有効需要再び | 秋山のブログ

秋山のブログ

ブログの説明を入力します。

有効需要の現状に関してもう少し掘り下げてみようと思う。

Wikiの説明によれば、有効需要とは『貨幣的支出の裏づけのある需要』とのことであるが、その後で、『マクロ経済全体で見た需要のことを指し』『総需要と同義』とある。
これは現在における一般的な理解のようで、Yahoo知恵袋の有効需要の解答を見ればそれに則った説明ばかりだ。しかし、これは本当にケインズが提示したかった概念なのだろうか。そのような話ならば、最初から総需要と表現するか(お金で取引きされない需要を除外する必要はあまりない)、貨幣で取引きされる需要とでも言っておけばよかったはずである。ケインズの提案する政策を考えてみても、有効需要は、総生産力に需要が追いついていないということが概念の核のはずなのではないだろうか。

前述のYahoo知恵袋のベストアンサーはかなり問題のある理解だと思われる。有効需要を『買いたいと思う欲望』と表現している。今この日本で需要を抑制している要因は、欲望不足ではなくて、貯蓄率の低い(貯蓄する余裕のない)中下層の収入不足であることは間違いない。現実に物価の低下以上に(同じ生活に必要な支出はむしろ増大している)、収入の低下は見られる。そこを欲望不足としてしまうことで、支出に対する収入不足が原因であることが分りにくくなってしまうだろう。

再度Wikiの内容に戻ってみよう。追っていけば、経済学のおかした誤りが見えてくる。

セイの法則にはその根拠が記述されているが、『価格が柔軟に変動するなら、(中略)すべてが需要される』などということは、全く事実ではない。価格が柔軟に変動することも現実的でなければ、柔軟に価格が変動しても需要飽和は日常的におこることであり需要される保証は全くない。

ちょっと面白いのは次の有効需要の原理という項目だ。
ケインズは『所得のうち消費されなかった残りにあたる貯蓄の一部が投資されない可能性』について言及していたようだが、ケインズもまた消費されなかった残りが貯蓄であるという誤りをおかしている(マクロで考える時は完全に誤りである)。
『ケインズの診断によれば、古典派の均衡理論では景気が後退すれば資金供給が増え(貯蓄↑)資金需要が減る(投資↓)ため金利は低下するはず』とある。景気の後退(景気という概念も定義が曖昧、または概念を生かせない定義となっている)があれば、事業は縮小されるために(直接)投資は減るであろう。しかし景気の後退では、収入の低下がおこるわけでもあり、貯蓄率の上昇は必ずおこるわけでもない。そもそも貯蓄と投資で均衡がおこっていると考えること自体、十分な実証のない根拠の乏しい理論だ(信用創造など全く考慮されていない)。ケインズは結局価格の変化には懐疑的であったものの、均衡がおこるということ自体は肯定していたわけで、それがケインズの失敗のもとであったと思われる。金利が2%を下回らない事実(このカラクリは後日)に対して、均衡自体の否定で十分なはずであるが、ケインズは均衡自体は前提としているために、流動性選好という概念を持ち出して説明している。しかし流動性の罠も、低金利でも投資が活発化しないという事実(クルーグマンはこれをもって流動性の罠であると強弁している)はあっても、今の現実の経済では観察されない現象(現代人はほとんど現金を持つ必要性が低い)である。
この項の最後の部分でもその誤りが見て取れる。『高止まりした資本調達コストのもとでは、雇用量を決定する企業側の供給サイドは、好況により見こまれた総需要が総供給を上回っていれば総供給量と雇用量を 増大させるだろうが、不況により総供給量が総需要量を上回っていれば「慣行的な」水準より利子率が低下しない以上、雇用量を減少させ非自発的失業を発生せ ざるをない』とあるが、資本調達コストは商品の価格に反映される。コストが高ければ需要は抑制的になるが、それは単にマイナスの要因の一つに過ぎないだろう。コストが割高だから失業が発生するわけではない。もちろん利子がどれだけ下がっても失業がなくなるわけでもない。商品の価格がゼロ又はマイナスでも無限に売れるわけではないことを考えれば、当然のことだ。