『雪が降る』  藤原伊織 | ページをめくった先に広がる世界と解け合う心

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雪が降る (講談社文庫)/藤原 伊織
¥620
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***この本は2010年1月に読了しました***
母を殺したのは、志村さん、あなたですね。少年から届いた短いメールが男の封印された記憶をよみがえらせた。苦い青春の日々と灰色の現在が交錯するとき放たれた一瞬の光芒をとらえた表題作をはじめ、取りかえようのない過去を抱えて生きるほかない人生の真実をあざやかに浮かびあがらせた、珠玉の六篇。
(Bookデータベースより)



暗い過去を持ち、翳のある日々を暮らす中年を中心に描いた短編集。
どの編の主人公達も、とても濃いストイックで無骨な男達。こういう中年男性の描写が著者は巧い。
自分のダメなところを自覚し、それでも自分を卑下せず生き抜いていく。
芯が一本入っているというか、自分という芯がぶれない主役達が多く、かっこいい。
男性たちはもちろんのこと、登場する女性たちもやはり一本芯が入っています。
そして誰もがどこか翳を持ちつつ、だけど日々をまっすぐに生きている。そんな描写が心地よい。


でも、こういう人って最近少ない気がする。そしてそれは、きっと気のせいじゃないのが、少し寂しい。
もちろん自分もこういう風な人間じゃないのだけれども。
そういう意味で言えば、憧憬な気持ちを持ちやすい男性読者向けの作品かも。


ちょっとクサイと思えるようなセリフや展開があったりして、著者はロマンチストだったのかなぁ。
なぁんて思っていたら、著者のことを「イオリン」と呼んでいた黒川博行氏が解説で、著者のことをやはりロマンチストだと認識した、と書いてあってニヤリとしちゃいました。



個人的には表題作の「雪が降る」が良かったな。あと「台風」も。
ちなみに「銀の塩」では『テロリストのパラソル』 で登場した島村も出てきます。
出てこないかなぁ、と思って読み進めていたので、出てきたときは、よっしゃ!と思いました。




「台風」 「雪が降る」 「銀の塩」 「トマト」 「紅の樹」 「ダリアの夏」

の六編を収録。



★★★★


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『テロリストのパラソル』  ◇『雪が降る』



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