組合と情報 | 秋山のブログ

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政府は、労使に介入して賃金を上げさせようとしている。政府に言われなくても、組合は賃金を上げることを要求し、それなりの調整がおこなわれるというのが本来の姿だ。しかし組合は、不況による企業の売上げが下がっていることを鑑み、もしくは給与アップよりも誰かの首が切られないことを優先して、賃金アップを求めてこなかった。我慢するのが美徳だとか、皆我慢しているのだから我慢するべきだなどと言う考えが蔓延し、例えばストをして要求を実現しようとすることが好ましくないかのような空気も出来上がった。その結果が、デフレスパイラルだ。経済の成長は滞り、貧富の差は拡大し、中下層が貧困化することとなった。

とりあえず安倍総理周辺が経済成長の仕組みを理解していることは喜ばしいことだ。しかし、国民や当事者の組合員、財務省官僚の一部(分っていて国民を騙そうとする悪党かもしれない)まで理解できていないということが大問題だ。

成長とは、簡単に言えば、生産と消費が増大することだ。誰かがより多く生産できるようになった時、それがいかに消費増に繋がるかが重要になる。
一番健全なパターンは、多く生産した人の収入が増え、その人が使うことで他の人の収入も増え、そして多くの人が生産性を高めることによって、全ての人の収入も支出も上がることだ。
多く作れるようになったことで、単価が下がるというパターンもある。可処分所得が増えるということは同じなので、それはいいことのようにも思えるが、欲求不満の状況にはあっても飢えるほどではない先進国では、需要を伸ばさずにお金が死蔵される可能性も高い。大抵は前述のパターンと混合であるだろうが、前述のパターンの度合いが強ければ強いほどよいだろう。
最悪なのは、生産性の増大が、人件費カットのために使われるパターンだ。儲けを第一に考えるのであれば、企業の考えることはそれだろう。生産性の増大で例え失業が生まれようとも、失業者が新しい職で収入を得るための需要が生れるなら何とかなるかもしれない。しかしこの場合、失業しなかった労働者の賃金は内容的により多く働いているにもかかわらず据え置き(失業者を理由にそれ以下の場合も考えられる)で、需要増加には結びつかない。当然、失業者の分は減っている。そして目先の利益に目がくらんだ企業も、需要不足に悩まされることになる。

要するに、経済成長には労働者の賃金というものがいかに重要な要素かということだ。したがって昨今組合がおこなってきた、雇用を維持するために賃金の上昇を諦めるという行為は、全くの愚行だ。企業が潰れては元も子もないと自粛するのも、たいへん馬鹿げているだろう。余程のことをしても企業は潰れるほどは払わないであろうし、実際には浮いたお金で内部留保をかなりやってもいる。企業を慮るのであるとしても、企業の業績等の情報をきっちり把握して、組合は交渉に臨むべきだろう。そこで、賃金のバランスが自然に適正化に向かうためには、情報が非対称でないことが必須だ。もし企業側が情報を開示しないのであれば、慮る必要はどこにもないだろう。

組合の活動をするものが、経済を勉強しないことは罪である(もちろん、政治家や経営者もそうだろう)。とは言え、勉強しろと言うだけでは意味がないので、何に着目すべきか考えてみようと思う。

しばしば出てくる労働分配率は重要な指標だ。ただし注意しなくてはいけないことは、その定義によっては、他国に比べて日本が高いことになってしまいどうなのかという話になりかねない。内閣府が大変よい説明をしているので参照されたい。他にも米国は高いが、労働者の中での格差に関してこの指標は何も言ってはくれないので、そこにも留意する必要があるだろう。
内部留保の額や、借入金、株価、株主資本率、配当等々と、その推移には目を配るべきだろう。例えば大きな配当を出せるように売上げが拡大したのであれば、同じ程度賃金も上げることができるはずだろう。
また、その時点の成長率と配当を比較してみるのも、有益なことだと考えられる。

交渉する組合の代表は、経済を勉強し、企業の情報をしっかり解析して交渉にあたって欲しい。