水門をくぐり抜けたカイン。
水門の先には、滝の洞窟へと繋がっていた。
カインとビアンカは、
ピエールとゲレゲレを連れて、
慎重に洞窟へと潜っていった。
カインにとって、この冒険は特別な意味を持っていた。
単なる洞窟への潜入と違い、
「ビアンカとの最後の冒険」となるべき旅だったのだから。
ビアンカは、カインにとって数少ない友人。
今となっては、幼なじみであり、親友と言ってもよい存在。
そんなビアンカであったとしても、
フローラさんと結婚した後でも一緒に冒険ができるかというと、
そうではないだろう。
カインはそう考えていた。
だとしたら、水のリングを見つけるまでが、
ビアンカと、仲間でいられる期間、ということになる。
カインは、水のリングを探しながら、
より深いところにリングが隠されていることを望んでいた。
より到達が困難な場所に保管されていることを望んでいた。
そのほうが、より、ビアンカと長く居られるのだから。
長い旅は楽しい旅だった。
カインは身を挺してビアンカを守ったし、
ビアンカは、カインに守られつつもカインを支援した。
幼い頃はホイミしか使えなかったカインも、
今やベホイミでビアンカを守れた。
幼い頃はメラしか使えなかったビアンカも、
今やベギラマで、ラリホーで、バイキルトで、
カインを支援できた。
カインにとっても、ビアンカにとっても、
この旅が楽しくてしょうがなかった。
ビアンカは、気さくにカインに話しかける。
レヌール城の時のこと、
カインがたくましくなっていてびっくりしたこと、
結婚を控えていることに驚いたこと。
カインは長らくこの楽しい旅が続けばいいと思っていた。
しかし、カインは遂に水のリングを見つけることとなる。
カインは、リングを手にしたら、
このビアンカとの冒険が終わってしまうことを理解しつつ、
力強く水のリングを握りしめる。
その様子を見たビアンカが、カインに何か言おうとする。
「カイン・・・あの・・・。ううん。なんでもない。」
洞窟から脱出するにはリレミトを使えば済む。
しかし、カインは歩いて洞窟の出口に向かった。
もっとビアンカと話がしたいと思ったからだった。
ところが、ビアンカは口を開こうとはしなかった。
洞窟の中は沈黙で埋め尽くされていた。
ビアンカがやっと口を開いたのは、
洞窟を出て、船に戻ったとき。
「ごめんね、カイン。黙っちゃって。カインが結婚するって思ったら胸がいっぱいになっちゃって。ずっと弟みたいに思ってたから。」
ビアンカは続けた。
「さあ、水のリングを届けましょ。結婚すれば天空の盾がもらえるかもしれないんでしょ?」
そう言うビアンカは、どこか、何かを我慢しているように、
カインには見えた。
じゃあ、行くよ。
カインはビアンカに目で話しかけた。
そして、ルーラを唱えた。
着いたのは、サラボナではなくオラクルベリーだった。
ビアンカは驚いた。
「なに?こんなときにカジノにでも行くの?」
カインは首を横に振った。
カインが行きたいのは、アルカパとレヌール城。
ビアンカとの思い出の地だった。
アルカパに着いたとき、ビアンカは饒舌になっていた。
「7年ぶり。懐かしいわ。でも、今は結婚があるんでしょ。急がなきゃ。お母さんももういないし、カインも結婚しちゃうし。あはは、何言ってるんだろ、私。カインが寄り道するから感傷に浸っちゃったじゃない。」
ビアンカはこんなことも漏らしていた。
「もしね。フローラさんのほうでカインを断るようなことがあったら、私がもらったげるからね。」
ビアンカは冗談めかして言ったし、
カインも冗談だと受け止めていた、このときは。
レヌール城でも、ビアンカはよくしゃべった。
「あのときは怖かったよね。雷が鳴ったりしてさ。そうそう、ここのお墓に埋められてたんだよね。強がってたけど、ホントは怖かったんだから。」
強引だったり、上から目線だったりしたのは、
ビアンカが、年上であることを印象付けるためだった。
今になって、カインはそのことがわかった。
本当は、怖かったのに、
自分が怖がると、より年少のカインも怖がってしまうからと、
無理して強がって見せていたんだとカインは気付いた。
カインは、そんなビアンカを今更ながら、
ほほえましく見つめるのだった。
カインが見つめると、ビアンカも見つめ返した。
カインは胸が高鳴った。
だが、その胸の高鳴りが、どういうことなのか、
自分でわかっていなかった。
そして、その胸の高鳴りを
別れが寂しいからだと、カインは理由付けた。
カインは、ビアンカに右手を差し出す。
ありがとう。元気でね。
カインは目でそう言った。
ビアンカも右手を差し出し、強く握手をした。
私もまた冒険できて楽しかった。ありがとう。
そして、一行はサラボナに戻った。
カイン:レベル20、プレイ時間9時間48分
パーティー:カイン、ブラウン、スラりん、ピエール、ゲレゲレ、ビアンカ、ベホマン

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