ドラクエ8冒険日記(11) | カインの冒険日記

カインの冒険日記

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登場人物
カイン……主人公。口数の少ない優男。元王宮兵士
ヤンガス……元山賊。カインをアニキと呼ぶ
ゼシカ……元アルバート家令嬢。猪突猛進
ククール……元マイエラ聖堂騎士団。キザ男
トロデ王……亡国の国王。呪いで魔物の姿にされている
ミーティア姫……トロデ王の娘。呪いで馬の姿にさせられている
トーポ……ネズミ

 

パヴァン……アスカンタ王
シセル……故人。アスカンタ王妃
キラ……メイド
ドルマゲス……悪の魔法使い。トロデ王に呪いをかけた道化師

 

 

 

 

アスカンタという国があった。
田舎ではあるが、
牧畜が盛んなのどかな国である。
草原に放牧された牛は、
毎日、おいしいミルクを出し、
時に、旅人たちの喉を潤すのに役立った。
しかし、
大自然ののどかな雰囲気とは裏腹に、
城は重苦しい空気に侵されていた。

 

かつては、
明るく活気のある城下町だった。
ところが2年前、
王妃シセルが他界したときから、
この国は変わってしまった。
国民に大層慕われていた王妃が亡くなり、
国中は暗く沈んだ。
そんな中でも、
最も深く悲しんだのは、
最愛の妻を失った国王パヴァンだった。
王妃存命中は賢く優しいと評判のパヴァンだったが、
妻の死後は別人のように明朗さを失った。
昼は自室に閉じこもって泣き続け、
夜は王座にうずくまって咽び続けた。
誰の言葉も耳に入らず、
誰の励ましにも心を開かない。
食事は喉を通らず、
生きる希望をも失っていた。
王妃の死から2年が経っても、
パヴァンの悲しみは癒えることがなく、
心の時計の針は、
ただの1度も時を刻むことがなかった。

 

パヴァンは、
王妃の弔いを示す黒い布で城を覆い、
国民が大声を出したり笑ったりすることを禁じた。
喜ぶことも遊ぶことも禁じた。
国民は、
喪服以外を着ることが許されず、
ただただ静かに祈りを捧げて暮らす日々を送った。
1ヶ月もすれば、
国民たちは王妃の死を乗り越えることができたが、
国王パヴァンの悲しみもまた理解できるものである。
それゆえ、
国王の心が晴れるのを
国民たちは喪に服しながら待ち続けた。
しかし、
2年経っても国王に笑顔は戻らず、
国民たちは気の重い日々を過ごしていた。

 

日々、王の姿を間近に見る、
大臣の悩みも大きかった。
このままではいけない、と思いつつも、
国王パヴァンの痛ましい姿を見ると、
声がかけられなかった。
明るい王に戻ってもらわなければならない。
また良い政治をしてもらわねばならない。
国に再び活気を取り戻さなけらばならない。
しかし、
どうすればよいのかがわからない。
王を憂い、国を憂いはするが、
その解決策が見つからない。
そして大臣もまた、
毎日暗い顔をするしかなくなった。

 

王の世話をするのは、
キラという侍女だった。
キラは毎日パヴァン王の自室に食事を届けるが、
王は部屋から顔を出そうとはせず、
食事に手を付けようともしなかった。
キラが話しかけても、
返事はなく、
ただただ扉越しにすすり泣きが聞こえるばかり。
王を心配するキラは、
王妃の葬儀以来、
2年間、1度も休みを取ることなく、
ひたすら王の身の回りの世話に従事する。
「それなのに王があれでは、キラがかわいそうすぎる」
城の者は、
皆、口を揃えてそう言った。
キラの仕事ぶりには、
大臣や兵士たちも高い評価をし、
体を壊さないかと、皆が心配した。

 

キラは王を心配し、
兵士はキラを心配し、
大臣は国を心配し、
人々は将来を心配し、
今、この国は、
先の見えない暗闇の生活を送っていた。

 

 

 

カインがアスカンタを訪れた時、
その雰囲気の沈みようには、
ドルマゲスに呪いをかけられてしまったのかと思ったほどだった。
そうではなかったのが、
せめてもの救いだったのかもしれない。
「道化師?そんなものが来る雰囲気じゃないだろ」
町人は、
カインたちの質問に素っ気なく答えた。

 

ドルマゲスが来ていないのなら、
あまり長居をする必要はない。
カインはそうも思ったが、
この国の様子を放っておくのも気が引けた。
というのも、
侍女のキラに、
ひとつ頼まれごとをしてしまったのだ。
夜、王座を訪ね、
パヴァン王がひとり、
「夢でもいい、せめてもう1度、君に会いたい」
と咽び泣くのを見たカインに、
キラが話しかけてきた。
どんな願いもかなえられるというおとぎ話についてだった。
「それが本当なら、わたくしは王様の願いを叶えて差し上げたいんです」
細かい内容は覚えていないが、
小さい頃、よく祖母から聞かされた話だ、
とキラは言った。

 

ドルマゲスのことを放置してキラの願いを聞くべきなのか。
それに対しての回答は、
「これは叶えてあげるのがカタギってもんでゲス」
と言うヤンガスを筆頭に、満場一致だった。
特に、最もこれを後押ししたのはトロデ王。
「なんと主君想いのメイドじゃ!」
と声を弾ませ、
「しかもミーティアと同じ年頃の娘じゃ!」
と、トラペッタのルイネロの娘ユリマの依頼のときと全く同じことを言い、
「助けてやるんじゃ!命令じゃ!」
と意気揚々と、唯一の家臣であるカインに指を突き付けた。
「ドルマゲスの件からは寄り道になるが、お前が急いでパパッと片付ければ問題ないわい」
いかにも他人事である。

 

 


カイン:レベル18、アスカンタ
プレイ時間:17時間57分
 

 

 

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