第54話 戸惑いながら その | 【小説】Cafe Shelly next

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喫茶店、Cafe Shelly。
ここで出される魔法のコーヒー、シェリー・ブレンド。
このコーヒーを飲んだ人は、今自分が欲しいと思っているものの味がする。
このコーヒーを飲むことにより、人生の転機が訪れる人がたくさんいる。

 私は自分で「メタファリングノート」というものをつくって、それに教えられたことを書き込む。さらにロールプレイで私がやってみて由衣さんからフィードバックされたことや自分で気づいたことも書きこんでいく。これが私のマニュアルになる。

 翌週はメタファリングをやる人、メタファリストとしての心構えなどを教えてもらった。

「みさきさん、メタファリストのライバルって誰だと思いますか?」

 聞かれて私は考えた。

「うぅん、占いに似ているから占い師かな。あ、あとコーチングをやっている人もライバルになる気がするなぁ」

「確かに、メタファリングに近い仕事はライバルという感じもしますね。じゃぁそういう人達に対してどのような思いをいだきますか?」

「どのようなって、やっぱライバルだから競争に勝たないと」

「競争かぁ。みさきさんはどうして競争するの?」

 言われてハッとした。ライバルという言葉から、競争するのが当たり前に感じていた。けれどよく考えたら、どうして競争しないといけないんだろう。そもそもメタファリングと占いは根本的に違うし。メタファリングはコーチングの一種だけど、別に顧客を奪い合う必要はない。

「何かに気づいたようですね」

 由衣さんの言葉に私は自分が思ったことを口にしてみた。

「ライバルっていう言葉に騙されるところでした。そもそもライバルはいない、こういった人たちと協力しながらやっていけるんじゃないかって」

「私もそう思います。実は私、有名な占い師とすでに協力しているんですよ。人によっては他人からのアドバイスが欲しいという場合もあります。そういう時にはその占い師を紹介しています。占い師も、これは自分で解決したほうがよさそうだというクライアントは私を紹介していただいています。おかげでお互いの顧客が増えているんです」

 なるほど、ライバルはいない、か。競争よりも協力。それが発展してくための秘訣なんだな。

 あと由衣さんに言われたのは、メタファリングは人の発展を願うために行うものであること。人を操作するものではない、ということだ。うぅん、そういう罠に陥らないようにしないとな。

「みさきさん、メタファリングはどんな場所でもできます。とにかく一歩を踏み出してください」

「はい、がんばります!」

 早速お金をとってプロとしての活動を始めてみて、ということ。今までは無料でやっていたけれど、いざお金を取るとなると躊躇してしまう。けれど、それだけの価値を相手に提供するのだから対価はとるべきだ。

 実はお金をいただくというのは相手のためでもあるとのこと。無料だと、自分の出した答えに重みを感じなくなる。そのため、せっかく出した答えも行動に移さない。ところが、わずかでもお金を出すと答えに重みを付けて、行動しないと損をするという気持が働くそうだ。それができるのが「プロ」というもの。

 なるほど、プロの意味はそこにあるのか。私は早速行動を開始することにした。まずは職場の人に声をかけてみた。だが、いざ有料となるとみんな二の足を踏んでしまう。

 なかなか一人目の有料客がつかまらない。やっぱ料金が高いのかな。でも一回二千円って、そんなに高いとは思わないけれど。翌週、そのことを由衣さんに話したらこんな答えが。

「こういうお仕事をする人にとっては必ず出てくる悩みですね。でも大丈夫ですよ。動きさえ止めなければ、必ずお客様は出てきますから」

 そういうものなのかな? 半信半疑ながらも、再度言われたのが「自分に感謝」である。それが自分を信じることになり、良い結果を生むから、と言われた。

 それともうひとつ言われたのが、価格を安易にディスカウントしないこと。一度安い料金でやってしまうと、その体質が身についてつい安売りをしてしまいたくなるから、というのが理由らしい。値段を下げるのは簡単だけれど、上げるのは難しい、とのこと。とにかく自分を信じて声をかけ続けてみよう。