激動の土日 第二部 ピナレロ・レーシングの熱きスピリット! | 自転車で糖尿病を克服した!

激動の土日 第二部 ピナレロ・レーシングの熱きスピリット!


パリ・カーボンとアングリル、2台のピナレロ
ちょっと一休み中の2台のレーシングマシーン、ピナレロ・パリ・カーボン(右側)とピナレロ・アングリル。自転車をあまり知らない人から見たらこの2台の違いはほとんどわからないかもしれないが、“通”が見ると、フレームやコンポ、ホイールなどそのグレードの違いは明らかかも…。まぁ、どっちのグレードが高いかというのはあえてここでは書かないが、ここでひとつ言える確かなことがある。どっちのロードバイクも素敵だ!


ちなみに、白い方のピナレロに付いているコンポーネントはカンパニョーロ・コーラス。赤い方に付いているコンポはシマノ・ティアグラ。

どっちがより高級なコンポであるかはあえてここでは書かないが、カンパ・コーラスのエルゴパワー(ブレーキブラケットのことね)の見てくれはなんとも精悍で格好良く見える。あ、もちろんシマノのレバーが格好悪いわけではない。握り心地という点ではこのシマノ・ティアグラのSTIレバーは最高だ。何時間握っていても手が痛くなる…ということはない。その点、カンパのレバーはどうなのだろうか…?

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【前回からの続き】

★場所:甲府トンネル手前の峠へと続く登り基調のワインディング・ロード
★登場するキャラクター:
 ヒデ氏:白いピナレロ・パリカーボンに乗り超高速で山道を走る。あらゆる高速移動物体を自動追尾する習性がある。
 B夫:ピナレロ君ことピナレロ・アングリルを駆り前方を行くヒデ氏を追う。
 謎のブラック・ライダー:スペイン製超高級ロードバイク、オルベア・オルカに乗り、ピナレロ軍団を一気にパス。だがそれがヒデ氏の“自動追撃プログラム”を作動させてしまったようで、思いもかけない高速バトルに巻き込まれてしまう。
 鉄人T氏:クロモリフレームを持つトマジーニを駆る今回のツアーの主催者。今回はTV撮影のためさまざまな制約が課せられているため、本来のパフォーマンスを発揮できないでいる。残念ながら今回の高速バトルには参加できずじまい

シーン2 謎のブラック・ライダー]

通称“謎のブラック・ライダー”と呼ばれる彼は徐々に速度を緩める。

黒のジャージに身を包み、うつむき加減にオルベア・オルカを走らせる彼は決して喜ばしい表情はしていない。

勝負に負けた…とは決して思っていない。

だが、別の意味で“やられた…”という感覚はある。

まさか、あの2台のピナレロがそれほどまでに執拗に追撃してくるとは全く思っていなかった。

何やらTVの撮影中と思われるワンボックス・ワゴン。そしてその後ろには3台のロードバイク…。

ブラック・ライダーは、それほど高速ではなかった3台のロードバイクをほんの気まぐれで追い越してしまったに過ぎない…。たったそれだけのこと。

だが、その何秒か後には、まず白いロードバイク-----おそらくピナレロ製の高級カーボンだろう-----からの猛烈な追撃を受けることになった。そしてさらに赤いロードバイク-----これもピナレロ製のはず、おそらくエントリーレベル-----もその追撃に加わった。

内心、2台のピナレロの過剰な反応に驚きながらも、彼は本能的に即座にギアを掛け、速度を上げてしまった。

誰しもライバルに追い越されるのはイヤなものだ。多少なりとも速さを求めるロードバイク乗りになら良くあること。期せずして、ブラック・ライダーはワインディング・ロードでの高速バトルに巻き込まれることとなったのだ。

だが、ブラック・ライダーにも意地とプライドがある。ピナレロたちの“理不尽”とも思える唐突な追撃に対してさえ、強烈な逃げで“応える”のは、ロードバイク乗りなら“礼儀”みたいなもの。

思わぬかたちではあったが、ブラック・ライダーも最善を尽くした。

だが、彼を追撃する2台のピナレロ乗りと来たら…。

結果としてプラック・ライダーは戦意を喪失した。

この先のことを考えるとこれ以上踏み続けるわけには行かない。

足が売り切れてしまっては、次に控える厳しい峠を超えて行くことなどできるはずがない。まだ納車されて間もないオルベア・オルカの性能もしっかりと検証したい…。そう考えると彼に残された選択肢はこの勝負から降りることだけだった。

彼の脇を通り過ぎて行った2台のピナレロたちはさらに高速で先を目指しているようだ。どんどん距離を開いていく。

先頭には白いカーボン製のピナレロ、そのすぐ後ろにベタ付きで赤いアルミ製のピナレロ。一体何のモチベーションが彼らをそこまで駆り立てるのだろう…。

ブラック・ライダーはそう感じながら、乱れた呼吸を落ち着かせるべく、通常巡航モードへと体内スイッチを切り替える。

コーナーをひとつ、ふたつ曲がる。そして3つ目のコーナーを抜けたとき、彼の前方には2台のピナレロはもういなくなっていた。

この登り基調のワインディングロードをどこまであんな速度で走り続けられるのだろう…。そんな考えは彼にとってもはや不要のものだった。

「もう“お遊び”は終わりだ。」

彼は大きく深呼吸しながらひとりごちると、ケイデンスを80前後に落とし、あえて軽めのギアを選択。緩やかな登りを“ゆったり”と呼べる速度で巡航しはじめた。


シーン3 白いピナレロ・パリカーボンに乗るヒデ氏]

