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BIMによるマーケティング戦略で、市場を切り開く(4)
(ケンプラッツ 2012/02/23)



旧態依然の建設業は官だけの責任か


 他の業界に目を転じると、通信業界や運輸業界などでは、民間企業が顧客志向サービスの実現をかけて役所側と闘い、新しいサービスを開発し市場を開拓した例は枚挙にいとまがない。


 耐震偽装事件以来、多くの建築設計者が厳格化された建築確認制度に戸惑いを見せている。しかし、制度だから仕方がないと半ばあきらめているのが現状だろう。


 建設業界も旧態依然とした制度にあぐらをかくことなく、官民が切磋琢磨(せっさたくま)して顧客ニーズに対応できる仕組みを構築しないと、国内市場だけでなく海外市場に活路を見いだすことも難しくなる。これでは日本の建設業の未来はないのではなかろうか。


 これは官側だけの責任ではなく、現状に安住しようとする民間側にも問題がありそうだ。例えば、今年の正月に、動画投稿サイト「YouTube」にアップされた動画が、SNS(ソーシャルネットワークサービス)のFacebookなどで話題になった。それは中国の建設会社、遠大集団が30階建てのオフィスビルをわずか15日間で完成させる一部始終を数分にまとめたビデオだ。


30階建てのビルをわずか15日間で完成させることは、建設業界の「イノベーション」といっても過言ではないほどの快挙だ。しかし、この動画を見た人の感想は「すごい」という驚きと称賛が多かった半面、建設業界をよく知る人からは「日本の発注者はこのような方法を認めないだろう」「耐火上の問題があるので日本では無理だろう」といった否定的なコメントが投稿されることも少なくなかった。


 海外と日本は事情が違うというだけで、建設業の改革の可能性を否定していると、思考はそこでストップし、なにも行動は起きず、現状に安住してしまうだけだ。日本の建設業界も、遠大集団に負けない工期と品質をどうすれば実現できるのか、行政や法律を変えるために何が必要かといったことを真剣に考えるべきではないか。そして必要なことは、官に対して民が積極的に提案し、議論していくべきだろう。


 官民一体となって旧態依然とした建設業界の仕組みを改革し、顧客志向のマーケティング戦略を実現できる環境を整えていくことこそが、日本の建設業界の未来を切り開く原動力になるのではなかろうか。現代社会が必要とするテーマには、「健康」「環境」「セキュリティー」「少子高齢化」など、様々なものがある。これらのテーマを実現するための最適な機能を建物に落とし込み、必要とする施主に分かりやすく、リーズナブルな価格で提供することこそが、これからの建設業界に求められるマーケティング戦略なのだ。BIMはそれを実現するための強力なツールになるはずだ。