ステグリッツ教授はかく語りき(機会均等) | 秋山のブログ

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inemuri-papaさんのブログにお邪魔したら、興味のあるページを紹介していた。そのページの筆者は本物の新自由主義者、そしてそれなりに切れ者である。自由貿易推進の理由が面白い。引用する。
『関税撤廃等の自由貿易は、「パイの大きさ」を増やす(プラス・サム(和))手段である。 経済の障壁を取り除けば、経済活動にとって有利になり、それによって「パイの大きさ」が増えることには疑う余地はない。 ただし、自由貿易によって「パイの大きさ」が増えることが確実であっても、「パイの分け方」の公平さや保証されない。。。(中略)。。。

以上を踏まえると、自由貿易に反対するのは次のような人だろう。

  • 社会全体の「パイの大きさ」が増えても自分の分け前が減ることが確実な理由がある
  • 社会全体の「パイの大きさ」が増えることが理解できない
  • 自分の分け前が減らないのに減ると誤解している
  • 自分の分け前が減らなくても、分け前の減る人が居ることが許せない

1番目の理由で反対するのは止むを得ない。。。(中略)。。。 2番目と3番目については、自由貿易についてちゃんと勉強しろと言う他ない。 4番目については、そんなことを言い出したら何も出来ないと言っておこう。。。(中略)。。。一時的に損をする人がいたとしても、将来も含めた長い目で見れば、その損をした人にとってもチャンスが増える。 プラス・サムは、確率的期待値で見れば、全ての人にとって得をもたらすのである。』

2番目の理由はちゃんと勉強すれば分ることではなくて、教科書に書いてあることを鵜呑みにしているだけである。もうちょっと深く考えれば必ずしもそうでないことは分るだろう。
必ず大きくなるという意見は、参入コストの無視、労働塊の誤謬を短期でも成立するとする間違いに基いている。P115あたりに書かれていることで、既にグローバル化の話で引用した。

「一時的に損する人がいたとしても、将来を含めた長い目」ということが、一番の間違いだ。
インセンティブのところで書いたが、一時的な不遇は、一生の不遇であるというのが、観察された事実である。そもそもグローバル化は、資本家と労働者の力関係のバランスを大きく傾ける(曖昧な確率などではない)直接的な方法であるわけで、逆転の可能性を著しく狭める性質のものだ。長い目では平等だからという主張は、新自由主義者がよく取るものらしく、教授も否定するようなことを書いている。

P57
『アメリカが本質的に公平であるという信頼は、そして、自分たちが”機会均等”の国の住民であるという確信は、人々の団結に一役買っている。このアメリカの神話は強い影響力と耐久力をそなえているが、最近では、神話というよりたんなるおとぎ話になってきている。』
P68
『アメリカの右派にとって、1章で説明してきた事実は都合が悪い。彼らが普及したがっている大切な神話と矛盾するからだ。アメリカは機会均等の国であるという神話・・・・。レーガン大統領が経済規制を緩和し、小さな政府を実現して以降、ほとんど人々が市場経済の恩恵にあずかってきたという神話・・・・。しかし、右派の人々が事実を否定したくても、多くのデータを見ればそれは難しい。。。(中略)。。。。近年、急拡大を続けてきた一生涯の不平等は、きわめて高い水準にあるだけでなく、任意の時点における所得格差とほぼ同じ水準にあるのだ。』


関税撤廃は全ての人々のためというのは、完全な市場と完全な機会均等という嘘に基く話だ。実際には、完全どころかある程度すら達成できていないというのが現実であり、事実もそれを裏付けている。