さて、本日も以前にお話した内容の続きになります。
『失神』のアプローチに関してはこのブログでもお話しましたね。
http://ameblo.jp/bfgkh628/entry-10968982596.html
今回は『失神』した患者さんは『心電図のどこに着目すべきなのか』をお話しようと思います。
その前に少し前回のおさらいも含めてのお話をします。
『失神』の鑑別疾患を網羅すると下図のようにたくさん出てくるのですが、とても覚えれませんね。
大きく3つのグループ①cardiovascular syncope ②orthostatic syncope ③neurally mediated syncope に分けて考えると良いでしょう。
注意すべき点としては、鑑別疾患『VINDICATE』のVにあたるVascularを忘れないでください。ですから、cardiogenic sycopeとしてではなく、cardiovascular syncopeとして捉える事が重要です。
SAH、Aortic dissection、PEなどはこれに含まれます。
さらに、orthostatic syncopeでは脱水や消化管出血だけではなく、AAAや子宮外妊娠破裂、肝癌破裂なども忘れないでください。
そして、『薬剤性失神』も見逃されやすいので注意です。
それでもわからない場合はよくあります。もう一度鑑別の表をじっくりと眺めて、そしてしっかりと『cardiovascular syncope』を除外していく姿勢が重要になります。(安易に迷走神経反射と診断しないように)
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さてさて、本日は『失神患者さんの心電図』についてです。どんな疾患を想定して心電図を眺めるのでしょうか。
結論を先に言うと
① 虚血
② ポンプの異常(HOCM)
③ 不整脈(A-V block、WPW syn、Brugada syn、Prolonged QT syn、arrhythmogenic right ventricular dysplasia:ARVD不整脈源性右室異形性)
④ その他(SAHに見られるcerebral TやPEで見られる前胸部誘導のnegative T)
こんなところでしょうか。『なんかおかしな心電図だな』と思ったら、心電図だけで診断しようとせずにcardiovascularを除外していくことと、積極的に循環器にコンサルトすることも大事だと思っています。
ARVDは見たこともありません。知っているくらいです。PEのように前胸部誘導でnegative Tが見られたり、イプシロン波が出現するようです。http://www.hosp.u-toyama.ac.jp/clla/seiri/ecg/kongetu_ecg/arvd.html
肺塞栓の心電図に関してはhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9118684
肺塞栓のSⅠQⅢTⅢ patternは有名ですが、頻度は少ないです。むしろ前胸部誘導V1-3でのnegativeTは特異的でないが、高頻度で見られます(emboliのsizeに依存する)。前胸部誘導V1-3でnegativeTをみたら肺塞栓もまじめに考える(肺塞栓でもトロップTは陽性になることあり)ことも大事です。
実際の心電図です。前胸部誘導は左下です。(なんでこんな取り込み方になったのかと言わないでください。)
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最後に少しだけ『Brugada症候群』について
前胸部誘導の心電図ですが、V1~V3で右脚ブロックとST上昇を認めます。
この心電図波形は『Brugada波形』ですが、これに失神などの臨床症状を伴ったものや家族歴があるものを『Brugada症候群』といいます。つまり、Brugada波形をみたら、失神の既往歴や突然死の家族歴などを聴取することが大事になります。
type1をcoved type, type2、3をsaddle-back typeともいいます。
type1はtype2.3よりも多く、Brugada症候群に特徴的です。
特徴としては
①肋間を2つ上げて測定すると感度が上昇する
②心電図が変動する。 Type1⇔Type2 normal⇔Type1など
③日本人を含め東洋人に多い
④男性に多い
⑤成人での発症 平均年齢41歳での発症
診断は電気生理学検査(EPS)が基本ですが、どんな場合にEPSを施行しICDを植え込むかはcontroversialです。日本では下記のアルゴリズムに沿って行われることが多いです。
本日は以上です。