東京&京都 ほぼ日刊 追求!美食道


柏井さんに教えていただいてから、ずっと憧れの宿だった湖里庵。湖北は遠く、一日一組はハードルが高く・・・なかなか伺う機会がありませんでした。近江を旅することになり、ともかくなんとしても訪れようと思ったのは当然のこと。けれどやはり、ひとりでは気が引けたのと日程的に難しいこともあり、せめてお食事だけでもと予約をとりました。お食事もおそらく一日数組でしょう。ラッキーでした。

東京&京都 ほぼ日刊 追求!美食道 東京&京都 ほぼ日刊 追求!美食道


琵琶湖沿いの宿、とはいえここまで湖岸に面しているとは思いませんでした。湖ですから、強風でもさざなみが立つ程度。お天気がいいに越したことはありませんが、少し薄暗い琵琶湖も、この風景であればかえって情緒的でさえあります。

東京&京都 ほぼ日刊 追求!美食道 東京&京都 ほぼ日刊 追求!美食道


予約時間に合わせ最寄駅のマキノから送迎をしてくださいます。でもこの日は、昼前にロテル・デュ・ラクの送迎車から直接こちらに送っていただきました!!湖岸道路からだと景色もよくすぐなのですが、この日は台風の土砂崩れで通行止めだったので、ぐるりと山間のほうから遠回り。電車の本数は少ないしタクシーはないところなので本当に助かります。ありがとうございましたドキドキ

東京&京都 ほぼ日刊 追求!美食道


ともかく、美しい、の一言。
向こうに見えているのが海津大崎。春には桜一色になるところです。ちょうど岬に隠れて竹生島は見えませんが、これはこれでまたよし。湖面に見える棒のようなものは、昔の桟橋の跡だそう。

東京&京都 ほぼ日刊 追求!美食道


子供の頃から酒のつまみが大好きだったわたしは、当然鮒寿司も大好物。関東の方にはなじみがないかもしれませんが、琵琶湖でしかとれない二ゴロブナを塩と米と共に発酵させたなれずしで、強烈なチーズのようなにおいに、酸味。苦手な方も少なくないようです。鯖寿司や鮎の姿寿司、のようなものとは全く違います。

東京&京都 ほぼ日刊 追求!美食道


普通の懐石もされていますが、ここに来るなら鮒寿司をいただかなければ意味なし。ということでお願いしたのは鮒寿司懐石。お昼は8000円からになります。まずは一献頂戴し、鮒寿司の共和えから。
共和えとはつまり、鮒を漬けている米と鮒そのものを合えたもの。米の部分はもはやあまり原型をとどめていないので、食べない場合も多いのですがわたしは好き。ストレートにその鮒寿司の味わいがわかる食べ方であり、その美味しさに驚きました。ここの鮒寿司は、一言で言えば上品。美味しいです!

東京&京都 ほぼ日刊 追求!美食道


美しい八寸。魚卵は醤油漬けされたビワマスの子。あっさりとした味わいです。ビワマスは産卵前になると脂がのって美味しくなるが、顔つきも怖くなるといいます。子を守るために必死なのは、誰しも同じ。感謝していただかねば。

東京&京都 ほぼ日刊 追求!美食道 東京&京都 ほぼ日刊 追求!美食道


土瓶蒸し。鱧に松茸!この季節でよかったと思う最高の組み合わせです。量もたっぷり、あーなんという贅沢。

東京&京都 ほぼ日刊 追求!美食道


それにしても、やはり鮒寿司には日本酒!と思いますが、鮒寿司に合うワインもあるそうで興味がわきますね。
なれずしの歴史は古く、平安時代からその原型があったそう。冷蔵庫のない時代、貴重な動物性のタンパク源となる食品を保存する先人の知恵。素晴らしいと思いませんか?
発酵食品同士を合わせたこの一品も素晴らしく、ここではたと気づきました。そうか、鮒寿司はお茶漬けや鮭のつまみにそのままというだけでなく、こんな風にも食べられるのだと・・・湖里庵はそんな「鮒寿司の食べ方」を教えてくれる場でもあるのだと。

東京&京都 ほぼ日刊 追求!美食道


鮒寿司ばかりが出てくるわけではなく、バランスもいい。鯉の洗いをいただきつつ、八寸といいこの食べさせ方といい、なかひがしと似ているなぁと。包丁を握る若主人は、京都で料理の修業をされたといいます。どちらで、とは聞きそびれましたがもしや・・・などと考えると楽しくなります。

東京&京都 ほぼ日刊 追求!美食道 東京&京都 ほぼ日刊 追求!美食道
 

鮎の一夜干し。美味しいというだけでなく、これでもかと繰り出される琵琶湖の恵みに感動で胸がいっぱいに。本当にここに来られてよかったと、しみじみ思いながら箸を進めます。

