『なぜ世界は不幸になったのか』・その1 | くらえもんの気ままに独り言

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なぜ、世界は不幸になったのか!?

 今回から数回に分けて哲学者の適菜収氏の新著『なぜ世界は不幸になったのか』(角川春樹事務所)について取り上げていきたいと思います。


 本書では29名の過去の賢者の言葉を取り上げることで、間違った方向に進もうとしている現代社会の流れを食い止めようという目的で書かれております。


 本書の形式としてはそれぞれの賢者およびその思想についての紹介、または現代社会において問題となっている事項との関連について分かりやすく解説してあります。


 当ブログでは各項の冒頭に取り上げられている賢者の言葉を引用し、それらの言葉について少し考えてみたいと思います。言うまでもなく、真にその言葉の意味を理解しようと思えば、その言葉が述べられた時代背景やその人の思想について詳しく知らなければなりませんが、ここではその言葉のみを見て考えたいと思います。(詳しい解説が知りたければ是非本書をお読みください(;^_^A)


 というわけで、今回は最初の7名を取り上げたいと思います。


アルトゥル・ショウペンハウエル

「ほとんどまる1日を多読に費やす勤勉な人間は、しだいに自分でものを考える力を失って行く。つねに乗り物を使えば、ついには歩くことを忘れる。しかしこれこそ大多数の学者の実情である。彼らは多読の結果、愚者となった人間である。」 (『読書について』より)


 私は時間とお金と速読技術さえあれば、たくさんの本を読みたいと思っておりました(;^_^A

 読めば読むほどいろんな知識を得られる反面、頭を使うことが少なくなっていくということでしょうか。

 現代においてはたくさんの本が出版されているだけでなく、インターネット上にもたくさんの文章があります。このありふれた情報のすべてを得ることなど到底不可能なわけですから、本を読む量より、読む本の質の方が大事なのかもしれませんね。


 本を読めば頭を使わなくなり、乗り物を使えば歩かなくなる。医療が発達すれば健康意識が希薄化し、防災インフラが発達すれば防災意識が希薄化する。戦争がなければ平和ボケする。

 技術の発達って、生活は便利になる一方で人間の劣化をもたらしそうですね(;^_^A


 医学・生物学研究の領域なんかでも最近ではサンプルを機械にかけるだけで、たくさんの項目を網羅的に測定することができるようになったらしいのですが、確かに頭を使う機会は研究の領域でもどんどん減ってきている印象ですね。


新渡戸 稲造

「まず読書にはある意味において便法なく、一度は艱難して苦しまなければならぬ。その代わりに艱難したならば、後は自由自在に、日本の本ならば縦に読まずに横に読み、西洋の本ならば横に読まずに縦に読むことができるようになる。」 (『読書と人生』より)


 最近読んだ本では西部邁氏の『知性の構造』なんかはかなり艱難しましたが、自由自在に読書できる領域には到達しておりません(;^_^A


 まだまだ艱難が足りないということでしょうか?それとも、もっと難しい本を読むべきということなのか?艱難を知らずに読む行為、つまり私が読書と思っている行為は読書とは呼べないのかも?


 難しい本を読むのはストレスですし、読むのに時間がかかってしまうので、読みやすい本ばっかりついつい読んでしまうんですよね・・・orz


 本書で紹介されている古典にもそのうち手を出して艱難するとするか・・・。投げ出してしまいそうですが(笑)。


ジャンバッティスタ・ヴィーコ

「ところで、もしわれわれの時代を古代と比較するとし、芸文の利得と得失とを両側において秤量するとすれば、われわれの値は古代人の値と恐らく同じになるであろう。というのも、古代人たちにはまったく知られていなかった多くのことが、われわれによって顕にされ、かつわれわれにはまったく知られていない多くのことが、古代人には知られていたからである。」 (『学問の方法』より)


 古代人にパソコンやスマホを使えって言っても無理ですからね(‐^皿^‐)


 現代では科学研究の積み重ねにより古代に比べると色んなことが明らかにされていますが、それでも真理というものにたどり着くにはまだまだ果てしない気がしますし、現代科学のようなアプローチでたどり着けるのかどうかも怪しいものです。むしろ古代人の方が真理に近いところにいたのではないかとも思えたりするくらいです。


