マントラの向こう側 第五回『オレらって……離れられない運命な?』 | ゲーム制作会社 サイバーコネクトツー 松山洋の「絶望禁止」ブログ

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潔く柔く 1 (マーガレットコミックス)/集英社
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『潔く柔く(きよくやわく)』という漫画を読みました。
いくえみ綾さんが描かれた少女漫画です。

私自身、なかなか不勉強で少女漫画そのものを全般的にあまり知らなかったりするのですが、
まれに人からオススメされたりすると一気に全巻購入して読んだりします。
今回もそのパターンで知ったりしたワケですが。
これが、もう、ドハマリしまして。衝撃でした。

〝ここまでか!? これほどか!?〟

と、おおげさではなく、思い知らされました。
本作自体は、2004年から2010年まで〝Cookie〟という
集英社の少女漫画誌で連載されて全13巻で完結している作品です。
マーガレットコミックスですね。

女子高生を中心とした登場人物それぞれの成長と
日々の恋愛模様を数話完結のオムニバス形式で描かれた作品です。

ただ、この〝オムニバス〟の手法がフツーじゃない。これは読めばわかるのですが、
(私から言わせると)全然オムニバスでは〝ない〟のです。
あくまでオムニバス形式を装っているだけで、全てのエピソードが緻密な関係にあり、
全て計算されつくした上で見事に繋がっているのです。

もちろん、他の漫画やゲームや映画作品でも同じような手法が施された作品はいくらでもあります。
映画だと、内田けんじ監督の『運命じゃない人』
ゲームだとイシイジロウ監督の『428~封鎖された渋谷で~』
『TIME TRAVELERS(タイムトラベラーズ)』など。
漫画だと浦沢直樹の『BILLY BAT』

もちろん、他にもたくさんありますし、それらの多くはオムニバス形式の都合と戦略上、
物語が進むにつれ話そのもののスケールが大きくなっていったり、
序盤では予想もつかなかったようなクライマックスが訪れ、お客様に大きな感動を与えます。

私自身もそのカタルシスが大好きで
〝この手〟の手法が使われる作品を好んで見たり読んだり遊んだりします。
なので、かなりの作品をすでに見てきていますし、体験しています。
そう、たいがいのモノは既に知っているし、経験済みなのです。

しかし、しかしですね、この『潔く柔く』は完全な未体験でした。
いや、どこか知っている手法ではあるのですが少女漫画が持つ、
ある種の特別な性質によってとんでもないリアリティを生み出しているのでした。

それは何か? ズバリ〝恋愛体質〟です。

そう、少女漫画が〝恋愛体質〟であるが故に、
誰も見たことがないエンターテインメントへと昇華しているのです。
今までのオムニバス融合系の物語というものは前述の方程式から、
後半に行くにつれ段々と予想もつかないスケールのものへと展開していきます。

それは勿論ワクワクするし、ドキドキしながら破天荒な展開に夢中になれるものです。
それも正解。ただ『潔く柔く』は少女漫画なのです。
いくら物語が進行してもテロリストは出てこないし、
ヤクザも警察も核ミサイルも毒ガスも東京都消滅!なんて展開も訪れません。

そこには〝ただある愛の形〟があるだけなのです。これがスゴイ。
だから、リアリティがある! のです。

現代を生きる女子高生にとってはテロリストも核ミサイルも関係ないのです。
好きなあの人との恋模様の前では全てがブッ飛んで、ただひたすら一途に愛するだけなのです。

これがたまらない。
これが〝いい!〟のです。

最初に読んだ時には、新しい章が始まるたびに

〝えー? また登場人物変わるのかー。
前の章のキャラのほうが魅力的だったような気がするなー。
新しいキャラを覚えるのもめんどくさいなー。〟


なんて思ったりもしたのですが、ほどなく

〝え!? ちょっと待て、これ前のエピソードのあいつの学生時代の話に繋がってるの!?
 ええ!? こいつも関わっていたってこと!? そんな馬鹿な!?
 いや、待てよ、けど、恋愛ってこんなもんじゃないか?
 意外と登場人物って実に狭いところで繋がっていたりして、
そういう気持ち悪さもリアリティのひとつだったり……〟


なーんて、気が付いたら感情ごとゴッソリ持っていかれてました。

そうなんですよ。恋愛って本来〝無敵の力〟なんですよね。
だーれも、敵いっこない。

女子高生は無敵なのです。

この〝恋愛体質〟というありふれたテーマが持つ普遍のパワーこそが、
本作の魅力であり最大限の枯れることのないエネルギーだと感じました。



『ASURA'S WRATH』では〝怒〟という普遍のテーマを中心に据えて物語を描いてきました。
その裏には勿論〝愛〟もあり、それは表のテーマである〝怒〟の向こう側でうまく表現してきたのですが。
〝愛〟を表に持ってくるととんでもないパワーが生まれることもあるんだなーと、
久しぶりに感心させられた『潔く柔く』なのでした。

ちなみにこの『潔く柔く』は2013年に映画化されます。
東宝系にて公開予定。主演は長澤まさみと岡田将生。
原作の最終章にあたる〝カンナ編〟を映画化するようです。
もちろん私は観に行く予定ですよ。


株式会社サイバーコネクトツー
代表取締役 松山 洋



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本コラムは、下記冊子より抜粋したものです。
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