記録狙いの弊害 | リングサイドで野次を聞いた ~独善的ボクシング論

リングサイドで野次を聞いた ~独善的ボクシング論

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以前、いらない記録として最短王座奪取と複数階級制覇を上げたことがありますが、今回は連続KOも加えていいかなと思ったりします。勿論、ムサシ中野の記録した12連続KOや浜田剛史が(1無効試合挟んで記録した)15連続KOは燦然と輝く記録です。しかし、まったく戦意の無い相手で作り上げた連続KOではこれらの記録と等価値で扱おうというのは失礼ってものです。先人の作り上げた記録を更新するということは未来に対しての責任も負う事になると思います。数字を越えればいいってものではないですよ。
そう思ったのはこの記録に固執し続けた結果、ボクサーとして旬を逃がしてしまい、打たれて打つというダメージ蓄積型のスタイルになってしまった例も観てきたからです。
倒すことを意識しすぎた攻撃特化の試合は観てて面白いものの、相手のレベルが上がれば当然それだけでは通用しません。防御面が素人目にも疎かになり、攻防のバランスが悪い選手が量産されることになるからです。
土屋修平が川瀬に続いて中谷にも連続でKO負けを喫してしまったため、今まさにそこが問われてる気がします。センスと攻撃力に長けてるものの、本当に攻防のバランスの取れた実力者に通じるかどうか?その現段階での答えが出てしまったわけです。今後、ここから這い上がっていくか、このままフェード・アウトしてしまうのか、まさに正念場と言えるでしょう。

例えばここ最近だけでもこの記録に捕らわれてしまった選手としては下記の選手がいます。

・金井アキノリ(姫路木下)
・丸山大輔  (筑豊)
・渡部あきのり(協栄=牛若丸あきべぇ)

世界戦まで歩を進めたものの赤井英和もそうだったかも知れません。丸山と金井は地方ジムゆえ中央へアピールするものが欲しかったのかも知れません。あきべぇは気風の良さもあったのですが、あの一家との絡みでかなり遠回りした印象を受けます。今みたいな信用を回復させるためには3連続KO負けの苦難の時期も含めてかなりの時間を必要としました。思えば土屋も福原寛人には勝利したものの、肉を斬らせて骨を断つ式のスタイルでは限界も見えてましたね。

金井・丸山・渡部は3人とも日本王座に挑んでますが、いずれも苦敗(渡部のみ2度目の挑戦で奪取)してます。金井は榎の硬質な左に顔面を弾かれ7Rでストップ、丸山は有永に9RTKO負け。あきべぇだった頃の渡部は最初のダウンを奪った直後に湯場の反撃に会い、2度のダウンを奪われて1R90秒でKO負けしてます。共通項は攻撃に迫力があるものの、一旦防戦に回ると成す術が無い。換言すれば素人目にも防御が悪いということになります。

私も含めて我々観戦者も派手な打ち合いだけに目を留める事なく判定勝ちでも大差であればKO勝ちと等価値であるという認識で観て行かなければいけないかなと思ったりします。戦略・戦術を想像し、攻撃だけだなく防御の機微まで楽しめる見方が出来る様になれば、またこのスポーツを観戦する楽しみが増してくると思いますし、そういう観戦者のレベル・アップがプレーヤーや業界の底上げに繋がることになるはずです。結果としてカマセしか倒せない選手や弱い相手としか戦えない選手を淘汰することになると思います。

土屋は日本王座へ挑戦こそしてないものの、本来のSライトでは今の王者が小原ですから相当に厳しい予想にならざるを得なかったでしょうね。とりあえず列の先頭に並んだ中谷が狙うのはライトの加藤か?Sライトの小原か?どちらにしても目が離せない試合になりそうです。