日本に7体ある国宝十一面観音立像のなかで最も美しいされる仏様が、JR長浜の一つ先の「高月駅」から徒歩5分ほどのところにいらっしゃいます。どうしてもみなさんにお見せしたくて画像を探したのですが良いものが見つからず、長浜観光協会のパンフレットからお借りしました。絵葉書を買っておけばよかったと、心から後悔しています。

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頭上に乗った11もの顔は東西南北に向かい、人々のあらゆる悪や苦しみを取り除かれるという観音様です。まるでご自身がそれらをすべて引き受け、じっと耐えながらも微笑んでおられるような、そんな慈愛に満ちた表情です。たくさんの仏様を拝んでも、その中で心に残るお姿、お顔というのはわずかなもの。でもこの神々しいばかりの美しさを、わたしは決して忘れることはできないと思います。

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白洲正子はその著書「かくれ里」で、「近江で一番美しい仏像が、こんなささやかな寺にかくれているのは、湖北の性格を示すものとして興味がある」と記しています。京都・奈良に次いで、滋賀は国指定文化建造物が多い県であり、国宝は全国の1割を占めるそう。たびたびの戦火から守るために、近江の人たちは必死で仏像を運びだし地中に埋めたり水底に沈めたりしてきたそうです。その信仰心があったからこそ、今、わたしたちはそのお姿を拝むことができるのですね。

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観音の里、というだけあって実にたくさんのお寺がある高月の町。山間にある寺も少なくないなか、駅から近いところで、このような仏様が拝めるのは本当にラッキーなことでした。駅はきれいで周辺道路も整備されています。

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立派な山門に入ると

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これまた風情ある境内。本堂がすぐ見えています。手水舎(ちょうずや)の水は珍しく、下からの湧水です。

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このお寺は向源寺といいますが、この国宝十一面観音立像のほかにもい重要文化財である胎蔵界大日如来様など仏像が祀ってある「渡岸寺(どうがんじ)観音堂」が本堂わきにあります。台風のために人もまばらで、じっくりと仏様と対峙することができました。ここは仏像の前に長椅子がおいてあるのがありがたいです。

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歴史民俗資料館が隣接していますが、こんな茶屋を発見しちょっと入ってみることに。
台風のため店のおばちゃんも開店休業を決め込んでいたようですが、突然の客に慌てて対応してくださいました(笑)。はちみつ入りのドクダミ茶が、ことのほか美味。

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お茶なんか飲んでいないで、あとひとつくらいお寺を回ればよかったかなと、後から後悔したのはすぐ駅前に「高月観音堂」の存在を後から知ったから。なーんだ、こんなところにあったのならちょいと立ち寄ることもできたのに・・・と。マップは、駅の総合案内所にあると思うので必ずもらいましょう。

これからなら紅葉を愛でながら、半日くらいかけてじっくり回るとよさそうです。でも、近江にはそんなスポットが多すぎます。交通が発達していない分、歩くか、能率よく回るならクルマになってしまう。でもどうせなら、のんびりと過ごしたい・・・せっかちなわたしが、そんな気持ちにさせられるのが不思議です。


■近江路、湖北をゆく
(1)カバタか長浜か?竹生島を巡る旅
(2)京都からの竹生島日帰り旅
(3)ヤマトタケルノミコトを癒した湧水の里「醒ヶ井」
(4)住職が作るニジマス料理!?松尾寺と醒井楼
(5)渡岸寺観音堂~官能美をたたえた国宝十一面観音の最高傑作
(6)多くの仏様と出会う時間~滋賀県立近代美術館「祈りの国、近江の仏像展」
(7)「ロテル・デュ・ラク」から始まる湖北の寺社めぐり
(8)24時間滞在、高いホスピタリティ「ロテル・デュ・ラク」~施設編
(9)近江牛に近江野菜、近江米・・・近江食材満載☆ロテル・デュ・ラク~食事編
(10)絶景かな。一日一組の宿「湖里庵」の鮒寿司懐石
(11)精進料理と名勝庭園の寺、米原「青岸寺」