松山洋による20,000文字手記“「.hack//G.U.」全記録”前編【4】 | ゲーム制作会社 サイバーコネクトツー 松山洋の「絶望禁止」ブログ

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「.hack//G.U.」完全設定資料集 .hack//Archives_02 BLACK
「.hack//G.U.」完全設定資料集 .hack//Archives_02 BLACK LIGHT EDITION より

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その中でも一番「GU」という新プロジェクトに深く関わってくるタイトルがある。
小説の新シリーズ「ZERO」だ。

脚本家・横手美智子が全3巻を書くことになっていて現在、執筆中だ。
コレのはじまりは…昨年2002年の秋頃に、
ねえさんから直接“小説を書きたい!”という相談を受けて…
新里と二人で博多駅の喫茶店で相談して松山が企画書(概要)を書いたものだ。

角川書店のスニーカー文庫として発売されることになっている。
もうすでに数回、打ち合わせも行っている。現在、分量でいうと。
通常の文庫1冊=原稿250枚に対して150枚程度が完成していて。
実はつい先ほど200枚くらいまで書きあがったものを受け取った。

そしてじっくりと読んだ。
今回のこの小説の仕事を進行する上で自分の中で決めていることがある。

“ねえさんに、感想を言わない”

ここはこうじゃない。この設定は間違っている。
という指摘は当然…言うし伝える。が。感想は言わない。
なぜか、自分でそう決めてしまった。

ねえさんとは、今まで何度となく会ってるし、飲みにもいっている。
が、実は(なんだかんだで)一緒に“仕事”をするのは今回がはじめてなのだ。
自分の中で“脚本家・横手美智子”という人間を“チャチャ”を入れずに
見てみたいという感情があるのか?わからない。

しかし…なぜか、自分でそう決めてしまった。
そう、決めていたにもかかわらず。実は。
本日(つい今)、受け取った完成原稿200枚を読んで…
自分の中から溢れてくる濁流のような“感情”に押し流され、
携帯電話を取り“ヤ行”に登録してある“横手美智子 携帯”という番号に
そのまま掛けそうになった…ところで携帯をおいた。

そう、なんとか踏みとどまった。
正直やばかった。

電話して“アンタ…スゲェ”って今、感じているこの感情を全てぶつけそうになった。

スゲェ。本当にスゲェ。

人生の中で稀に、ある種の人間に対して嫉妬に似た…
絶望的なほどの“天才”を感じることがある。今まさにソレだ。
大直面している。横手美智子の“天才”に。

新里ともよく話をするが(途中までの原稿を読んで)
「やっぱ、ねえさんはスゲェな」「ウメェ」ということをお互い言い合う。

が。それをねえさんには今まであえて言わずにいたのだ。

今回は…………………本当にやばかった。

前回から追加された50枚にやられそうになった。
事実、脇の下に汗をかいた。

かけそうになった携帯をなんとか置いて、
行き場の無いこの感情を慰めるためにこの手記を書いている。

………………………………………………。

自分で勝手に決めた勝手なルール。
“今、ねえさんに中途半端に感想を述べて
中途半端に褒めることはねえさんの作品を壊す”


そんな気がきっと自分のなかであるのだろう。
ちょっとニュアンスが違う気もするが、そんな風な感情だ。

あと50枚だ。

今週末には伊藤和典・川崎美羽・内山大輔と共に
博多のCC2でミニ合宿を行うことになっている。
この「ZERO」の残りの50枚を書き終えてから。

正直。もう我慢の限界が近づいている。
ねえさん。早く残りの50枚をあげて完成させてください。
そして。心のそこから言わせて欲しい。

“あんたは…本当に………………………………………………”



2003年04月05日(土)13:30
この日は一応「ミニ合宿」と銘打った終日打ち合わせの日だった。
いや、はずだった。

メンバーは…
伊藤和典・横手美智子・川崎美羽・バンダイ@内山大輔・そして松山洋・新里裕人だ。

まず、ねえさんの「ZERO」の原稿が…上がってない。
“あげてから来い”って言ったのに。
そして伊藤和典の「GU全体構成(2巻・3巻分)」が全くできてない。

おーい…。

結局。CC2が用意した「GUシステム案:ザ・ワールド編」についての話を行った。
しかし…これはあくまで「新しいThe World」の基本システムである。
前作での問題点や不満点を解消した、正直“やって当たり前”の内容である。
最低限の方向性の確認である。

「.hack」の醍醐味は“2面性”と“デジタル破壊”である。
その前の話なので…本当にさくっと話が終わった。

あとは…新里がなぜかたっぷり描いてきた
「メインキャラのビジュアルイメージ」
をみんなで見た。

「お前(企画)の仕事は絵を描くことじゃないだろう?」

そんなことを思いながらみんなでその絵を見たが…
(やはり)びっくりするくらい不評だった。

本当にこの日は…これ以上進行しなかった。
結局、夜「もつ鍋」を食べに行って飲みに行って…終わった。
あーあ…。まあ、こんな日もあるか…。



2003年04月17日(木)17:40
ようやく。ようやく小説「.hack//ZERO Vol.1 ファントム・ペイン」が完成した。
横手美智子が成し遂げた。

そして今。電話で2巻の話を軽くしたあとに…私の「気持ち」を伝えた。
その内容は…秘密だが。(申し訳ない)

その時に横手美智子がこんなことを言った―――




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本コラムは、下記冊子より抜粋したものです。

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