向かい風鈍行便! 逆風!それでも走り続けるのか!? | 自転車で糖尿病を克服した!

向かい風鈍行便! 逆風!それでも走り続けるのか!?



山梨県との県境!
この写真3枚、つい一昨日撮影したもの。

遠くの方に見えるサインには「山梨県」と書いてある(!)。ついに到達した山梨県との県境!

クルマで行ったのではない。自らの足で自転車を漕いで到達したのだ!この感激は携帯で撮影したデジタル写真などで伝わるものじゃない。人気ブロガーtaka-cさん のおかげで成し得たこの偉業!涙なしでは語ることなどできるはずもない!ちょっとしたエピソードは次回のブログで書く予定。

その前に今回は、前々回までに書いた連載ドラマチック・リアル・ストーリーを完結しなければならない。そう、あの情け容赦なき清掃車とのバトルの話だ。

さて、どこまで書いたっけ???

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【前回までのストーリー】
ロードバイクに乗るB夫は、ある日の夜、多摩川沿いを走る車道を快調に走行していた。そして遭遇した大型の道路清掃車両。B夫は、時速30km/hでコンスタントに走り続けるその清掃車の後ろに付いてしばらく走り続けた。大型車両の後ろは完全な無風地帯となり、ロードバイクにとっては理想的な安楽ゾーンとなっていた。

そのまま走り続ければいいものを、彼は、その安楽さに退屈してしまったからなのか、信号で若干スローダウンした清掃車を一気に抜き去り、愚かにも前方へと飛び出した! 彼の計算では30km/hを超える速度を維持できればそのまま清掃車をちぎれるハズ…ところが、B夫の意に反して、清掃車の前方では全く情け容赦のない向かい風が吹き荒れていた!

だが、もう後戻りはできない…またも始まった無謀なチャレンジ、がんばれるか、B夫!

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一瞬後悔の思いが彼の脳裏を駆け抜けた。失敗したか…

だがすぐに、きっとできる!という信念でそれを打ち消した。

たかが時速30km/hちょっとの巡航、それができないようではロードバイク乗りとは呼べない!

彼、B夫はすぐに頭を切り替えると両腿の付け根に力を込めた。

時速35km/hを維持するのだ!距離はあと数キロ!この区間だけを全力で行けばいい。

「それっ!」

B夫は後方の清掃車のドライバーには決して聞こえるはずのないかけ声を彼の愛車「ピナレロGTターボ」(あれ? 「ピナレロ君」という呼び名まで突如変わってしまったのか!)に掛けると、清掃車をちぎるべく一気に加速を開始する。

さすがはロードバイク乗り!

そんなかけ声が聞こえて来そうな見事な加速で、B夫の乗る「ピナレロGTターボ」はグイグイ加速する。清掃車との距離を鮮やかに広げていく。

だが、この道路では横綱級の存在感を持つ大型清掃車は、こんなこと程度では全く動じるそぶりを見せない。

内燃機関を持たず、重量わずか10キロにさえ満たず、ガリガリにやせ細った貧弱な骨組みしかない“交通弱者”とも見えるような自転車……そんな乗り物に多少強引にパスされたとしても、蚊に刺された程度にすら感じない…そんな余裕を感じさせるほど、大型清掃車はいまだに威風堂々、終始安定した時速30km/hのペースをしつこいほどに保ち続けている。

「やった! これなら大丈夫!」

B夫は最近編み出した新しいペダリングテクニック「股の付け根から大きく上下に動かす走法」の効果が出たな…とちょっと誇らしい気分になりながら、清掃車との距離を決定的なものにすべく、さらに「ピナレロGTターボ」に鞭を入れる。

B夫は一瞬後ろを振り返る。

大丈夫だ。もう距離は充分とは言えないまでも、多少は開いた。もうひとがんばりで完全勝利を手にすることができる!

