しかし、
またドムドーラ方面へと足を運ぶと、
今度は影の騎士にやられてチカラ尽きてしまう。
竜王と内通しているラダトーム王は、
また、かいんを叱責した後追放し、
ローラ姫もまた、かいんの手を離れてしまうこととなった。
バカ王は、いまだにローラ姫のことなど知らず、
ローラ姫は、また竜王によって牢屋に戻されたのだろう、
と、かいんは考える。
また姫を助けに行くべきだとも思う。
しかし、もう1度救出しても、
また邪魔になるだけ。
それに、
ラダトーム王と竜王の関係を考えると、
ラダトーム城に帰った方が安全だと、
ハッキリと思えるほどでもない。
むしろ、
今幽閉されている洞窟の牢屋の中が一番安全ではないかと、
かいんは考えさえもする。
竜王の意志で幽閉しているのだ。
上司の竜王が執り行う行動を
部下の魔物たちが妨げるはずもない。
つまり、
竜王の手下が、
ローラ姫を危険に晒すわけがない、ということだ。
ローラ姫の存在が、竜王の最後の切り札である以上、
俺がいる限り、ローラ姫に危険が及ぶことはない。
ラダトーム王と竜王の密約の材料は、
この俺自身の命なのだ。
俺が生きている間は、俺が材料になるはずだ。
ローラ姫が材料になるのは、
俺が死ぬか、
俺に材料としての価値がなくなったときだ。
それまで竜王は、
ローラ姫を大事に取っておくはずだ。
交渉材料として、
最も価値が高くなるであろうそのときまで。
そういう考えで、
俺はローラ姫を置き去りにすると決めた。
嫌いだからとか邪魔だからとかじゃない。
昨夜はお楽しみでしたね、
と宿の主人に言われるのが不愉快になったわけじゃない。
そういう個人的な事情ではなくて、
えっと、これは、その、つまり、
・・・あれだ。愛だ。
愛情ゆえの行動なのだ。
俺は勇者だから、勇気もあるし愛もあるのだ。
いいか。
煩わしいからじゃないぞ。愛情だからな。
と、自分の行動の理由を
愛情ゆえである、と誰にともなく口上を述べながら、
かいんはひとり行く。
死んでばかりで、ちっともお金が貯まらないかいん。
ドムドーラ方面の探索をひとまず置いておいて、
リムルダールでゴールドマンやキメラを狩って、
ひたすら金を稼いだ。
くそっ!
なんで俺がこんなに汗水を垂らして働かねばならんのだ!
そうだ!銀行がないからだ!
銀行に預けることができれば、
竜王に所持金の半額を奪われたときにでも、
きっと銀行の口座の中身までは気付かれないに違いない。
しかし、
この世界に銀行がないということは、
それは逆にチャンスなのではないか?
俺が銀行を開けばいいのだ。
俺がこれほどに望む銀行は、
きっと他の人々にも望まれるはずだ。
俺が銀行を開けば、
高い手数料を取っても、
預けに来る客がわんさかいるに違いない。
そうだな、手数料はトイチだな。
10日で1割。
預かるほうがトイチだ。
貸し出すとなれば、
そうだな。10日で10割。トートーだ。
ウォシュレット屋の名のようなシステムを考えるかいんは、
銀行を必要とする人物など全くいないことを知らない。
かいん以外の人々は、
生き返りもしなければ、
竜王の取り引きの材料にもならないのだから。
手持ちのお金が半分になる、
という状況などあり得ないのだから。
そんな考えを巡らせつつも狩りを続けたかいんは、
やがて、汗水を垂らした結果が実を結び、
晴れて7700ゴールドの魔法の鎧を買うことができた。
ふはは!
ついにこの鎧を手に入れることができた!と、かいん。
これで、俺に怖いものは、もう何もない。
なに?
この鎧があれば死ぬことももうなくなるだろう、
と安心しているのか、だと?
チッチッ。違うな。
死ななくて安心しているわけじゃない。
死んでお金を取られても平気だからだ。
竜王も、まさかこの鎧まで奪うことはすまい。
ひとまず、
今知り得る中で、最も高額なものを手に入れたかいんは、
近々の大きな出費の予定もなくなり、
お金が奪われる恐怖から解放されて、
また強気にドムドーラを目指した。
そして、滅びのドムドーラよりもさらに先へと、
強気に足を進めた。
そんなかいんに、
メイジキメラが立ちはだかった。
ふんっ!と、かいんは鼻で笑う。
何かと思ったら、
また維新時代の古めかしいキメラか!
俺はお前たちのスターと戦ったんだぞ!
時代を間違えたな。
お前と俺との間には、時代の壁がある。
だから俺は平静でいられる。
せめてお前のところの大将に間を埋めてもらうんだな!
