蒲公英草紙―常野物語 | Book Review’S ~本は成長の糧~

蒲公英草紙―常野物語

蒲公英草紙―常野物語 蒲公英草紙常野物語
恩田 陸

集英社 2005-06
売り上げランキング : 1,827
おすすめ平均

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★★★★★★★★☆☆


夜のピクニックに続いて恩田陸さん作品2冊目として読みました。この作品は「光の帝国」という作品の続編なんですね。森博嗣さんの「スカイ・クロラ」シリーズと同様のミスを犯してしまいました。この作品、134回直木賞にノミネートされていますね。芥川賞よりは直木賞派です。といっても、文学作品自体、読み始めたのが最近なので知識がありません。

◆せつなくて、でもあたたかい感動作品

舞台は20世紀初頭の農村です。村医者の娘、峰子とお屋敷の病弱な娘、聡子を中心にストーリーが進んでいきます。といっても、視点は常に峰子の視点で書かれています。峰子や聡子だけでなく、登場人物全てが非常に素敵で誰か一人だけを取り上げても物語が書けそうなぐらいにキャラ立ちしています。夜のピクニックでも感じたのですが、恩田陸さんはとても人物を魅力的に書くのが上手だと思います。

話は、春田一家が槙村(お屋敷)家に来てから転がりだします。詳しい内容はもちろん本書を読んでもらいたいのではしょらせてもらいます。ネタバレはどうしても好きではないので。この春田家にはある特殊な能力があり、この能力はもう一つの秘密と関連しています。ここがこの作品のミソでありますが、一番大切な点は違うところにあるように感じました。もちろん関係はしています。

最後のシーン(厳密には最後の一つ前)では思わず涙がこぼれてしまいました。心があらわれるようなとても清々しい気持ちにさせてくれます。そして、最後の語り手(峰子)の現在に戻るシーンは、作者が伝えたいところだったのかもしれませんが、なくてもよかったのではないかなと思ってしまいました。それほどまでに、この感動的なシーンは素晴らしい出来でした。

人々の思いや言動、記憶などを残していく(記録)ことができるようになったとしたらどのように感じますか?僕はぞっとします。人はやはり、不確かであるからこそ人たらしむことができると思います。人の生き方についても考えさせてくれる一冊です。

心に残った箇所を紹介します。

僕たちは成長するにつれて、文字通り自分を発見していくわけです。自分の姿を長い時間を掛けてみつけだしていく。僕は、このことが人間を人間たらしめているような気がするんですよ。

みんなの思いを繋げてくれる。そう思える存在を持てることが、どんなにも心をなごませるものか分かったのです。


文学の虜になってしまいそうなぐらいにはまっています。伊坂幸太郎恩田陸重松清が好みですが、直木賞にノミネートされている東野圭吾は弟がかなりの数を購入しているので、一度機会を見つけて読んでみたいと思います。一気にはまってしまいそうで恐いですが。常野物語第三作「エンド・ゲーム」も早く購入して読みたいです。

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