エッセンシャル・キリング | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう


人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

監督・脚本 イエジー・スコリモフスキ

製作 ジェレミー・トーマス、アンドリュー・ロウ、ピーター・ワトソン

脚本 エヴァ・ピャスコフスカ

撮影 アダム・シコラ

編集 レーカ・レムヘニュイ

出演 ヴィンセント・ギャロ、エマニュエル・セニエ

2010年 ポーランド/ノルウェー/アイルランド/ハンガリー


アラブ兵らしき男が米軍風の追跡隊に追われて、

どこの国とも分からない乾燥しきった丘陵や雪山をひたすら逃げる。

軍人、民間人見境無しに、生き延びるためのエッセンシャル・キリング

(絶対必要な殺害)を重ねる男は、傷つき飢えに苦しむ手負いの野獣と化し、

蟻や木の皮を口にし、生魚に齧り付き、果ては赤子を抱く母親を襲うと、

乳房にしゃぶり付いて母乳まで呑む始末。

映画は冒頭からエンディングまで、一切の状況説明無しに、

一言も言葉を発しない逃げる男を捉えるだけで、

最後は、観客も男の行方を見失ってしまうという徹底振りです。


 『アンナと過ごした4日間」のイエジー・スコリモフスキ監督は、

寡黙であるがゆえに饒舌に語りかけてくる映像の特性を生かすために、

極限状態に置かれた理性を失った人間の獣性だけを見せて、

観客の想像力に問いかける事で、問題意識を多く持つ観客ほど

諸々の裏読みが出来る作品に仕上げています。


監督曰く『「ランボー」とタルコフスキーの作品を足して割ったような映画』

だそうですが、残念ながら『ランボー』程劇的ではなく、

タルコフスキー程詩的ではありませんでした。

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