し合う」「社員の人数を増やす」などの内容も盛り込まれた。 (03/17 02:49)


http://www.ytv.co.jp/press/mainnews/79537.html



新聞やテレビでは詳しく報道されないことを、週刊誌などで知ることは往々にしてあります。例によって、週刊誌 Le nouvel Observateur には、遺族や同僚の証言を含む記事が掲載されました。

3月7日 の記事を最後に、ルノーの話題は取り上げないつもりでしたが、多くの人に是非とも読んで欲しいと思い、敢えて紹介します。

Suicides au Technocentre Renault

Les oubliés de Guyancourt

Ils étaient tous des salariés modèles. Leur obsession : tenir les cadences. Malgré le stress, la déshumanisation, la perte de repères. Sophie des Déserts a rencontré leurs veuves et leurs collègues

(本文)

ルノー・テクノセンターの従業員の自殺。レイモン・D、37歳は216日、自ら命を絶った。そのニュースは時代の波の中に埋没しようとしている。1人の自殺、さらに1人、毎年12000人いる中で、恐らく300から400人が仕事に関係している。それを知り過ぎることはないし、決して知ることもない・・・。彼は自宅で、ベルトで首を吊った、このような惨事は、ホワイトカラーではなく、警官や農民に衝撃を与えた。哀れな人は生命を愛していなかったに違いない・・・ 普段は、誰もそれ以上知ろうとしないが、しかし、何週間か前に、テクノセンターの従業員が2人、死ぬことを決意した。レイモンと同じように模範的な二人のサラリーマン、若くしてルノーに入社した忠実で働き者の四十代。4ヶ月の間に、アントニオ、エルヴェ、レイモン・・・多分、余りにも良く働こうと望み過ぎた後に死んでいった。現代資本主義の遭難者3人の物語である。


 秋に撮影された身分証明書の最後の写真では、彼は大学入学資格者の雰囲気を持っている。ちょっとしたあごひげ、細い眼鏡、限りない優しさを秘めた茶色の瞳が、鉄の意志を覆い隠している。レイモンは1992年に、単純技能者としてルノーに入社した。週末、仕事の後の夕方、毎年CNAM(国立工芸院)で、彼は英語、機械工学、企業社会学を学んでいる・・・ 彼は管理職になる予定だった。仕事は、金や栄光のためではなく、スペイン人労働者の息子としての遺伝子そのものであった。妻と男の子のために最善を尽くそうとした。そして彼は自分の職業に情熱を注いだ。レイモンはシャシーの専門家だった。数ヶ月前から、新型ラグナに取り組んでいた。数十億ユーロを賭けた、グループの模範となる計画だ。10月に、同僚の1人が辞職した。圧力が強すぎる、と言っていた。確かに、ビッグ・ボス、カルロス・ゴーンの着任以来、常に多くの結果を出す必要があり、新しい「コントラ2009」は2年間で13の新型車を出すことを予告していた。レイモンはたくさん働いたが、彼自身は何があっても生活を変えたくなかった。それは毎朝、ギアンクールのテクノセンターの入り口に身分証明カードを通しながら、彼が言っていたことだ。彼はそこ、改革の聖堂、菱形マーク(ルノーのエンブレム)の白眉にいた。緑の植物が植えられたガラス張りの巨大な客船、10の建物と、至る所にある監視カメラ。古参の社員は「アルカトラズ」と呼ぶ。センターの中心、「ミツバチの巣箱」の中にあるオフィスで、レイモンは時々、自分が取るに足りない存在であると感じていた。「少し冷たかった。環境は前と同じではなかった」と彼は妻に告白していた。しかし、不満を言ってはいけない、テクノセンターには幸福になるためのあらゆるものが揃っている。スポーツセンター、8つのレストラン、銀行、理髪店、カフェ・ポールがある。そこで、「巣箱」のロビーで、レイモンは毎朝ブラック・コーヒーを飲んでいた。
(つづく)


出典:

SOPHIE DES DÉSERTS

Le nouvel Observateur No.2228 du 22 au 29 mars 2007

次回に続きます。