 現代人は知識はあるけど頭が悪い。

 古代人は知識はないけど頭がよい。


 ってことですかね?秤量すると同じくらいと言ってますが、人間としては古代人の方が優秀な気もしますね(;^_^A


 現代人は古代人からまだまだ多くのことを学ぶことができるのではないでしょうか。


ジョージ・オーウェル

「かれらは自分たちがどれほどひどい理不尽なことを要求されているのかを十分に理解せず、また、現実に何が起こっているかに気づくほど社会の出来事に強い関心を持っていないからだ。理解力を欠いていることによって、かれらは正気でいられる。」 (『一九八四年』より)


 緊縮増税ネオリベグローバルでいくぞと言われても、それがどんなにひどいものか分からないので支持しちゃうってのと同じでしょうか。


 「理解力を欠いていることによって、かれらは正気でいられる」とありますが、それとは逆に「理解しているけど、正気を保つために理解していないふりをする(目を瞑る・耳を塞ぐ・忘却する)」なんていう現象ももちろんあるわけですよね。


 何も知らないまま正気でいるのが幸せなのか。

 知ってるけど知らないフリして正気でいるのが幸せなのか。

 正気でいられないほどの理不尽さと向き合うのが幸せなのか。


 理解力がない人間は何が幸せかを理解できるわけないため幸せを自覚することは不可能ですし、知らないフリをしている人間がそのまま正気でい続ける事ができるとも思えません。やはり現実に関心をもたなければ幸せは得られないということでしょうか。正気を保てなくなることを覚悟しなければなりませんが。


 いや、逆に理解力のない人間は現実を突きつけられると発狂するかもですが、理解力のある人間は理不尽と向き合うことができるのかも? 


プルタルコス

「戸のない納戸だの口の閉まらない財布だのは、持っていても役に立たないと信じているくせに、口に戸を立てず絞めず、さながら黒海の水が四六時中外に流れ出すように言葉をたれ流す人がいる。そういう人は言葉というものを何よりも価値がないものと考えているのだろう。」 (『饒舌について』より)


 言葉を大事にしようとするならば、あんまりむやみに言葉をたれ流すなよってことでしょうかね。ブログというツールで言葉をたれ流している私には耳の痛い言葉ですな(;^_^A


 それにしても言葉というものは大切に使わなければなりませんね。喋る前に書く前にそれをたれ流す前に一旦思いとどまる習慣をつけた方がよいのかもしれません。政治家の失言なんかも典型的な例ですよね。


 最近では思いついたことを何も考えずに喋ったり書いたりするケースが多くなってきたようにも思います。私も反省しなければですね。


 言うべき(書くべき)かどうか迷った場合は言わない(書かない)というのも大事かもしれません。垂れ流してしまった言葉は二度と戻ってこないのですから。


カール・ヤスパース

「哲学者(philosophos)というギリシア語は、学者(sophos)と対立する言葉であって、知識を持つことによって知者と呼ばれる人と異なり、知識(知)を愛する人を意味する言葉であります。」 (『哲学入門』より)


 哲学者と学者って全然違う概念の存在なんですね。


 知を愛するっていうことが、どんなものなのか分からない私は哲学者とは程遠いのかもしれません(;^_^A


 それでも、その感覚になるべく近づきたいものです。知識を持つ人より知を愛する人の方がかっこいいですし(笑)。ってこの発想がいけてないですねorz


岡 潔

「人はずいぶんいろいろなことを知っているように見えますが、いまの人間には、たいていのことは肯定する力も否定する力もないのです。一番知りたいことを、人は何も知らないのです。自分とは何かという問題が、決してわかっていません。時間とは何かという問題も、これまた決してわからない。」 (『人間の建設』より)


 確かに世の中知らないことだらけですね。知識が増えれば増える程、知らないことがもっと増えていくような印象を私は持っています。


 つまり、いつまでたってもゴールにはたどり着けないというわけです。


 上の方では、ちゃんと考えろということを言ってましたが、ここでは考えても分からないものは分からないと言ってるわけですね。いったいどっちやねん(‐^皿^‐)


 つまり、ちゃんと頭を使わないと人間が劣化しますが、それだけでは限界があるということも知っておかなくてはならないということだろうと思います。


 理論だけではない、または言葉では表すことのできない感覚的なアプローチも必要になってくるのかもしれませんね。



 というわけで、7名の賢者の言葉について考えました。適菜氏による詳しい解説については是非本書をお読みになってください。ちなみにここまでの話で適菜氏が言いたかったことを簡単にまとめると


・たくさん本を読む暇があったら、少しでも古典を読め

・「言葉」は大事にしろ


 ってことでしょうか(^-^)/


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