仙台藩町家の特徴(2) | ゆるポタで心リセット“おれ野_お散歩日記”by_✡CAMMIYA…ちょいマニアックで開運

仙台藩町家の特徴(2)

村田2

川越794

 

 

 宮城の「小京都」・村田( 宮城県柴田郡村田町 )における町家構造の時代変移

 

 

発足当時の商家は、お上に命による町割に従って制限された間口の狭く奥行きが細長い屋敷地に、その当時の地域農民住居と同じように、奥行きに対して平入り平面の主屋を道路と直角に建て、隣地境界との間の幅の狭い空地を通路として利用

 18世紀の後半以降に、間口に余裕があった屋敷において、店(「たな」と呼ぶ)の部分を(売り場面積を広げるためであろうか)主屋に直角に(前面道路に並行に)別建てとし、道路側から見て平入りとするものが出現

(度重なる火災に対する商財の防護のためであろうか)幕末19世紀前半に平入り別建て形式の店舗を土蔵造りで建て替えるものが現れる。主屋は店舗から廊下で接続する。

明治維新後から大正時代にかけて、土蔵造り店舗の建立が益々盛んになるとともに、間口5~6間(約11m)あるいはそれ以下の狭い間口の屋敷においては、それまでの妻入り形式のまま、(間口が極端に狭い屋敷にもかかわらず、店舗部分のみ平入り形式に変換する例も、仙台城下の 河原町 などにおいて見られるが)土蔵造りによる建て替えが行なわれる。あくまで、旧仙台藩領内の各地域に限っての共通事項であるが、たとえ、間口の狭い屋敷においても「通り土間」は造らず、「前庭通行式」を貫くが、主屋への玄関をなるべく道路に近い場所とし、主屋奥地は純粋な「庭」機能に特化することで敷地の狭隘を緩和する工夫が見られる(現実的には、通風・採光の面において、間口の狭い仙台藩の屋敷は非常に不利であり、今日において現地を観察する限りにおいては、中庭・坪庭などの京町家的工夫が欲しいところである)。

(以上、草野(本ブログ前回http://ameblo.jp/camumiya/entry-10018618184.html 既出p.361362およびp.362図示)……これが宮城~岩手南部(北端は 岩手県江刺市 にかかる旧仙台藩領内における町家遺構の典型的特徴とされ、現実に村田と地理的に近い船岡・白石・角田・丸森・亘理・大河原・ 仙台市太白区中田 など村田と同様の遺構の例が、現地を歩くと観察される事、枚挙に暇がない。

なお、 仙台市若林区河原町 など仙台城下に近づくにつれて間口が狭い(3間以下)が連続する密集地域では、隣家との間の空地の狭さを「 落棟造 ( おちむねづくり ) 」と敷地奥に至る比較的まとまった広さが確保できた裏庭空地だけで採光・通風を得る構造が見られるが、それでもなお、「通り庭」「通り土間」は造られていない。

また、部分的に「前庭」を造るスペースが無い場合には、旧川越藩の大沢家の様に「 表屋造 ( おもてやづくり ) 」の一形態として造られた「前土間型」の店舗を出入する例が仙台の 河原町 で見られるが、その他の部分は、特に旧仙台藩で顕著な事例としてみれば、基本的には「前庭通行式」にこだわっている。

(以上、稲垣榮三「民家と町並み(復元日本大観6)」世界文化社1989年p.91,123、小倉強(監修)「実測図 仙台及び近郊の古建築」北匠会、昭和48年p.131‐132)

 今後、どうするのか?

 今後、たとえば中心市街地居住を図るにあたり、旧仙台領内で、古い街並みを活かした街づくりを目指すTMOを設立した 白石市 は全市域内で117戸、 水沢市 は同じく226戸の貸家建設実績が有る(建築統計年報13年度→14年版)需要をどのように伝統的建築意匠を中心としたまちづくりを進める中心市街地へ誘導していくのか? 「借り上げ公営住宅(宇部)」「中心街への建設補助(酒田)」など…?

 例えば、土蔵造りの店舗部分のみ歴史的遺産および文化財として現状保存する場合には、店舗と主屋および蔵が基本的には別棟構造になっているという旧仙台藩型の町家の特徴を逆手に活用し、街路側から見た場合における統一ファサード形成および歴史的遺産の継承に不可欠な棟だけ現況保存とし、それ以外の棟に限って歴史的意匠を採り入れながら創造的更新していくパターンも考えられる(提案)。

 しかしながら、中層で高密度居住の町家型集合住宅を目指すにしても、地方では特に郊外の戸建居住が好まれる傾向があることに配慮し、そのような人々の中心市街居住を誘導するためにも、街区密度は「戸建て住宅地としての限界(浅見泰司「住環境」東京大学出版会2001年、附p.69)」である200人/haを限度として採光・通風に有効な空地を積極的に確保したい。★

 (参考)旧仙台藩における知行方式の特徴に関する詳細な説明

      「中新田の歴史(普及版)」平成7年、

      宮城県中 新田町 (現・ 加美町 …平成154月に近隣2町と合併)p.122140

 (補足)旧仙台藩領「村田」における町家の特徴

      …「前庭通行式」「海鼠壁」「置き屋根」

      吉田桂二「歴史遺産日本の町並み108選を歩く」2001年、講談社p.3233

 

 写真(上)* 宮城県柴田郡村田町 (旧・仙台藩)

 写真(下)* 埼玉県川越市 (旧・川越藩=関東事例)

 写真はすべて本ブログ管理者自ら撮影す。

 

 

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