B夫はもう一段ターボの効果を上げるべく、さきほどの新式走法の回転スピードを上昇させる。

時速は35km/h。B夫の描いたシナリオでは、ここからスピードがさらに数キロは上がるはずだった。

だが、速度計の数値は35km/hを決して超えることはない。

「おや…」

原因はわかっていた。

別に新式走法に欠陥があるわけでもないし、ましてターボチャージャーが故障したわけでもない。(“気合い”という名のターボチャージャーはいまだ健在だったが…)

疲労だ。

そう、このエンジン、非常に燃費が悪いのだ。すぐに“疲労”と言う名のガス欠症状を起こす。

この強烈な向かい風の中、たとえ新式走法といえども時速35km/hを維持するのは相当に骨の折れる作業となる。

約数分間に渡って全開に近いパワーを出し続けてきたB夫という名のエンジンは、ここに来て急速にその勢いを失いつつあった。

何百メートルか後方の大型清掃車両は、相変わらず安定した走行を続けている。時速30km/hの速度はいまだ不変だ。

だが、B夫は自らのエンジン不調に関して、まだそれほど悲観的になっていたわけではない。

大丈夫。30km/h以上をキープさえできれば絶対に追いつかれないから…

彼はそう思って、なおも両腿の付け根に力を入れ続ける。

だが、ほんの1分前と比べて、B夫という名のエンジンを載せた「ピナレロGTターボ」は明らかに速度が下がって来た。

時速31~32km/h。先ほどの威勢のいい走りではもうない。

とはいえ、この向かい風の中、最高出力が1馬力にも満たない乗り物としては上出来のスピードなのかもしれない。後方の大型清掃車との距離は、微妙にだがまだ広がり続けている。

本人は気付かないが、もはやB夫の表情はサイクリングを楽しんでいる人のそれではなくなっていた。

口はだらしなく半開きになり、目は前方をしっかりと見据えてはいるが、もはやさっきまでのしっかりした目つきではない…

がんばれ、31km/h、いや30.5km/hでいい! それをなんとか維持できれば…

B夫はガス欠を起こしたエンジンに語りかけ続けるが、それほど効き目はないようだ。“言葉のターボ“もそのパワーアップ効果はたかが知れている。

その状況も長くは続かなかった。

1~2分経過したろうか…遂に、B夫の最も恐れていた事態がサイクルコンピュータに表示されることとなる。

警告音もない。

派手なLEDの点滅もない。

だが、そこに示された数値----時速20km/h台の速度----は、「ピナレロGTターボ」と大型清掃車との距離がもうこれ以上開くことはない…という冷酷な事実を告げていた。

いや、距離が広がらないだけならいい。だが事態はもっと深刻だ。このまま走り続ければ、遠からずあの大型清掃車に追いつかれる…。そんな許しがたい状況になることは計算しなくてもすぐにわかることだった。

この多摩川沿いの幹線道路には曲がり角がほとんどない。川沿いをひたすらまっすぐ先へと進んで行く。

道路脇には待避所などない。後続車をやり過ごすスペースもない。

もしも、万が一大型清掃車に追いつかれたら最後、その状況を打開する手だては、それ以上の加速のできないB夫にも、そして清掃車のドライバーにも残されていない。断続的に通過する対向車をぬって、半端な速度で走る「ピナレロGTターボ」をパスするなど、鈍重な大型道路清掃車にはとてもできそうもなかったからだ。

何の問題もなさそうに平和にゆるやかに流れ続ける晩秋の多摩川…。だがそのすぐ脇でこんな絶望的な状況が起きているなど、誰が想像し得ただろう…。

いずれにせよ。B夫にできることはガス欠のエンジンに鞭打つことだけだった。

半開きの口はさらにだらしなく開き、目線は宙をさまよう…。安定していたはずのB夫のライディングフォームは無惨にもバランスをくずし始める…。

だが、速度が上がらない…。

時速28km/hがやっとの状況が続く。

「風よ止め!」

B夫は別のターボを求めて、天に祈りはじめた!

だが、そんな身勝手な祈りを、神様が、はいわかりました、と聞き入れるはずもない。

もう限界か…

B夫の「ピナレロGTターボ」はその名前に新しく付け加えられた2語の接尾語が完全に不釣り合いになる速度で、弱々しく巡航していた。

後方から清掃車のディーゼルエンジンの音がB夫の耳に聞こえはじめた。「ピナレロ…」と清掃車との距離がもはや無視できないほどに近づいてきたことを、B夫にはっきりと伝える音だ。

