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岩田一政、戸松秀典 「チャート式シリーズ 新政治・経済 改訂版」 (数研出版、平成11年) 224~226ページ「財政の役割と財政政策⇒財政の役割 財政の役割にはつぎの三つがある。①公共財の供給 公共財の供給とは、道路や橋、あるいは司法・警察・公衆衛生などの公共サービスのように、民間の経済活動では提供することのむずかしい公共的な施設・サービス(社会資本)を、企業に代わって財政が提供することをいう。②所得再分配 所得再分配とは、国民の間の所得のひずみを是正し、所得分配の公正をはかり、個人間の所得格差を調整することである。所得税の累進税率(→[注])は高所得者に高く、低所得者には低くなっている。財政は、このように税負担の軽重によって所得の平準化をはかるが、さらに高所得者から徴収した税は、恵まれない人びとに社会保障制度を通じて分配され、所得分配の不公平の是正に大きな役割をはたしている。[注]累進税率 所得金額が大きくなるにつれて段階的に高くなる税率。日本では所得税・住民税・相続税が累進課税の対象となっているが、所得税に対する累進税率は、最低10%から最高50%までの5段階である。※ 平成27年4月1日現在では、所得税に対する累進税率は、最低5%から最高45%までの7段階(https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2260.htm)。③経済の安定・成長 政府は経済の安定のため、増税や減税を通して財政規模を増減し、さらに、公共事業の追加やくりのべによって有効需要を調節し、物価の安定、完全雇用の維持、国際収支の均衡の達成をはかっている。また、経済成長のため、財政は、合理化や近代化のおくれた産業に補助金を支給して生産性の向上をはかり、道路・港湾施設など生産関連社会資本の充実によって、経済成長のための基盤整備を行ってきた。⇒財政政策 経済の安定・成長のための財政政策は、ビルト=イン=スタビライザー(自動安定装置)と補整的財政政策(フィスカル=ポリシー→[注])の二つに大きくわけられる。[注]フィスカル=ポリシー(fiscal policy) 景気調整を目的とした政府の積極的な財政政策をいう。補整的財政政策は正確にはcompensatory fiscal policyであるが、一般にはフィスカル・ポリシーとよばれる。1930年代の大不況以来、世界各国で広く採用された。①ビルト=イン=スタビライザー 財政には、自動的に景気を調整し安定させる機能が制度的に組みこまれている。好況期には、累進課税制度によって税負担がふえて投資や消費がおさえられ、有効需要が減退して景気の過熱を抑制する役割をはたしている。不況期には逆に税負担が減少して、その分だけ企業活動や消費活動にはずみをつけることとなる。また、歳出面でも、好況期には失業率が低下して、失業給付金や生活保護費などの支払いが減少し、逆に税収は増大するため、財政は黒字となり、その分だけ有効需要は縮小して景気の過熱はおさえられる。そして不況期には逆となる。このように、財政には不況期に景気を刺激し、好況期には景気を抑制させる自動安定装置をもっている。これがビルト=イン=スタビライザー(built-in-stabilizer)である。②補整的財政政策(伸縮的財政政策、フィスカル=ポリシー) 完全雇用と経済の安定成長を維持するために、政府が政府支出や租税を弾力的に操作するが、このような財政政策をフィスカル=ポリシーという。不況期には税率の引き下げ、各種の免税措置によって税収をおさえ、公共事業費によって政府支出をふやす。また、積極財政によって財政が赤字になれば、公債を発行して財源を補う。景気が過熱したときには、政府支出の削減をはかり、公共事業費のくりのべによって有効需要を抑制する。なお、不況時の景気刺激策は、とくにスペンディング=ポリシー(→[注])といわれている。[注]スペンディング=ポリシー(spending policy) 大不況克服をめざしたアメリカのニューディール政策で中心的な役割をはたした。これは、不況期の大規模な公共支出によって民間の有効需要の減退をカバーし、景気回復をはかる財政政策である。⇒ポリシー=ミックス 財政政策は、予算や財政投融資の運用によって景気や経済成長をコントロールし、金融政策は資金面から有効需要の調節を行う。このように異なる政策をもつ複数の政策を組み合わせることによって、経済の安定と成長といった複数の政策目標を同時に実現しようとする政策をポリシー=ミックスという。⇒財政投融資 (省略。郵政民営化などで制度が大きく変わったと思われるため)」
