『国家のツジツマ』・その1 | くらえもんの気ままに独り言

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 さて、今回からまた読書シリーズとなりますが、佐藤健志氏と中野剛志氏の対談本であります『国家のツジツマ―新たな日本への筋立て』(VNC新書)を取り上げてみたいと思います。この本は佐藤健志氏の『震災ゴジラ』発売を記念して先日VNCゴジラチャンネルにて行われた両氏の対談を加筆修正したものになっております。(デラックス版を購入したのですが、対談を収録したDVDも付録でついておりました。動画で見るより画質が少々いいらしいです(^-^))


 両者の対談は動画ですでに拝見していたのですが、かなりレベルの高い内容でして、何回か繰り返し見てやっとこさ理解できる内容でした(;^_^A

 今回は改めて活字になったということで、全部で4回に分けて感想を書いていきたいと思います。


第一部『世界は物語である―日本の現状診断』


・ゴジラとコールリッジ

 『震災ゴジラ』(VNC)で映画などのポップカルチャーから現実を分析しようとした佐藤氏と『保守とは何だろうか』(NHK出版新書)で詩人のコールリッジの保守思想・経済思想を論じた中野氏。この両者の視点を融合させて、さらなる高みへ到達しようというのが本書の目的のようですね。無理矢理感も無きにしもあらずですが、お互いのレベルが高く発展的な議論となりそうです(o^-')b


・経済は思想を必要とする

 思想が間違っていたら計算が正しくても答えを間違えてしまう!確かに。

 印象的だったのは佐藤氏が言った自分の価値観・思想がどんなものかを自覚していない者は自分が無意識的に信奉する価値観・思想が唯一の真理と思い込んでしまうというところです。自分の価値観・思想・・・・・・、自覚しているのかなぁ?なんとなくうすぼんやりとは自覚しているんですが、いろんな価値観・思想があることを知っているし、自分の価値観が絶対正しいとは思っていない(←やっぱり自覚している?)んで、許してもらえますかねぇ(・ω・)?

 新自由主義者の方々は「私は新自由主義者ですからねぇ」とはなかなか言いませんが自分が新自由主義者だとちゃんと自覚しているのかな?


・世界観という土俵

 無意識の「ビジョン」を信じている人はそこから外れた意見を聞くと、考えようとせずに単にキレちゃうんだそうで。木下増税論を信じている人が、それとは違うストーリーがあることを知ると発狂するみたいなアレでしょうか(笑)。やはり、色んな人には色んな「ビジョン」があって、自分もこんな「ビジョン」を信じているということを自覚すべきということなのでしょうね。本書を読んで、お二人の「ビジョン」に触れることで自分の「ビジョン」に変化が生じた気がしますが、これは良い経験と言えるのではないかと思います。


・イデオロギーの真の意味

 世界だ現実だと思っているものは何らかのイデオロギーによるフィルター処理がかかった一種の物語だとのこと。佐藤氏いわく現実がリアルであるように思えるのは、それを支える物語がしっかりしている間だけだと。なかなか話が難しくなってきたぞ・・・。つまり、悪の民主党政権を安倍救国内閣がやっつけて日本はハッピーになるというのが現実世界の流れだと思い込んでいたら、その物語が実はツジツマが合わないものとなってしまった暁には現実世界が現実世界のように思えなくなる・・・みたいなことでしょうか?

 マスコミフィルターなんかを通しても、これが世界だ、これが現実だという認識はマスコミの物語によって形成されそうなものですね。


・物語とアイデンティティ

 自分というものを語る際にも物語が必要で、さらに一貫性が必要(例えば10歳の自分と30歳の自分を結びつけるもの)で、それがアイデンティティということだそうです。映画やドラマはもちろん、現実世界も自分の人生も物語でできている考えることができそうですね。物語を考えないとそのものを理解することができないということなのかもしれませんね。例えば目の前のごはん、これにも物語があるのでしょう。どんな物語を持っているかを書こうと思いましたけど、長くなるので省略。


