松山洋による20,000文字手記“「.hack//G.U.」全記録”前編【1】 | ゲーム制作会社 サイバーコネクトツー 松山洋の「絶望禁止」ブログ

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福岡に本社を置くゲーム制作会社 サイバーコネクトツー 代表取締役 松山洋の公式ブログです。
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「.hack//G.U.」完全設定資料集 .hack//Archives_02 BLACK
「.hack//G.U.」完全設定資料集 .hack//Archives_02 BLACK LIGHT EDITION より

▼これまでの「.hack//G.U.」コラムアーカイブ
http://ameblo.jp/cc2-piroshi/themeentrylist-1-10072483124.html


これから始まる新しい「.hack」のために手記を綴ろう。

ふと、そう考えて・・・書き始めることにする。ちょうど今は・・・

2002年11月21日(木)21:00
まだゲームも「.hack//悪性変異 Vol.2」までしか世に出ていない。
年末の「.hack//侵食汚染 Vol.3」と来年春の「.hack//絶対包囲 Vol.4」のリリースを・・・待っている状態。
待っているとは言ってもVol.4はまだマスター通ってないし(ver1.01調整中)、
USA版のVol.2も鋭意制作中だし、(これは世間的にはまだ秘密だが)
PS2の「ナルティメット」のα版をおもいっきり作っている。

そんな中。今、手元に・・・企画の新里と一緒に作った“企画イメージ書”
とりあえず新里がまとめた“システムイメージ書”がある。
「.hack//SECOND(仮)」プロジェクトの為の物だ。

まだ、社内でもその存在(動き始めていること)を知っているのはほんの数人しかいない。
(いや、ひょっとしたらみんな気づいてて黙っているだけかも)明日から東京のバンダイで、
内山大輔と脚本家の二人、伊藤和典・横手美智子
私の4人で打ち合わせをすることになっている。

現状、ゲームシステムは「.hack//FIRST モルガナ編」を元に
“弱点”“伸ばすべき点”の再認識とその改善・改良案を出すだけだしている状態だ。
しかし・・・“企画イメージ”に関しては既にもう
自分としては”完成された”ものが・・・・・・・・・・ある。

間違いなく・・・“面白い”ものになると感じている。

間違いなく・・・“燃えられる”

そんな“仕組み”になっていると思う。
あまり書くと・・・きっとこのあと必ず訪れるであろう“仕様変更”の際に
恥ずかしい思いをすることになると思うので・・・このへんにしておく。

恐らくリリースは今から2年後になると思うが・・・今まで作ってきたものも“そう”だし、
今手元にある企画イメージ書も含めて自分が感じている“気持ち”を表現して・・・こう、宣言しておこう。

“「.hack」は面白い”本心からそう、思う。

2002年11月27日(水)17:00
11月23日の打ち合わせで出てきた全体像のアイデアと物語プロット・キャラ一覧の
それぞれの雛形(実際はメモ)をもとに新里と会議室でミーティングを行う。
先日(11/23)のミーティングではやはり断片的なアイデアしか出てきてないし
何より伊藤さんと横手さんの集中力が限界に近づいたところで時間切れとなった。

しかし・・・収穫はあった。

「ゲーム脳」

このことについて学んでみることにする。
つかみの大事な要素であると狙いをつけてみた。
新里に話したら大絶賛されたこともあって拍車がかかった。

これから新里とゲームシステムとゲーム進行・各巻の流れ・物語性についてアイデアを出し合うことにした。
システムだけでないのは…我々ゲーム制作者にとって「いい意味で都合の良い物語」にするためである。
ここが・・・演出なども含めて・・・一番肝心なトコロだ。
まずは・・・「The World」と他「ネットゲーム」との関わり(位置関係)と進行について決めていきたいと思う。

2002年12月26日(木)13:00
脚本チームに新メンバーが入った。

川崎美羽

伊藤和典の新弟子である。
会うのは…これで3度目?…かもしれないが。
ともかく、新メンバーである。

この日は、正直“軌道修正の日”だった。
最近、新里ともよく話すのだが“早く型に収めようとしすぎている”感がある。
全体的にどういう流れなのかまとめようとするが、すぐ詰まる。

なぜか?ネタが足りないからである。

なんとなく色々ネタが出始めると“まとまるのでは?”
という錯覚にかられてまとめたくなるのだが・・・すぐ詰まる。

なぜか?ネタが足りないからである。

要するにまとめるのはまだ早いのである。
そう、もっと色々なパターンの検証が必要である。前シリーズでの欠点の見直し。
改善点。改良案。伸ばすべきポイントの見定め。思い切って無くしてしまう必要がある箇所。
スタイルとしては全3巻構成で行きたいと提案した。これは前シリーズから学んだことである。

そして…解消しなければならない最大の問題“ボリューム不足”。

これは、ユーザーに染み付いたいわば我々が残念ながら前作で与えてしまった悪いイメージである。
やり方として色々あると思うが今回は“ものすごくわかりやすいやり方”でそのイメージを脱却させたいと考える。

“オープニングパートを贅沢に”
“第一OPと第二OPを作りそのあとにようやくタイトルが出現”
“大作感を出す”

提案後、伊藤和典が眉をしかめた。
なんとなく、イヤそうだった。気持ちはよくわかる。昨今のゲームタイトルはとにかくOPが長い。
ゲームプレイを開始するまでに見てる時間が非常に長い。特に海外では嫌われる演出だ。

けど。必要なことだと思った。

結局、今から作ろうとしているものはいわゆる“JRPG”なのだ。
誰に向けた作品なのか?こういうRPGが好きなお客様に向けた作品なのである。
であれば突き抜けるべきだ。

はじめて触るこの世界に、ドラマにしっかりと入ってもらうためにも
ゆっくりと浸透させる必要がある。
あくまでゲームプレイを行いながらドラマと世界も前段階として理解して
夢中になってもらう必要がある。

最初が肝心だ。だから――――

本コラムは、下記冊子より抜粋したものです。


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