ドラクエ4冒険日記(36) | カインの冒険日記

カインの冒険日記

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天空の装備を携えて、天空の塔を登るカイン。
天空の塔を登りきると、
案の定、天空城と繋がっていた。

天空城は、マスタードラゴンという竜の神様が収める城。
マスタードラゴンは言う。
ここから下界を眺めていて、すべてを認知できるものの、
わしとて万能ではないのだ、と。

カインは初見ながらに思った。
マスタードラゴンは、万能でないどころか、全くの無能である、と。

カインは、実のところ、
マスタードラゴンに対して、怒りを抑えきれていなかった。
なぜなら、マスタードラゴンこそが、
カインの真の父の仇だからである。

カインは、この天空城で、出生の秘密を手に入れた。
自分が何者かを悟った。
カインは、天空人と人間の混血で、
母親は、そうとは名乗らなかったが、さっき会った天空人。
いくらカインが鈍くても、
母親の顔を見れば、すぐにわかる。
そして、父親は、ブランカの山奥に住む木こり。
父親はもう故人となっていた。
それも、カインの知らないところで。

事の顛末はこうであった。
カインの母は、遊び心で天空城から抜け出して地上に降り、
木こりの若者と恋をした。
そして、子を授かった。
ところが、人間と交わることが許されない天空人の掟に従って、
マスタードラゴンは、木こりの若者に落雷させて殺害し、
母親を連れ戻した。
その子であったカインは、
山奥の村で、勇者となるべく、修行をさせられていた。
ブランカでは、天空人である母親は、天女として伝わっている。

カインは、この真相を知ったときに、
気が動転したし、激しく憤った。

竜の神様がどんなに偉い存在かと思って会いに来てみたら、
実際は父殺しの犯人ではないか。
しかも、「掟に背いた罪」で罰した体を装っているが、
罰を受けるべきは母親であって、父親ではない。
人間界には、
天空人と交わってはならないという掟などないのだから。
マスタードラゴンは、身内である母親に軽い罰を与え、
身内でない木こりの若者に、死、という重い罰を与えた。
いや、「罰」と言っていいものなのかどうかも定かではない。
竜の神は、人間を罰する権限を持っていないはずなのだから。
こんな理不尽なことがまかりとおるのだろうか。
こんなマスタードラゴンの身勝手さに、
カインは怒りを禁じえなかった。

さらに、カインの怒りを増長させたのは、
マスタードラゴンが、カインを勇者と認めていることである。
天空人と人間、という認められない交わりによってできた子を
勇者として認めているのは不自然極まりない。
逆を返せば、勇者の誕生のためには、
天空人と人間の交わりが必要だったわけで、
その必要な交わりを犯した木こりの若者を
罰としてマスタードラゴンは殺害しているのである。
その上で、勇者が地獄の帝王を倒すべきだと唱え、
自らは雲の上から地上を眺め、
特に何をするでもない。
そして、何もしないどころか、
今また、カインに、デスピサロ討伐を要請さえするのだった。

カインは、怒りを通り越えて呆れてさえいた。
許されざる子に対し、魔族の王の討伐を請う。
カインの父親殺しの件については、謝罪がないところを見ると、
それが正義だと思っていることだろう。
すべてが見えると豪語しているが、
今のカインの胸の内は見えていないらしい。


カインは深く呼吸をしながら、心を落ち着かせ、
そして冷静に考えた。
デスピサロが悪だというのは、人間視点での話。
魔族としては、デスピサロは正義の行いをしているのであろう。
そして、マスタードラゴンもまた、
天空人の長として、正義の行いをしているのだろう。
シンシアのことを再び持ち出すならば、
デスピサロは憎い。
ただ、この件はすでに乗り越えた件。
父親のことを考えれば、
マスタードラゴンが憎い。
これは、まだ乗り越えられずにいる。

そんな父の仇であるマスタードラゴンから、
シンシアの仇であるデスピサロを討て、と言われて、
ホイホイ従うのが勇者であるはずがない。
カインとマスタードラゴンとデスピサロ、
3者は、どうしても歩み寄れない気がしているカイン。
また、逆の視点から言うならば、
マスタードラゴンと歩み寄ると言うことは、
デスピサロと歩み寄ることと、
同じ程度の譲歩が必要ということになる。


カインが歩み寄りの姿勢を見せないでいると、
マスタードラゴンのほうから歩み寄りを見せた。
マスタードラゴンが念を込めると、
カインの持つ天空の剣が光り出し、
その真価を現すのだった。

天空の剣の輝きに、
自分も目を輝かせるトルネコ。
トルネコは、この剣の鑑定をしながら、
武器屋冥利に尽きる、と嬉しく思うのだった。
ただし、単に嬉しがってばかりはいられない。
なぜなら、カインが、
今にも、輝きを取り戻した天空の剣で、
マスタードラゴンに斬りかかりそうな殺気を発していたので。
トルネコは、鑑定する名目でカインの武器を取り上げ、
争いを未然に防いだのであった。


ヒルタン老人の件とは逆に、
トルネコになだめられた形になったカイン。
カインは、結果的に、自ら攻撃こそしなかったものの、
マスタードラゴンを全く信用していなかった。
だから、マスタードラゴンとデスピサロとのいがみ合いの、
どちらか片方に与することは望まなかった。

自分はデスピサロを討つけど、
それはマスタードラゴンのためではない。
シンシアの復讐のためでもない。
そこに正義があると、自分が思うから、である。
もし、デスピサロを討てたならば、
返す刃でマスタードラゴンも屠りたい。
そんな望みがカインには湧いてきている。
しかし、それは私情でしかない。
勇者としてのカインは、私情を乗り越えなければならなかった。

私情ついでに、
カインは思いの丈を自分の心の中でぶちまけた。
もし、自分がデスピサロを倒すことになれば、
マスタードラゴンは、
自らは何も動かずにカインを利用して目的を達せた事になる。
カインにとって、それが癪だった。
利用されることが癪なのではない、
利用される相手が、父親の仇であり、
その点を容認しないといけないことが癪であった。

カインは、こういうときにはいつも、
育ての父親の遺言を思い出すことにしている。
「なにがあっても、強く正しく生きるのだ。」
わかってる、父さん。いや、義父さん。
癪だから、という理由で大義を疎かにすることは、
正しくもないし勇者でもない。
そうだよね、義父さん。


カインは、どうにも居心地の悪い天空城を後にし、
デスピサロのいるという地底を目指した。

ところで、パーティーに若干の交代があった。
天空城に辿り着いたことで、ルーシアとお別れし、
代わりに、ドランという名のドラゴンが仲間になっていた。

地底では、デスピサロは自城に結界を張っていて、
その結界の守り手として、4体の魔物を配置していた。
カインは、4体のうち、
ギガデーモン、ヘルバトラー、アンドレアルを次々と倒し、
結界の解除まで、あとわずかなところまで辿り着いていた。

そして、
結界を守る最後の魔物の討伐へと足を向けた。


カイン:レベル32、プレイ時間24時間18分





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