東京&京都 ほぼ日刊 追求!美食道 東京&京都 ほぼ日刊 追求!美食道


揚げ物にすると、鮒寿司のくせがやわらぐことも発見。こうして見てみるとどれがメインということはよくわかりませんが、どれもが個性的なので不満は感じません。ボリュームもありますし、お座敷でゆったりといただけることを考えると、かなりCPは良いと思います。 

東京&京都 ほぼ日刊 追求!美食道 東京&京都 ほぼ日刊 追求!美食道


〆はもちろん、お茶漬けで。お茶ではなくだしを使ったほうが美味しいということは、家でお茶漬けを再現したときにわかりました。今まで何気なくお茶で食べていましたが、比べてみると違う。鮒寿司の味わいがひきたち、まろやかになるのです。

お茶漬けなんてさらっと食べたいものなのにそんなの面倒臭い!というわたしのような無精者には、お茶+鰹節がおすすめ。むしろさっぱりしてわたしはこの方が好きかもしれません。何にでも手間をかけられれば理想的ですが、それが面倒でトライするのをあきらめたり良い習慣を続けられなかったりするくらいなら、多少手抜きをしてもラクに楽しめる方法を考えたほうが得策だと思うのです^^

東京&京都 ほぼ日刊 追求!美食道


鮒寿司の生まれた地であるここ、海津。湖里庵はすぐそば(マキノ駅にもあり)に店を構える創業200余年になる鮒寿司専門の老舗「魚治」がつくった料理宿。鮒寿司懐石は、宿の名前を付けた遠藤周作の「他にない料理を」という一言から6代目が考案したそう。

東京&京都 ほぼ日刊 追求!美食道


お部屋から見る風景と、湖がすぐそこにある庭に出て見た風景とはまた少し趣が違います。そして日が少し差すと、湖の表情も変わります。琵琶湖の原風景・・・そんな言葉がぴったりのまさに絶景です。
非常によくできたHPをぜひ、ご覧あれ。丹念に見ると、やはりここは泊まってさらにゆっくりと付近を散策すべき場所だなと思います。

東京&京都 ほぼ日刊 追求!美食道


もともとの予定ではここは1時間半ほどで慌ただしく出ることになっていました。訪れたかった大崎寺は台風のために訪れるのは無理とわかったので、あとは米原の青岸寺へ向かうだけ。だからこそ、食事を終えてからも次の電車を待つために、まるで滞在客であるかのようにのーんびりと過ごさせていただくことができました。

東京&京都 ほぼ日刊 追求!美食道


仲居さんが料理を運ぶたびに、いろいろなことを教えてくださるのも良かった。琵琶湖がこんな色になったのは初めてだと、おっしゃっていました。台風で土砂が崩れ、山から琵琶湖に流れ込む川に交じり湖の色を変えてしまったということです。青く澄んだいつもの琵琶湖とは違い、グラデーションを描くように、確かに向こうに向かい色が変わっていました。
けれど、これもこのときだからこそ見られた風景と思えば、幸運。なにもかもが、怪我の功名とでもいうべき時間だったのです。

東京&京都 ほぼ日刊 追求!美食道

湖北の天気は山の天気。もともと変わりやすい面はあるそうです。海を見ると心が高揚しますが、湖は心を穏やかにしてくれます。料理は色々と取り寄せもできるようで、そのうちお願いしてみようと思っています。湖里庵さんには申しわけないのですが、ここはなんとなくひとりで過ごしたい場所のような気がします。大人であればあるほど、きっと魅力がわかる宿。いつかまた必ず・・・伺います。


■近江路、湖北をゆく
(1)カバタか長浜か?竹生島を巡る旅
(2)京都からの竹生島日帰り旅
(3)ヤマトタケルノミコトを癒した湧水の里「醒ヶ井」
(4)住職が作るニジマス料理!?松尾寺と醒井楼
(5)渡岸寺観音堂~官能美をたたえた国宝十一面観音の最高傑作
(6)多くの仏様と出会う時間~滋賀県立近代美術館「祈りの国、近江の仏像展」
(7)「ロテル・デュ・ラク」から始まる湖北の寺社めぐり
(8)24時間滞在、高いホスピタリティ「ロテル・デュ・ラク」~施設編
(9)近江牛に近江野菜、近江米・・・近江食材満載☆ロテル・デュ・ラク~食事編
(10)絶景かな。一日一組の宿「湖里庵」の鮒寿司懐石
(11)精進料理と名勝庭園の寺、米原「青岸寺」