「安倍内閣総理大臣記者会見」 首相官邸HP平成28年6月1日「世界経済は、この1年余りの間に想像を超えるスピードで変化し、不透明感を増しています。
最大の懸念は、中国など新興国経済に「陰り」が見えることです。リーマンショックの時に匹敵するレベルで原油などの商品価格が下落し、さらに、投資が落ち込んだことで、新興国や途上国の経済が大きく傷ついています。
これは、世界経済が「成長のエンジン」を失いかねないということであり、世界的な需要の低迷、成長の減速が懸念されます。
世界の経済の専門家が今、警鐘を鳴らしているのは、正にこの点であります。
これまで7回にわたって国際金融経済分析会合を開催し、ノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツ教授やクルーグマン教授を始め、米国や欧州、アジアの経済の専門家から直接意見を伺ってまいりました。
その専門家の多くが、世界的な需要の低迷によって、今年、そして来年と、更なる景気悪化を見込んでいます。
こうした世界経済が直面するリスクについて、G7のリーダーたちと伊勢志摩サミットで率直に話し合いました。その結果、「新たに危機に陥ることを回避するため」、「適時に全ての政策対応を行う」ことで合意し、首脳宣言に明記されました。
私たちが現在直面しているリスクは、リーマンショックのような金融不安とは全く異なります。しかし、私たちは、あの経験から学ばなければなりません。
2009年、世界経済はマイナス成長となりましたが、その前年の2008年時点では、IMFも4%近いプラス成長を予測するなど、そのリスクは十分には認識されていませんでした。直前まで認識することが難しい、プラス4%の成長予測が一気にマイナス成長になってしまう。これが、「リスク」が現実のものとなった時の「危機」の恐ろしさです。
私は、世界経済の将来を決して「悲観」しているわけではありません。
しかし、「リスク」には備えなければならない。今そこにある「リスク」を正しく認識し、「危機」に陥ることを回避するため、しっかりと手を打つべきだと考えます。
今般のG7による合意、共通のリスク認識の下に、日本として構造改革の加速や財政出動など、あらゆる政策を総動員してまいります。そうした中で、内需を腰折れさせかねない消費税率の引上げは延期すべきである。そう判断いたしました。」
「「お金」は知っている 消費税増税による悪影響はリーマン、震災をはるかに上回っている」 zakzak2016年4月15日「 来年4月に予定されている消費税率の10%への引き上げについて。安倍晋三首相は「リーマン・ショックまたは東日本大震災級の災厄でも起きない限り、予定通り引き上げる」と再三再四にわたって明言している。
すると、財務省や与党の増税派は、今の経済動向からみて、首相が基準とするほどの衝撃を日本経済は受けていないと断じ、安倍首相周辺もその見方にほぼ同意せざるをえなくなっている。
増税中止を求める首相周辺では「首相の発言はこのまま増税すれば、今後リーマン級の不況を招き入れるという意味だ」という新解釈で乗り切ろうと苦心する有り様だ。
実際にはどうか。リーマン後、あるいは東日本大震災後に比べて、2014年4月以降の経済の落ち込みは軽いのだろうか。その度合いを図る経済データはいくつかあるだろうが、最もふさわしいのは国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費の動向だ。
そこで内閣府が毎月発表している消費総合指数を取り上げてみた。消費を測る政府の調査は、需要側の家計調査をもとにしたGDP統計の民間最終消費支出がある。また供給側ではデパートやスーパーの販売統計がある。需要と供給の両サイドを総合化した、最も現実に合った指数が消費総合指数だと、内閣府エコノミストは自負している。
グラフを見よう。リーマン・ショック、東日本大震災、そして8%消費税率引き上げのそれぞれの後の状況を比較すると、消費に最も激しく打撃を与えたのは消費税増税であることが一目瞭然だ。リーマン時の場合9カ月後には消費水準がリーマン前に回復した。東日本大震災時では5カ月後に震災前の水準に回復した。」
「 これに対し、14年4月の消費税増税の後2年たったが、消費水準は落ち込んだままだ。今年1月は若干回復したが、12年8月並みの水準である。しかも、消費税増税直後の落ち込み度合いはきわめて激しい。
さらに、1997年4月の消費税率5%への引き上げ後と比べると、やはり今回のほうの後遺症がはるかに重い。97年増税では翌年秋には消費総合指数が上向いている。
消費税増税ショックはリーマン・ショックや東日本大震災をはるかにしのぐとみなすべきなのだ。このまま、来年4月に予定通り増税すべきだと主張する財務官僚や与党関係者、あるいはメディアはまるで、日本経済に自殺を迫っているようなものである。