マホトーンをされたのも気付かずに、
5ターン連続でラリホーを唱え続けた維新のキメラは、
強気のかいんに、あっさりと敗れ去った。
強気になったかいんは、強運に包まれていた。
ラリホーで眠ったまま、死ぬまで起きないキラーリカント。
9ターン経っても逃げずに、
115の経験値をもたらすメタルスライム。
マホトーンをされてもベギラマしか使えない大魔道。
すでに、ギラリホー作戦で攻略済みのドラゴン。
そして、妖精の笛で眠り続けるゴーレム。
すべてをなぎ倒したかいんは、
意気揚々と城塞の町メルキドへと足を踏み入れた。
そしてついに出会った。
キム皇と。
ゆう帝とミヤ王が探し求めていたキム皇。
冷蔵庫の中には入らないキム皇。
俺を勇者として証明してくれる人物、キム皇。
さあ、証明してくれ、キム皇!
俺が真の勇者だと!
と、かいんが言うまでもなかった。
それがキム皇だとわかったときには、
かいんの考えはすべて予想外れだとわかったのだから。
キム皇は、こう名乗ったのだ。
「えーん。あてが迷子のキム皇だす。」と。
期待持たせるんじゃねえ!バカ野郎!
さて。
キム皇のことはさて置き。
城塞の町メルキドでの情報は、
かいんにいろいろな方向性を与えた。
ロトの鎧は人から人へと渡り、
最終的にはゆきのふという人物に渡ったという。
しかも、そのゆきのふの孫もまたメルキドにいた。
ゆきのふはドムドーラの東で店を営んでいたのだ、
と、孫は言った。
さらには、
ゆきのふの友人の孫、
と名乗る人物までもが、この町にはいた。
そして、こう言う。
祖父が言うには、つまりゆきのふの友人が言うには、
ゆきのふは、自分の店の裏の木に何かを埋めたらしい、と。
ふむふむ。
なにやら、
ドムドーラの東の店の裏の木の下に、
ロトの鎧が埋まっていそうな話ではある。
どうせドムドーラの、
スターにリベンジしに行かねばならぬ身。
いや、行かなくてもいいけど、
やられっぱなしも悔しい身。
そのついでに勇者ロト、
俺の親父のバカオルテガと同じ名前のロトが使った鎧が、
そこに埋まっているのかどうかを確認してやる。
メルキドでは、
かいんにとって興味深い話がもうひとつあった。
それは、
今晩のおかずに悩む主婦と、大根を安く売る店、
のことではなく、
「私のポートピアとあなたのドラクエを替えっこ!」
と言う娘のことでもなく、
竜王の恐ろしさを説いて、
それでも行くか?と尋ねる兵士のことでもなく、
その兵士が「いいえ」と答えたかいんに、
「それがいい、誰もお前を臆病とは言わないだろう。」
などと暗に臆病者呼ばわりしたこと、でもなく、
やっぱり「はい」!と意見を変えたかいんが、
「おお、真の勇者だ!」
と、おだてられたりしたことでもなく、
この町の鍵屋は、
ラダトームの鍵屋のボリーよりも、
さらに高く売りつけるボリー2号であることでもなく、
勇者の証明の印が、
ラダトームの城まで北に70、西に40の位置にある、
という情報を神殿の長老がくれたこと、である。
なるほど。
しかし、
自分の位置が今どこにあるのか、俺にはわからない。
そう考えながら、かいんは思い出した。
そう言えば、
ローラ姫と一緒にいるときに、
ローラ姫はGPSを使える、
風なことを言っていたような気がする。
いや、
言ってはいなかったが、
俺にはわかる。
ローラ姫には、
唯一にして無二の特技があるのだ。
俺が今いる位置がわかるのだ。
邪魔でしかなかったローラ姫にも、
唯一の特技があったのだ。
その特技を唯一使えるのがローラ姫なのか、
ローラ姫が持っている唯一の特技がGPSなのか、
そのあたりは、もうどうでもいい。
俺はもう一度ローラ姫を救出に行く。
そして、
その唯一の特技を存分に発揮してもらう。
今まで放置していたとはいえ、
それは愛ゆえに、ということなのだから、
きっと、ローラ姫のほうも愛を示してくれることだろう。
こうして、
ローラ姫の待つ洞窟へと向かうべく、
かいんはメルキドを出た。
すると、すぐにスターキメラと遭遇した。
出たな、スター!
ここで会ったが100年目!
と、意気込むかいんが、
スターに勝利する日はまだ来なかった。
やはりスターは強かった。
100年では足りなかったか。
くそっ!また来年だ!
ラダトーム王に叱責追放されながら、
かいんはリベンジを誓う。
おのれ、スターめ!
そんな名前のダンサーズバレエ団があったなら、
白でも黒でも伝説でもなく、
俺が真の勇者として踊ってやる!
101年目のダンサーズ。
スターよ、待っていろ!
かいん:レベル14
鋼の剣、魔法の鎧、鉄の盾
重要アイテム:太陽の石、雨雲の杖、妖精の笛

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