プラッソン盤天国と地獄 | Intermezzo ~幕間のおしゃべり~

Intermezzo ~幕間のおしゃべり~

しがない歌劇愛好家Basilioの音盤鑑賞録。
備忘録的に…

本作も様々なバージョンがあるが、この録音は最も長いものだとか。プラッソンの指揮のもとにメスプレ、セネシャル、トランポンといった当時の仏国の名手を揃えた録音ということで、期待値もあがる(笑)

まずはプラッソンの軽い焼き菓子のような洒脱な音楽が大変お見事!この版は音楽の出来はともかく、ともするとバレエが多くてやや間延びしそうなのだが、それを補って余りある愉快さで乗り切る。なんといってもテンポの柔軟さが素晴らしい。かなりゆったりめのところとドライヴするところの落差があるのだが痛快にこなしているし、弱音の上品さなど非常に魅力的。

ユーリディスの名花メスプレは、コケティッシュさにも事欠かないし、技巧的にも満足いくもの。ちょっと調子が悪いのか或いは衰えが来ている頃なのか高音が安定しないのが残念だが、上品な風情と内実の奔放さが際立つ彼の国のマダムを体現している。オルフェのセネシャルは、この人もううますぎですよ(笑)優雅で端整なのに3枚目みたいな役柄をやらせたら彼以上のひとはいないのでは。とってつけたような愛を語る最初の重唱から素敵!ジュピテルのトランポンはいつもながら味のある声で健闘。虚勢を張るところなど傲慢さ、間抜けさ、人の良さのうまいバランス。ただ、もう少し遊んでくれるかなと思っていた面も。以外と歌の多いプリュトンはビュルルが歌っていて、ここでも藝の広さに唸らされる。ラクメのジェラールではあんなに品と情熱のあるイケメンだったのに、その品と情熱のまま道化役になっている。特にアリステの歌の裏声には参ってしまうww本作のトリックスターたる世論にはなんとロード!!ちょっともったいないぐらいリッチで深みのある声にうっとり。その声にプラッソンのゆったりめのテンポが相俟って、理由もない貫禄と発言力のある世論になっていて非常に皮肉が利いている。

脇役の神々もコマン、ベルビエ、ラフォンと信じられないキャストだし、聴いたことのなかったマレブレラが演ずるメルキュールや、同じくペレの演じるディアーヌなども技術あり演技ありで舌を巻く。

ドゥセ主演のものとはまた違う本作の魅力を伝える名演!