サイド・エフェクト | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう


人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

監督・撮影・編集 スティーヴン・ソダーバーグ
脚本 スコット・Z・バーンズ

音楽 トーマス・ニューマン

出演 ジュード・ロウ、ルーニー・マーラ、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、チャニング・テイタム

2013年 アメリカ


2000年を境に、うつ病が社会的に認知されるようになってから、

心療内科の患者数が急激に増加、2001年から抗うつ薬市場は

二桁成長を続け、現在1300億円規模にまで拡大していますが、

一方で、攻撃性や衝動性と言った薬による副作用(サイド・エフェクト)の

危険性も問題になっています。

「トラフィック」「エリン・ブロコビッチ」の名匠スティーヴン・ソダーバーグが

監督した本作は、精神科医の主人公が処方した新薬が原因で、

夢遊病の副作用を起こしたうつ病の若い女性患者が、記憶のない状態で

殺人を犯してしまい、裁判に懸けられる前半の流れから、

薬物依存社会に警鐘を鳴らした社会派ドラマかと思って観ていたのですが、

女性患者の心神喪失が認められて無罪を勝ち取るのとは対照的に、

主人公は危険な薬を処方したとして社会的制裁を受けて、職を追われることに

なる後半から、俄かに陰謀の影が見え始めて、急速にヒッチコックタッチの

サイコサスペンスへと変貌していきます。

「ボーン・アルティメイタム」のスコット・Z・バーンズの脚本は、主人公が陰謀に

陥っていく過程や、主人公の倍返しのリベンジなど構成が緻密で巧妙なだけではなく、

株式操作の実態など企業倫理の問題を毒として織り込んで、

絵空事のストーリーにしていないところが、企業犯罪の内部告発を描いた

「インフォーマント!」の脚本やアル・ゴア元副大統領の地球温暖化問題を

取り上げたドキュメンタリー映画「不都合な真実」を製作しただけの事はあります。


ソダーバーグ監督は、ピアニストのリベラーチェの伝記を映画化した

「恋するリベラーチェ」を最後に、「映画からしばらく離れて、自分がどう感じるかを

見てみるいい機会だと思った。」と、50歳の若さで監督の休業を発表しましたが、

劇映画として本作を最後の題材に選んだ理由が、彼自身も、ストレスから来る

心因性のうつ病を患っていて、薬に依存するより、休養が一番であることを実践して

見せたかったのかもしれません。




映画(全般) ブログランキングへ