10月4日朝日新聞朝刊一面トップの記事です
記事の内容はこうです。
「日本郵政が民営化直後、グループ5社の広告・宣伝を大手広告会社博報堂に一括して発注する独占契約を結びながら、同社との間で覚書や合意書などの契約書類を一切取り交わしていなかったことが、朝日新聞の調べで分った。契約額は2年間で368億円にのぼる」
広告代理店とクライアントである企業との間で、広告宣伝費発注に関する契約書を交わしていなかったことが問題視されているわけです。
でも、私、広告代理店に勤務していますが、一部を除き、顧客企業と広告宣伝費発注に関する契約を結んでいないケースはレギュラー的にあります。
というか、そういう商慣習でやってきましたし、預かった宣伝費を媒体に発注する際、媒体社との間でも発注書すら交わしていないということが、つい最近までありました。
レコード会社から広告代理店に転職して一番驚いたのが、数千万円のテレビスポットの発注を20代の若い社員が電話一本で媒体の担当者と行っていたことです。
もちろん発注書なんてありません。
当時素人だった私が発注した金額と内容をテレビ局の担当者にFAXで送ったところ「そんなことやるなんて、おたくの会社は常識はずれだよ!電話にしてください」と怒鳴られた経験があります。
今はさすがに発注書は書いているようですが。
これは媒体社の広告料金がオープン化していないため、担当者の力量で価格を設定できるアロアンス(幅)があるからです。
悪い言葉で言えば、顧客を騙し、代理店を騙し、媒体社を騙し、そうしてできたプール金を万が一の時に使うということが当然のように行われていたのです。
だから、今回の朝日新聞の記事を読んでも「そんなに目くじらを立てなくてもよいのに」と思ってしまうのですが、さすがに日本郵政は、民間会社とはいえ、元は国民から集めたお金を使い、パブリックなシステムに保護されてビジネスをしてきたわけですから、マズイですね。
これに対し原口総務相は
「郵政は国民共有の財産であり、契約書類もない不透明な契約で、その財産が棄損されていなか確かめる必要がある」
と述べています。
しかし電通に次ぐ大手の博報堂ですらこういうズサンな取引をしているのですから、全国に何百とあるそれ以下の広告代理店の取引実体は推して知るべしです。
これを機会に広告ビジネスの取引実態を明確にしないと、いずれクライアントの信頼を失いかねない事態になると思います。
テレビやラジオで言えば、「視聴率」で商売する時代は終わりました。
新聞や雑誌で言えば、「発行部数」で商売する時代は終わりました。
インターネットで言えば、「ページビュー」で商売する時代は終わりました。
それは、何のための広告なのか?
それは、誰が見ている広告なのか?
それは、どのくらい見られた広告なのか?
そして、結果はどうだったのか?
インターネット広告の世界では当たり前に言われていることが既存媒体でも求められる日は近いのです。