不思議なのはリーマン・ショック級ではない、という政府の見方である。消費総合指数は月例経済報告に含まれ、首相以下閣僚は全員が目を通しているはずである。内閣府は首相らに、ことの深刻さを報告しないのだろうか。
安倍首相はきっぱりと、「先の消費税増税はリーマン・ショックまたは東日本大震災級の衝撃をもたらしている。再増税でその誤りを繰り返すわけにいかない」と早々と、消費税増税の凍結を宣言すべきだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)」
「「お金」は知っている 財務官僚にハシゴ外された朝日と毎日 「増税」とっくに白旗を揚げていた」 zakzak2016年6月3日「 安倍晋三首相は消費税率10%への引き上げの2年半延期を決断した。筆者は1月15日付の産経朝刊1面題字下トップで「再増税中止宣言をせよ」と書き、首相の指南役である浜田宏一エール大学名誉教授に見せた。いくら正しくても、結果がそうならなかった場合、社内外の評判に傷がつくのがジャーナリズムの世界の現実である。
浜田教授は「総理はいつも最終的に正しい判断を下しますよ」と笑う。浜田教授と同じ内閣官房参与の本田悦朗駐スイス大使兼欧州金融経済担当大使らは、首相の意を酌んで着々と、しかも用意周到に増税中止の地ならしを進めていった。
米国のノーベル経済学賞受賞者、スティグリッツ、クルーグマン両教授らを招いて首相が意見を聞き取った一連の国際金融経済分析会合がそうだし、先の伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)は総仕上げだった。「消費増税なくして財政再建はできない」という財務官僚が敷いた増税包囲網を突破する作業は容易ではない、と見越した上での作戦だった。
何しろ、朝日、毎日、日経新聞をはじめとする全国紙の大多数の論説陣は財務省に洗脳されたままだし、麻生太郎財務相兼副総理、谷垣禎一自民党幹事長ら政権・与党内部の重鎮、財界や東大など経済学者の大多数も「予定通り増税せよ」の大合唱である。
財務官僚に支配される金融機関系のエコノミストたちは、「増税しなければ国債が暴落する」と、いつもの調子で煽(あお)り立てる。デフレ下の増税がいかに経済学上の国際常識から外れているか、を全く気に留めない増税脳で各界のエリートたちが凝り固まっているのだ。」
「 とどのつまり安倍首相は浜田教授の示唆したとおりに決定したのだが、肝心の財務官僚はどうか。「かなり早い段階で、来年4月からの税率引き上げにはこだわりませんと、言い出した」(首相周辺筋)と聞いた。とっくに白旗を揚げていたというのである。
してみると、麻生、谷垣両氏もおそらくそれを承知のうえで、「約束通りの増税実施を」と大見え切って下世話なメディアの関心を煽り、最後は首相に従う、という総理決断ドラマ盛り上げの一翼を担っただけなのだ。
最後まで「増税せよ」と叫び続けた財務省御用新聞は、いわば財務官僚にはしごを外されたピエロである。と言っても、原因はかれらの不勉強、不見識にある。財務官僚ですら、2年余り前の増税による災厄を認めざるをえなかったのに、朝日、毎日など論説陣の多くはほとんど気に留めなかった。
災厄のすさまじさはグラフを見れば一目瞭然である。国内総生産(GDP)の6割を占める家計消費は1997年4月の消費増税時、2008年9月のリーマン・ショック時よりもはるかに大きく落ち込み、2年経っても再浮上しない。
まさにL字型不況であり、再増税どころではない。増税延期に加えて財政出動を金融緩和に組み合わせる政策は当然の選択なのだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)」
「軽減税率 決着までの経緯」 NHKニュースウェブ2015年12月16日「軽減税率を巡る議論は、3年前、当時の民主党政権で、民主・自民・公明の3党が合意した「社会保障と税の一体改革」にさかのぼります。3党合意の末、平成24年8月に成立した消費税率引き上げ法では、引き上げ分の税収は、年金や医療、介護、子育てなどの社会保障に充てることが明記される一方、軽減税率の導入を検討することも盛り込まれました。法律の成立をへて、自民・公明両党は、政権復帰後の平成25年末にまとめた税制改正大綱に、軽減税率について、「必要な財源を確保しつつ、関係事業者を含む国民の理解を得たうえで、消費税率10%時に導入する」ことを盛り込みました。また、去年の衆議院選挙の自民・公明両党の共通公約では、平成29年4月に消費税率を10%に引き上げるのと同時に導入することを目指し、早急に具体的な検討を進めることが明記されました。」
今の日本経済は、減税すら妥当な局面であり、消費税再増税を再延期するという判断は至極当然だ。