『ニーベルンゲンの歌』 | 文学どうでしょう

文学どうでしょう

立宮翔太の読書ブログです。
日々読んだ本を紹介しています。

ニーベルンゲンの歌 前編 (ちくま文庫)/著者不明

¥945
Amazon.co.jp

ニーベルンゲンの歌 後編 (ちくま文庫)/著者不明

¥998
Amazon.co.jp

石川栄作訳『ニーベルンゲンの歌』(前・後編、ちくま文庫)を読みました。

あれ、ニーベルンゲンてなんだか聞いたことあるなあ? という人もいるかと思いますが、おそらくワーグナーの『ニーベルンゲンの指環』の方ではないでしょうか。クラシック音楽と劇のやつです。

ぼくは逆に『ニーベルンゲンの指環』の方を知らないんですが、英雄ジークフリートがモチーフになっているということは共通していますが、同じ話というわけではないみたいです。この辺りに詳しい方、コメントなどあればよろしくです。

さてさて、『ニーベルンゲンの歌』は、以前、関楠生『ドイツ名作が面白い 』(アテナ選書)という本を読んだ時に、あらすじが面白そうで、気になっていた本なんです。

調べたらちょうど新訳が出ていたので読んでみました。内容に入る前に、この本の形式である叙事詩についてちょっと説明しておきますね。

叙事詩というのは、たとえば、ちくま学芸文庫で言うと『ギルガメシュ叙事詩』、岩波文庫で言うと『イーリアス』『オデュッセイア』『ベーオウルフ』などがそうです。

あとは以前ちょっと紹介した、『カレワラ』もそうですね。

つまり歴史や神話などをベースにした、長編の詩ということで、大体大丈夫だと思います。厳密に言うと、韻文(詩の形式のことです)であるとか色々あるんですが、結局翻訳なので、そういった詩としての楽しみは残念ながら、ほとんど失われてしまっているように思います。

ぼくは実は『イーリアス』と『オデュッセイア』は読んでるんですよ。ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』を読むときに必要だったので。『ユリシーズ』は『オデュッセイア』を下敷きにしているところがあるんです。

というわけで、ある程度比較ができるわけですが、戦争の話など、壮大なスケールな『イーリアス』や『オデュッセイア』に比べると、『ニーベルンゲンの歌』は読みやすいです。構成がわりとシンプルなんです。きっとあらすじを聞くと、読みたくなる人もいると思うので、ちょっと書きます。

まずジークフリートという英雄がいます。竜の血を浴びて無敵になっているんですね。けれど、一カ所だけ弱点があって・・・というお決まりのパターン。グンター王という王様がいて、その求婚譚が描かれていきます。

ブリュンヒルトという姫をもらいに行くんですが、うまく成功すれば、グンター王の妹である、クリームヒルトをジークフリートの嫁にくれると、そういうわけなんです。

グンター王とジークフリートはブリュンヒルトのところに行きますが、このブリュンヒルトが豪傑みたいなすごいやつで、力比べというか技比べというか、競技で勝たないと結婚できないんです。

そこでジークフリートが手助けをします。グンター王とブリュンヒルト、ジークフリートとクリームヒルトという2組は無事に結婚するんですが、この奥さん同士の仲が悪くなってしまいます。そこにハーゲンという男が登場し、ジークフリートの暗殺計画が練られていくことになります。

果たして英雄ジークフリートの運命はいかに!?

という話です。面白そうでしょう? ここまでで前編の半分くらいです。後編についてはあえて触れませんが、前編と対になった構成になっています。

求婚譚から始まり、暗殺計画が練られるという感じです。前編を乗り切れば、後編はわりあい、さくさく読んでいけると思いますよ。

叙事詩の場合、小説を読むように、感情移入できるような楽しみはないんですが、物語の壮大さというか、シンプルながら力強いストーリー展開はやっぱり面白いと思います。

叙事詩の中では読みやすいものだと思いますので、興味を持った方は、ぜひ読んでみてください。

なんにでも興味を持ってしまうのがぼくの悪い癖なんですが、『ベーオウルフ』など、読んでみたい叙事詩が増えてしまいました。もしかしたら、その辺りも今後紹介できるかもしれません。乞うご期待!!