東川篤哉『謎解きはディナーのあとで』 | 文学どうでしょう

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謎解きはディナーのあとで/東川 篤哉

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東川篤哉『謎解きはディナーのあとで』(小学館)を読みました。2011年の本屋大賞第一位の作品です。

これはストーリーとか、ミステリーとしてのトリック云々よりも、キャラクターで楽しむ作品ですね。軽妙なタッチの短編集です。

表紙のイラストが、よく内容を表していると思いますが、主人公は女の人ですね。刑事なのですが、実は大富豪のお嬢様なんですよ。

その上司の警部も変わっていて、こちらも大富豪のお坊ちゃま。いい車に乗ったりしています。

殺人事件が起こるんですが、この2人の推理はベタというか、ほとんど的外れなんですよ。探偵役としてはポンコツもいいとこです。引き続き捜査を続けなくては、という感じで帰ってくる。そこに執事兼運転手が登場します。

お嬢様の執事なわけですが、事件の話を聞き終わると、執事は毎回、慇懃無礼な言いかたをするんです。帯にもありましたが、

「ひょっとしてお嬢様の目は節穴でございますか?」(75ページ)

などなど。そこはちょっと面白かったですね。そして、事件の真相をすぐさま明らかにする。そういった短編がいくつか収録されています。

事件の現場をほとんど見ないで、話だけで事件を解決する話です。こういったところは、ある種古典的と呼べるかもしれません。

楽しい作品ですが、たとえば、殺人事件の犯人が背負っている重さ、とかがないので、涙や感動など、あとに残るものはほとんどないですね。その点、社会派のような推理小説が好きな人には、物足らなさがあるかもしれません。

軽い気持ちで、面白い設定を楽しんで読むには、十分おすすめできます。

おすすめの関連作品


恒例のリンクですが、今回は3冊ほど。

まずはへっぽこ警部の連想で、赤川次郎『東西南北殺人事件』(講談社文庫)はどうでしょう。赤川次郎の中で、ぼくが一番好きなシリーズです。と思ったのですが、今は絶版になってるみたいです。なぜだ・・・。

あと、これも好きなシリーズですが、お嬢様探偵といえばこれですね。北村薫『覆面作家は二人いる』はおすすめです。軽いタッチで楽しめます。

覆面作家は二人いる (角川文庫)/北村 薫

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あと、2人の男女のセリフ回しが楽しい作品といえば、森博嗣のシリーズがあります。『すべてがFになる』からどうぞ。

すベてがFになる (講談社文庫)/森 博嗣

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シリーズの作品の一つに、叙述トリックの作品があって、見事にだまされたのを覚えています。森博嗣辺りも読み返してみたいなあ。ではまた。立宮翔太でした。