監督・原案・脚本 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
脚本 アルマンド・ボー、ニコラス・ヒアコボーネ
撮影 ロドリゴ・プリエト
編集 スティーヴン・ミリオン
出演 ハビエル・バルデム、マリセル・アルバレス
2010年 スペイン/メキシコ
前立腺がんで余命2週間と宣告された男を主人公にした映画ですが、
よくある難病に侵された主人公に対する見送る側の視点で描いた感傷的な映画と違って、
遺される二人の子供たちの将来を憂う主人公の父性愛を物語の中心に据える事で、
生から死ではなく、死から生を見つめ直した、人間の生きる意味を問うた作品に
仕上がっています。
舞台はスペインのバルセロナですが、主人公が暮らす家は、サグラダ・ファミリア聖堂や
カサ・ミラなどの芸術的な町並みとは程遠い、ゴミ溜めのような貧民街にあります。
主人公は、その町に住む偽ブランド品や麻薬売買等で生活費を稼いでいる中国や
アフリカからの移民たちと共存して、移民たちの不法就労を手助けする人材ブローカー
として生計を立てていますが、主人公がガンに肉体を侵されてしまった設定は、
25歳以下の失業率が40パーセントを越え、闇経済に追いやられて搾取される移民労働者達を
ガンに喩えて、経済危機に直面するスペインの内情を投影させたからでしょう。
監督は『バベル』のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥですが、いつもの毒々しさや
おどろおどろした修羅場に欠けているのは、過去の作品で脚本を担当していた
盟友ギジェルモ・アリアガが本作に参加していなかったためで、メキシコの最も
治安の悪い地域で育ったというアリアガ程、人間の醜い部分と対峙してきた経験の無い
監督のロマンチストとしての一面が、悪い形で作品に反映してしまいました。
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