渡嘉敷vsマデラ1検証 | リングサイドで野次を聞いた ~独善的ボクシング論

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過去、日本において行われた世界戦でも地元判定として歴史に刻まれる試合はいくつかありますが、世間を巻き込む程の大騒動になった試合といえば鬼塚vsタノムサク1と渡嘉敷vsマデラ1、亀1vsランダエタ1などがあります。他にも際どい試合は多々ありますが、一般紙誌まで巻き込んだのはこの3試合がトップでしょう。
さて、その中で私がフル・ラウンド見る機会が無かった渡嘉敷vsマデラ1のノー・カット版がyoutubeにあったのでじっくりと腰を据えて見てみました。ちなみにTBSチャンネルで放映されたのですね。以前、渡嘉敷特集をやってくれたときはこの試合はハイライト(ダイジェスト以前の扱い)だったのでupしてくれた方に感謝です。
82年4月4日、宮城県仙台。具志堅に関わる防衛戦が例の薬物オレンジ疑惑で取り上げられたこともあり、このうえない逆風が渡嘉敷に吹いていたことは覚えてます。具志堅の後継者的な位置にいたこともあり、本来なら試合で雑音を黙らせる必要があったのですが・・・

試合全体を通しての印象ですが、マデラの手数の多さと戦略に対する揺るぎなさ、対して渡嘉敷は初防衛戦の緊張からか時に弱気とも取れる表情を見せてしまっていたのが対照的です。1Rはどちらとも取れる微妙なラウンドでしたが2Rからマデラが早くもペースを掴みます。序盤に渡嘉敷が顔を跳ねあげる様な右を好打してもマデラが手数と圧力で圧倒して結果、ラウンドを取っていきます。私的には4Rまでマデラがフルマーク。
5Rは微妙ながらも足を使ってペースを挽回した渡嘉敷か。渡嘉敷のベストは7Rと10R。特に10Rは連打でマデラの足許がふらつきます。千載一遇のチャンスでしたが攻め切れず、11R以降にはマデラが再びペースを掌握。特に13R以降は大きな右アッパーを空振りしてバランスを崩し、そこをマデラに攻め込まれること多数、15Rも終了間際にダウン寸前に追い込まれるピンチを辛うじてしのぎきり終了。
解説の白井、具志堅両氏は渡嘉敷の負けを明言してましたが、2-1で判定は渡嘉敷に。このノー・カット版でも採点部分は削られており2-1のスコアだけがテロップで出されて終了していたところに放映側の苦心の後が偲ばれます。私的には146-137でマデラ。7差ですから10-10を多くしても採点を逆転させるのは大変ですねぇ・・・

渡嘉敷にしろ、鬼塚にしろたった一試合、こういう試合があっただけでも引退後もいろいろ言われてしまうのは残念です。戦った本人達はやれるべきことを全力でやっただけにいかなるロジックがあって勝ちになったとしても、負けた試合以上に汚名を被ってしまったことは事実です。
ただ、渡嘉敷はマデラと計4度対戦し、鬼塚もタノムサクと再戦してリングで被った汚名をリングで注ごうとした気概は本物のボクサーだと思います。
(亀1とランダの再戦は私はガチと思ってませんので除外)