Discreet Music : Brian Eno | Yokohama Beat Junkie

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4年前に書いた記事で「Discreet Music」について言及したので、ここでもうちょっと詳しく書きます。ジャンルや時間軸を無視するブログだなぁ。

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Discreet Music : Brian Eno

Brian Enoがアンビエントシリーズを開始したのが78年作の「Ambient 1/Musicfor Airports」(過去レビュー)からですが、アンビエントのプロトタイプとなるものはその前から存在していた訳で、それが「Discreet Music」。

Enoが交通事故で入院した時に、アンビエントの啓示を受けたのは有名な話。友人が持ってきてくれた18世紀のハープ音楽レコードを、壊れたステレオで小音量再生していた時に、音楽は環境の一部になり得ることに気づいたのでした。環境音楽を構築する実験の一環として作られたのが「Discreet Music」だったのです。

レコードでいうA面には同一フレーズやドローン(持続音)が延々と緩やかに続きますが、メロディの骨格が残っているあたり、聴き手にわずかながら「聴く作業」を要求します。環境音楽が「聴く作業」を要求しない音楽だと定義付ければ、これは環境音楽からちょっと外れるかもしれない。かすかにヒーリングミュージックやニューエイジの香りがします。旧B面に収録されているのは歪められて、重量化・延伸化・均一化された「パッヘルベルのカノン」。かなり実験的に構築されており、異形の「パッヘルベルのカノン」になってます。これも意識の表面を漂う作品。

まてよ…、異形の「パッヘルベルのカノン」…。我が日本でも、約25年前にそれを作った人間がいた…。それは戸川純。名作「玉姫様」のラストを飾る「蛹化の女」こそ正しくそれだ。10代の頃を思い出す。更には「パンク蛹化の女」こそ異形の「パッヘルベルのカノン」だ。