『99%の誘拐』  岡嶋二人 | ページをめくった先に広がる世界と解け合う心

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99%の誘拐 (講談社文庫)/岡嶋 二人
¥730
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***この本は2006年1月頃読了しました***

末期ガンに冒された男が、病床で綴った手記を遺して生涯を終えた。そこには八年前、息子をさらわれた時の記憶が書かれていた。そして十二年後、かつての事件に端を発する新たな誘拐が行われる。その犯行はコンピュータによって制御され、前代未聞の完全犯罪が幕を開ける。第十回吉川英治文学新人賞受賞作。(Bookデータベースより)










病床で遺した死ぬ間際の手記から物語が始まる。
それには8年前の一つの誘拐事件のことが書かれていた。
そしてその手記からさらに12年後、かつての事件に端を発する事件が起こる・・・。




それぞれ違う時代背景の元に描かれる二つの完全犯罪。
第二の事件は第一の事件に対しての、世代を超えた雪辱なのだ。
そして第二の事件の動機が作品中にはっきりと明記はされていない。
それがまたこの作品の良さでもあるのだろう。


躍動感と疾走感に溢れ、程よい緊張感が随所に感じられる。
ストーリー展開もテンポよく、物語に惹きこまれ、ドンドンと読み進められた。
その良さも手伝ってボリュームを感じさせないので、一気に読めると思います。


ただし、犯人探しやトリックの謎解きがメインではないのと、人物描写がちょっと物足りないので感情移入して心揺さぶられたい、っていう目的の人には向かない作品かな。
どんでん返しとかもないけど、逆にそれがないにも係わらず面白いと思えるのは作品そのものが持つ躍動感のおかげかな。


それにしてもこのオリジナルが1988年に描かれた作品って言うのには驚きです!!
だけどパソコンがこれだけ普及した今読んだ方が面白いのかも。
いま読むと、古めかしさを覚えるかもしれないけど、ちゃんと書かれた当時の背景を思い浮かべながら読んだ方が面白いでしょう。





ちなみに蛇足だが、解説部分に非常に同感できることがあったので書いておく。西澤保彦氏記述。
重大犯罪を扱うミステリー作品についてまわる「こんなこと、物理的にありえない」とか「現実的じゃない」とか言う指摘。~中略~
それは、模倣犯が現れぬよう、わざと実行不可能な手順を紛れ込ませておく、ミステリー作家の良識からくるものなのだ。
だから「実行可能か否か」というつまらぬ観点から評しては、本作の真価を味わいそこねてしまう。




まぁ全てのミステリー作家に言えることではないと思うが。
それでもこの記述は本作品以外のミステリー作品に共通して言えることだと思う。
この意義を分からず批評するようにはなりたくないものである。



あ、あとこの著者、名前の通り二人で書いたってとこも面白いね。




★★★★



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