金原ひとみ『蛇にピアス』 | 文学どうでしょう

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蛇にピアス/金原 ひとみ

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金原ひとみ『蛇にピアス』(集英社)を読みました。

芥川賞受賞作です。綿矢りさ『蹴りたい背中』と同時受賞して話題になりました。

『蛇にピアス』と『蹴りたい背中』は対照的な作品で、それぞれによさがあるんです。

『蛇にピアス』の場合、なんといってもそのテーマがすごいと思うんですよ。決してよいと言っているわけでもないんですが、ある種、一線を越えちゃってる感じがある。なかなかこういう突き抜けたものは書けないものです。

男の作者が書くと、ハードボイルドかエログロな世界になってしまいそうなものを、絶妙なバランスで描いていると思います。ピアスや入れ墨が単なるピアスや入れ墨ではなく、なんのためのピアスや入れ墨なのかを考えていくと、なかなかに面白いです。

あらすじをざっと紹介しますね。〈私〉は舌にピアスをすることにするんです。一緒に暮らしているアマという男が、舌をスプリットタンにしているから。スプリットタンというのは、舌先が2つに分かれているやつです。

ぼくはピアスは詳しくないんですが、少しずつサイズを大きくして、穴を拡張したりするらしいです。

〈私〉とアマはピアスや入れ墨をしてくれるシバさんの元に行きます。この3人が物語のメインキャラクターになります。

ピアスをしたり、入れ墨を彫ったり、肉体関係を持ったりする。そしてある事件が起こり・・・という話。

ピアスや入れ墨など、痛々しい描写があること、みずみずしいとは言えない、露骨な性描写があることなどが、この作品の否定の材料になったりしているようで、それは確かにその通りなんですが、むしろ、そこがいいんです。

〈私〉にほとんど共感はできないんですが、なんとなく理解ができる部分がある。金原ひとみの他の作品に比べると、かなり読みやすいですし、ストーリー的にひねってあって、エンタメとしても面白いです。ぼくはなかなか好きな小説です。

痛々しいのが苦手でない人、そしてピアスや入れ墨に興味がある人は、ぜひ読んでみてください。