だが、「ピナレロ…」の速度はそのままだ。これ以上のスピードアップは望めない。

それでも“気合い”という名のターボだけはまだまだ健在だ。なんとか必死の形相でスピードアップを試み続ける。

もう心拍数という名の収縮拡張運動(=ピストン運動)はほぼ限界値まで上がっていることは確実だ。

「とにかく行け!行くんだ!ピナレロ…」

さすがに自らのがんばりにも限界を感じてきたB夫は、それでも何らかの状況の好転を期待して後ろを振り返る。

だが、彼の淡い期待はあっさり裏切られる。清掃車のシルエットがはっきりと見える。明らかにさっきより近づいている。距離は100メートルもない。

彼が恐れた最悪の事態……もうこれは確実な未来と呼ぶしかなかった。

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それでも彼は最後の“ターボ”を振り絞り、悪あがきとも呼べる抵抗を続けていた。

もう清掃車はすぐ後ろまで迫ってきている。

もはや振り返る必要すらない。その特徴的なディーゼルエンジンの音がすぐ後ろで聞こえるから、そのことは確認しなくてもわかる。

無駄な努力…と言ってしまえばそれまでだろう。だが見方を変えれば、むしろ健闘した…と言えないこともない。

この厳しい向かい風の中、もっとあっさり追いつかれてしまっても良かったのに、「ピナレロ…」はなんとか粘りに粘り、もうすこしで交差点に差し掛かる…ところまで来ていたからだ。

交差点までの距離はあとほんの数百メートル。

だが、すべての“ターボ効果”を使い果たしたB夫はもはやこれ以上“あがく”ことさえできなかった。

B夫は走行中であるにも関わらず、目をつぶろうとさえ思った。後方約15メートルの地点にまで、あの大型清掃車に迫られてしまったから。

「私が無謀だったのだ! どうか許して…」

ディーゼルエンジンの音はさらに近づく…

距離は10メートルもないかもしれない。

8メートル…6メートル…

大型清掃車は容赦なく近づいて来る。大音量のディーゼルエンジン音が間近で聞こえる。

「いくらブロックしてしまっているからと言って、そこまで近づかなくても…、このままじゃひかれちまう…やばいゾ!」

だが、B夫には「ピナレロ…」を加速させる力は全く残っていない。

「あぁ…」

思わず一瞬目をつぶったその時、

騒々しい音源はいきなり右後方に方向を変える。

「え?」

清掃車は急に進路を転換して、右車線、つまり反対車線へと出る!

速度差はわずか数キロだからそんなに速くはない。大きな清掃車の黄色いボディがB夫の右数メートル横を、今までと変わらない安定した速度で通過していく。

まるで何事もなかったかのようだ。清掃車は特に無理して追い越しをかけているようなそぶりは見せない…。

……

そして、我に帰ったB夫は、やっとのこのあたりの状況を理解した。

清掃車は決して反対車線に出て追い越しをかけていたわけではなかったのだ。

そう、世田谷B地区にほど近いこのあたりに差し掛かって、多摩川沿いのこの道は幅が広くなり、片側2車線の道路になっていたのだ。

だから清掃車は別段苦労することなく、単純に右側の車線へと“車線変更”をしただけだったのだ!

そして清掃車はそのまま右車線を直進し、交差点の先へと消えていく…。なんのことはない。清掃車は直進用の車線(右側車線)を普通に通って先へと向かうだけだ。

B夫はこの交差点を左折する予定だったので、今いる左側の車線のままでいい。

つまり、交通は全く平和そのもの…何も問題など起きなかった、というわけだ。

つまり、タイミングの良いことに、清掃車に追いつかれたその場所が、まさに道幅が広がるポイントと偶然にも一致したというわけだ。

まさに計算したようなタイミングだった。

あまりに“ターボ”を効かせ過ぎたB夫は、熱くなり過ぎて、2車線になることさえ忘れていたのだが、今、その状況をはっきりと理解した。なんだか不思議な気分になった。

信号待ちの間、B夫は考えた。

さっきの「風よ止め!」というB夫の願いは、神様は見事に却下したのだが、もしかしたら、その代わりに、こんなにもドラマチックなタイミング演出をしてくれたのかもしれない…と。

そして「ピナレロ…」に小声で語りかけた。

「それにしても、向かい風の限界走行はキツいや! でもいい練習になったかな…」

さらに、天に向かってもうひとつだけ都合のいいお願いをした。

「次は追い風にしてくださいね!」

【清掃車との大バトル編 ~終わり~】

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次回はオフ会ツーリングに見る自転車パフォーマンスの科学的検証、「値段とスピードの間に相関関係はあるのか???」の予定!

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