リチャード・ブローティガン『愛のゆくえ』 | 文学どうでしょう

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愛のゆくえ (ハヤカワepi文庫)/リチャード ブローティガン

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リチャード・ブローティガン(青木日出夫訳)『愛のゆくえ』(ハヤカワepi文庫)を読みました。

みなさんはリチャード・ブローティガンという作家をご存知でしょうか。もしかしたら知らない方の方が多いかもしれません。

代表的な作品は、『アメリカの鱒釣り』という作品で、こちらもその内読み返す予定ですが、エッセイとも小説ともつかない断章が集まった、独特の小説集なんです。

リチャード・ブローティガンの小説の中で、ぼくが一番好きなのがこの『愛のゆくえ』です。色々好きな要素はあるんですが、2つにまとめると、図書館が舞台になっていること。そして、とびきりの美女が出てくること。

以前は新潮文庫に入っていて、ハヤカワepi文庫で装いも新たに出てたので読んでみました。

〈わたし〉は図書館で働いているんです。といっても普通の図書館ではなく、本を書いた作者が本を置きにくる図書館。受取証を書いて、クッキーがあればクッキーなんかを出して、作者が本を図書館の棚に並べるのを待つ。そんな仕事です。

ある日、とびきりの美女が図書館にやってきます。ヴァイダというんですけれど、古い言いかたをすればボインで、男をメロメロにする肉体を持っている。町ゆく男性はみんなヴァイダに夢中で、ヴァイダを見ていて事故を起こす人がいるくらい。

でもヴァイダ自身は心と身体のバランスが取れていないというか、本当の自分の肉体じゃないと思っているんです。ここが面白いところです。

〈わたし〉とヴァイダは恋に落ちてというか、まあともかく、一緒に図書館で暮らし始める。そして・・・という話です。

ある出来事が、あまりにもさらっと書かれているので、読み返すまでは鮮やかな恋愛小説だと思ってました。でも後半は考えようによっては重いテーマを孕んでいます。ロードムービーみたいになって、すっと終わってしまうのであまり気づきませんが。

その部分はまあともかく、リチャード・ブローティガンの独特な作風というのが魅力的な一冊なんです。ユーモラスというか、どことなく放り投げている感じというか、まあ一言で言うと、リチャード・ブローティガンぽさってことなんですけども。

図書館、とびきりの美女、魅力的な作風。この3つが揃ったら、読まない手はないですよ。わりとさらっと楽しく読めると思うので、ぜひ読んでみてください。おすすめの1冊です。