再び、家を失う。 | 元U-20ホンジュラス代表GKコーチ・山野陽嗣の「世界一危険な国での挑戦」

再び、家を失う。



家を失うの続きです。



「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -恐怖のクラブハウス帰還。11月19日(火)


 
 パリーヤス・オネのGKコーチとして戦った今シーズン も、先日ついに終了。



 「シーズンの終了」は、すなわち「住居を失う」事を意味していました。

 なぜなら、【家を失う 】でも書いたように、僕が「4ヶ月」かかってやっとの思いで手に入れた「新住居」であるホテルは、会長との約束で「今シーズンが終わるまで」限定…。シーズンが終われば、直ちに立ち退かなければならない事となっていました。

 シーズン最後の試合では、試合の結果はもちろん、「明日からどこに住めば良いのか?」が心配で不安でたまりませんでした(頼むから試合に100%集中できる環境を整えてくれ、チームよ…)。「住居」が安定しない生活は、本当に心身を疲弊させます…。

 チームはオフに突入しましたが、僕はまだ10月分の給料が支払われていないのと、来季の事など不確定要素が多いため、テラ(パリーヤス・オネのホームタウン)にて待機している状況です。


 …が、一体、どこに住めば良いのか?


 あらゆる方法を模索しましたが、現実問題、テラで今、僕が住める場所はただ「1つ」しかありませんでした。それが…。



「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -恐怖のクラブハウス帰還。11月19日(火)⑤




 「クラブハウス」

 

 そうです。僕の人生を地獄に陥れ、あまりのストレスと心身の疲弊で体重を8kgも根こそぎ奪い取った、あの
不衛生度MAX・プライバシー0(ゼロ)・サソリも出る最強最低クラブハウス 」です…。※上の2枚の写真はクラブハウスの入口。

 「あそこに戻るくらいなら、チームを辞める」とまで決意していた自分。では、なぜ再びクラブハウスに戻る決断を下したのか…?

 1つ目の理由は、「今を生きる」ため。実際に今、テラで「住める」場所はここしかない。他の選択肢はありませんでした。「今を生きる」ために、クラブハウスに戻らざるを得なかったのです。正に、苦渋の決断…。

 2つ目の理由は、今のクラブハウスなら以前と違って「普通に生活できる」可能性があった事。実はチームがオフに突入したのと同時に、クラブハウスで生活していた「破天荒」集団である選手たち全員が故郷の実家に帰省。オフ期間中である今は、誰もこのクラブハウスに人が住んでいないのです。…そう。今なら「僕1人」でこのクラブハウスを使えるのです!!


 とにかく、この「2つ目の理由」は、大きかった…。

 今回、僕が寝なければならない部屋は、以前同様「鍵が無い」状態で施錠できない部屋。玄関は鍵こそあるものの「他の選手が深夜も出入りするから」という理由で鍵はかける事ができず常に開きっぱなし状態だったため、以前は僕が寝る部屋にいつでも誰でも好き放題に出入りでき、それで僕の所有物がいくつか盗まれる、睡眠妨害されるなど散々な目に遭いましたが、もう誰もここに居ないので「玄関の鍵をかける」事が可能になり、僕がクラブハウス内に居る時は完全に外部からの侵入者をシャットアウトできるようになったのです!!!!セキュリティー度、安心度、安眠度、飛躍的アーーーップ!!!!アップ


※「鍵が無い」…というか、今回3ヶ月ぶりに帰ってきてみたら「ドアノブすら無い」状態になっていた、僕が寝る部屋…。

「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -恐怖のクラブハウス帰還。11月19日(火)②



※ちなみに僕が寝る部屋は以前同様「台所横のスペース」ですが、その「台所」…3ヶ月ぶりに帰ってきてみたら、自分の部屋が無かった選手が台所を占拠&改造して、強引に自分の部屋にしてしまっていました。恐るべし、ホンジュラス人…(どう考えてもW杯に出場する国のトップリーグでプレーするプロ選手が住むような場所じゃないじゃろ!?台所で生活って…)。

「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -恐怖のクラブハウス帰還。11月19日(火)③



 ただ、相変わらず不安要素もあります。

 「僕がクラブハウス内に居る時は完全に外部からの侵入者をシャットアウト」と上記しましたが、僕が「クラブハウス外」に居る時は…何とこのクラブハウス唯一の玄関の「鍵」を破天荒な選手がへし折って破壊したらしく、このクラブハウス…「外から鍵がかけられない」のです。つまり、僕が外に居る時は、いつでも誰でも好き放題に侵入できる…。これは、イカン。実は今日の昼、僕が少し外出している間に近所の子供が勝手に僕の部屋に侵入してきて火遊びをし、ベッドを焼き焦がされる…という事態が起きました。これは危険過ぎる!!危うく、火事になるところでした。本当、油断も隙もあったもんじゃない…。


「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -恐怖のクラブハウス帰還。11月19日(火)④



 例の「サソリ」もまだ生息しているらしく、今回3ヶ月ぶりに帰ってきてみたら「アリ」も大量発生していて、毎日、アリの駆除に追われています。

 …が、今のところは(たったの2日間ですが)、何とか元気に幸せにオフ生活を満喫できています!!


 自分の中では今回のオフは「帰国」を考えていたのですが、オフがほとんどないため、帰国する事はできませんでした。これで「9ヶ月間」、日本に帰国していません。

 この「9ヶ月間」…。僕はスカイプや国際電話を通じて日本の家族とただの1回も話していませんでした(メールでの連絡は取っていましたが)。家族のみならず、日本の友人や知人ともスカイプや国際電話をしていません。別に日本の家族や友人、知人と話がしたくなかった訳ではありません。むしろ、その逆…。できる事なら、家族や友人、知人と話がしたかった…。

 しかし今回は「自分の中で納得いく成果と結果がホンジュラスで出るまでは日本の家族や友人、知人と話さない」と決めていたので、ここまでの「9ヶ月間」…あえて全くスカイプも国際電話もしませんでした。また頻繁に日本の家族や友人、知人と日本語で会話していると、どうしても日々の不満やグチなどが口からこぼれてしまい、自分の中の「弱い部分」が出てきてしまう…。そうなると、夢や目標も実現できなくなってしまう…。だからこそこの「9ヶ月間」、日本の誰とも肉声で会話はしませんでした。「おととい」までは…。

 おととい、僕は9ヶ月ぶりに父(オーガ) とスカイプで話しました。今シーズンを終えた後、自然と自分の中でやりきった。まだ道の途中だが現時点で納得いく成果と結果も出た。父にスカイプで報告しよう…という心境に9ヶ月間で初めてなりました。レアル・ソシエダで昨季「準優勝」と「リーグ最少失点」を達成してもそういう心境にならなかった のにです。9ヶ月ぶりに聞く、父の肉声…。何だか、今までに感じた事がない不思議な気持ちがしました。そして、なぜか涙が出そうになりました。日本に帰国していなくとも、まるで日本の実家に居るかのような感覚がしました。


 パリーヤス・オネとの契約は来季の終わりまであり、今季の結果を踏まえれば、普通に考えれば来季もパリーヤス・オネで働く事になるのですが…「普通じゃない」のがホンジュラス。いろいろ嫌な噂もありますし、来季の事はまだどうなるのか本当に全く分かりません。

 それでも、これからも日本の家族や友人、知人…お世話になった全ての人に良い報告ができるよう…さらなる夢と目標の実現を目指してホンジュラスで魂込めて戦っていきます!!


「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -VSオリンピア。2013年8月24日(日)③




◆連絡先メールアドレス: cafehondurasyoji@hotmail.co.jp