・ゲーテからシュワルツェネッガーまで

 現実が物語でできていることが今まで述べられましたが、映画などの物語(フィクション)も現実社会の在り方に影響されるため、物語から現実を分析することが可能なのではないかというのが佐藤氏の試みでした。つまり、ある映画監督が信じている物語(現実世界)に影響されて作られた物語(フィクション)は、物語(現実世界)の構成要素の一つであり、それらの物語を統合することで、現実世界が実際にはどうなっているかを分析するという理解でいいのかな?この手法が正しいのかどうかというのは分かりませんが、現実世界の真の物語を紡ぎだす一つの方法なのかもしれませんね。少なくとも安倍救国内閣が~という物語は真の物語ではなさそうです。


・今の日本は果たしてリアルか

 今、日本はこうなっている、世界はこうなっていると思っていても、その物語が正しいとは限らない、自己紹介ですら無意識的に言いたくないことは言わない。とすると真の物語を構成する要素だが誰も語らない事柄というものがありそうです。それを紡ぎだす意味で物語(フィクション)の研究は意味があるのかもしれません。少なくとも偽の物語を信じ込んでいては現実世界の問題は解決できないのでしょう日本の政党である田母神新党が日本のための政策を行い、日本を発展させるというのは真の物語なのかそれとも偽の物語なのか・・・。物語が破綻すると人々は「もういいや、何でもアリだ」って感覚になるらしいですが、昨今の新自由主義の跋扈は偽の物語があまりにも普及しすぎていたからなのかもしれません。


・物語のよしあしを見分けよ

 真の物語を知ることが現実世界の問題を解決するのに必要ということですが、真の物語ってどんな物語なのでしょうね?ここでは真の物語の特徴として二つ挙げられているように思いましたが、一つは「複雑である(単純すぎない)こと」、もう一つは「ツジツマが合う(支離滅裂でない)こと」ということなのでしょう。新古典派経済学者なんかは合理的経済人なんかを想定して物語を単純化して考えちゃってますからね。つまり、彼らは偽の物語に基いて経済政策を考えているということになるのでしょう。あぁ、あとは景気が良くなったら消費税増税するとか言いつつ、景気は良くなってないのに消費税を上げるという支離滅裂なパターンなんかも偽の物語に依っていると言えそうですね( ̄∀ ̄)。

 論文を読むときなんかも単純すぎるものやツジツマが合わないものは偽の物語に基いて研究しているとみてもいいかもですね。


・対症療法ではなく体質改善を

 医学なんかで言えば、風邪をクスリによって症状を抑えるのではなく、日ごろから健康的な生活を送って風邪をひきにくい体を作るということでしょうが、政治・経済の場面で言えばTPP問題が出てくればTPPを潰すというのではなく新自由主義的な思想を改めるべきということなのでしょう。これができれば苦労はないのですがねぇ(^_^;)でも、やらなければならないということですね。


・病理と共存するという知恵

 何事も完璧なものはない。すべてのものには短所と長所がある。分かっちゃいるけど、見落としがちなことだと思います。短所があっても、それを補って余りある長所があればオッケーということですね。本書でも利権が絡むから公共事業は一切するなみたいな短絡的な話にツッコミが入っていましたね。

 完璧を求めてはいけない。確かにそうですが、長所がわずかでそれを消し去るほどの短所がある場合には切り落として構いませんよね?(なんのことかは察してください・・・。)


 いやー結構な文量になってしまいました(;^_^A

 第1回でここまでやったら次回以降どうしよう・・・。



実際に二人がどんなことをしゃべってるか気になった方は本か動画をご覧になってください。

国家のツジツマ 新たな日本への筋立て(DVD付きデラックス版) (VNC新書)

http://www.amazon.co.jp/dp/4434190598/

保守はゴジラを夢見るか 第1回日本の現状判断

http://www.youtube.com/watch?v=OCdpC92Nvk8



くらえもんが至高のギャグマンガ「ドラえもん」を独自の視点でおもしろおかしく解説!興味のある方は下記のエントリーにまとめを作っていますので是非ご覧ください。