彼はちょっと驚いていた。

妙なタイミングで自分たちを追い越していったオルベアに乗る黒いジャージのサイクリスト。それを打ち負かしたのはいい。仮想レースの追撃シミュレーションとしては完璧だ。

次のTOJのレースではもっともっと鋭いアタックを決めたい…。

そう願っている彼、ヒデ氏にとって、すべての高速移動物体は格好の練習相手。おあつらえ向きの獲物が目の前に現れたら躊躇なく利用させてもらう…。それこそが明日のレースのため…、それこそが自分自身のため…。

そう、そこまでは何の問題もない。驚くことなどなにひとつない。

彼が驚いたのはそのことではない。今すぐ自分の後ろで妙に挑発的な走りを見せているB夫というピナレロ乗りのことだ。すぐ後ろのB夫は何を思ったのか、ヒデ氏のピナレロにピタリとくっついて離れない。速度を上げてもそのままの体制で食らいついてくる…。

ヒデ氏は実は、一度アドレナリンが大量放出されてしまうと、なかなかそれを自分自身で抑えることができないことは認識している。

だからオルベア・オルカに乗るブラック・ライダーをパスした後も、ヒデ氏はすぐさま速度を緩めるはずもなく、そのままのペースで高速走行を続けた。

彼のこの行動をひとつだけ弁護すると、レースを想定した場合、彼のこの行動は基本的に大いに正しい。

ライバルを抜き去った後は、全力でその差を広げにかからなければならない…。というのはまさにレースの基本セオリーだ。ちょっとひるんだライバルに力の差を徹底的に見せつけることによって、相手の戦意を完璧に喪失させる…これができてはじめて勝利は確実なものとなる。

ライバルを追い抜いたくらいで足をゆるめるなど、まさに典型的なアマチュアライダーのすること。少なくともより高いステージを目指すのなら変な妥協はしない方がいい…。それが彼の自転車乗りとしての信条だった。

だが、そんな彼の完璧なレース・シミュレーションにもちょっとした計算違いがあった。

彼のシミュレーションの中では、B夫というエントリーレベルのピナレロに乗るライダーのことは全く想定されていなかったのだ。

オルベア・オルカを追い抜いた後は、そのままのペースをしばらくは維持するが、完全に相手の戦意を喪失させた後は多少“緩い走り”をしてもいい。ヒデ氏はそう考えていた。その後に続く甲府トンネルへの登りを最大限のスピードで登りきるためには、その戦略が一番いい…。

だが、そんな完璧だったはずのヒデ氏の計算もここに来て若干の狂いを見せはじめていた。ここで必要以上に足を使ってしまっては、甲府トンネルまでの登りで自己記録の更新などできるはずがない…。

彼は両足を高速回転させながら、どうしたものかと、ほんの一瞬だけ思案に暮れた。

だが、結論が出るのは思いのほか速かった。

そう、やるべきことはひとつだけ。何も考える必要はない。

生まれながらの“戦闘マシーン”とさえ呼べる彼の結論はとてもシンプルなものだった。

ブラックライダーだけでなく、B夫もちぎってしまえばいい!

そう決まれば、あとは自動プログラムが発動するだけだ。

彼はまるで自動操縦ミサイルのような鋭い風切り音を立てながら、緩やかな登りを信じられないスピードで疾走しはじめた!


シーン4 赤いピナレロ・アングリルに乗るB夫]


ヒデ氏との共同作業で、オルベアに乗るブラックライダーを見事にパスした。

うむ、さすがはヒデ氏。追撃体制に入るのも、相手をパスするのもなかなかの早業だ…。

多少感心しながら、B夫はヒデ氏の直後を、約1メートルの車間距離を保ちながら走り続けていた。

B夫としては、別に深い理由があってヒデ氏の後ろにピタリと付いているわけではない。

ちょっと自分の脚力を試したくなった…というのもひとつの理由かもしれない。

あるいは、妙に気持ちのいい高速ワインディングロードを思い切り疾走してみたくなった…というのももうひとつの理由かもしれない。

いずれにしろB夫は、オルベアに抜かれたその直後からずっとヒデ氏の後ろに付いたまま、ワインディングロードを高速走行し続けていた。

2台でオルベアを抜き去り、さらにその後もヒデ氏は速度を全く緩めず疾走し続ける…という事態が明らかになってからも、B夫はなんとかヒデ氏に食らいつき、スリップストリームを利用できる距離を維持しながら自分に鞭打ち続けていた。

キツい。かなり辛い。

だが、ここまでこのスピードを維持できたのはちょっとした快挙かもしれない。B夫は密かにちょっと嬉しくなっていた。

両腿の付け根から中心部にかけての大きな筋肉に力を込め、できるだけきれいな回転運動を続ける…という最近マスターしかけている新走法は意外に持続力があることに彼は気付いていたから、躊躇なくその力を使い続けても、もうしばらく持つだろう…というのが彼の読みだった。

そしてもうひとつ、今日、ヒデ氏とのちょっとした会話の中で学んだこと-----“根性”の重要性-----これを、B夫は今まさに実践しようとしていた。

B夫は自分に語りかける。

「まだまだ行ける。“根性”の続く限り、頑張ってみようじゃないか!

エントリーレベルのピナレロは高級カーボンのピナレロに負けない速度で風を切る。端から見る限り、誰もグレードの差など感じることはない…。少なくとも今、この瞬間は。

思わぬかたちで開始された、ピナレロ2台のマッチレース、どこまで続くのか? ゴールは一体どこにあるのか? そして誰が勝者となるのか???

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これは大変だ。またまた続く!!!


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