(ビジネス知識)国際会計基準における、「包括利益」の考え方をざっくり説明したいの巻 | ちょっとの努力(仮)

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もしビジネスパーソンや学生さんのあなたが、後輩からこう質問されたらどう答えますか。


「先輩、新聞に出ていた決算書に『包括利益』という項目があったんですが、どういうイミですか。」
「なんだよ、知らないのか。決算書を見ていて『ほー』と納得(なっとく)する利益もあるし、『かつ』を入れたくなる利益もあるだろ。それらをまとめて『包括利益』というんだよ。」
「・・・。(一応感心したふり)」


あのー、そんなアバウトな項目、決算書に入れるわけがないでしょう。株主や投資家がその項目を見て、どう判断したらいんでしょうか。ボケるならもっとうまいことボケてください。


『・・・今回もうまいボケを思いつかなかった人、説明をお願いします。』


結論からざっくり言うと、国際会計基準(IFRS)における「包括利益」とは、「本業以外の土地や株式などの損益を計算に入れた利益」のことで、


損益計算書(PL)にある「当期純利益」の金額に、貸借対照表(BS)の「純資産の部」にある「評価・換算差額等の増減を加えて計算されます。


以下、具体的に説明してみましょう。


ここに、東証一部に上場する架空の機械メーカー、エゥーゴ社(仮名)があると仮定します。


社長のブレックスさん(仮名)は、今後の経営方針などを話し合うため、取締役会議を開催しました。


すると会議の場で、執行役員のクワトロさん(仮名)から、「昨年度の純利益はプラスだったけれども、株式運用の失敗が響(ひび)き、包括利益を計算するとマイナスになっている。今年度は株式運用でもプラスになるように、運用部門に良い人材を投入すべき」という意見が出ました。


エゥーゴ社では2010年度までは国際会計基準を適用していなかったため、包括利益は開示していませんでした。


そこでブレックスさんは直近(ちょっきん)2年度のPLにある「当期純利益」とBSの「評価・換算差額等」の数字を用(もち)いて、包括利益を計算してみました。


すると、


2009年度:

当期純利益 1,000万円

評価・換算差額等500万円 で、

当期包括利益は1,000万円+500万円=1,500万円


2010年度:

当期純利益 2,000万円

評価・換算差額等▲(マイナス)2,500万円 で、


当期包括利益は、2,000万円-2,500万円=▲500万円となりました。


たしかにクワトロさんのいうように、包括利益はマイナスになっていました。


今までの日本の基準だと、「純利益が一年で倍になっている」ことが重視されていましたが、国際会計基準だと「包括利益が一年で2,000万円下がっている」ことも重視されます。


そこでブレックスさんは、取締役会議でクワトロさんの意見を議題にし、結果として運用部門の人数の増員+他企業から優秀な人材をヘッドハントすることを決定しました。


ここで、「包括利益を開示するとどういうメリットがあるか」と気になる方もいらっしゃると思います。


メリットとしては、「決算操作の余地をなくすことで、企業実態の透明性が高まる」ことが挙(あ)げられます。


つまりいままでは、純利益が低い分を本業以外の利益でおぎなっていた場合も、開示することで明らかになります。


その一方で、デメリットとして、本業の儲もうけがわかりにくいことや、業績が株価や為替などの市場動向によって大きく左右されることなどが挙げられます。


また、包括利益では、保有している株式が値上がり(値下がり)すれば、それも利益(損失)に計上するため、日本企業の場合は、株式持ち合いなどで多額の株式を保有していることから、純利益に比べて包括利益の変動は大きくなりやすいという特徴があります。


正式には来年(2012年)に金融庁が日本における国際会計基準適用の適否を判断し、決まれば2015年か2016年に強制適用となる見通しですが、

すでに2011年3月期決算から、上場企業の連結決算においては、日本の基準でも「包括利益」が導入されています。


(なお、国際会計基準では損益計算書は「包括利益計算書」、貸借対照表は「財政状態計算書」、評価・換算差額等は「その他の包括利益累計額」という呼び方になります。)


国際化の流れのなかで、強制適用の前に国際会計基準を適用する日本企業もこれから増えるのではないでしょうか。


ちなみに、「機動戦士Zガンダム」で登場したブレックス・フォーラ准将(ティターンズに対抗してエゥーゴを旗揚げした人物)は、志半ば(こころざしなかば)でティターンズに暗殺されましたが、


死ぬ間際(まぎわ)にクワトロ・バジーナ大尉にエゥーゴを託したところから、クワトロの正体がシャアであることを知りつつも、彼に絶大な信頼を寄せていたものと思われます。


 

 

 

 


(参考:西村昌彦/著,『30分でわかる決算書 平成22年度改訂版』,財団法人大蔵財務協会,2010)
紹介記事へのリンク↓

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減価償却の必要性を説明した記事へのリンク↓

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基本財務3表(PL・BS・CS)を説明した記事へのリンク↓

http://ameblo.jp/chottonodoryoku/entry-10850380962.html


ガンダムでビジネス知識を説明した記事へのリンク集Ⅹ↓

http://ameblo.jp/chottonodoryoku/entry-10909780156.html