【2015ハロウィン創作】本当の君(3) | BANANAFISH DREAM

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着替えを済ませたアッシュがリビングに顔をだした。もう怒ってはいないようだった。

「英二、コーヒーを作ってくれ。子分たちと打ち合わせがしたい」

「わかった。書斎に運べばいいかい?」

少しホッと安心したのか、英二は柔らかく微笑んだ。

「あぁ、助かる。ボーンズ、コング、ちょっと来い」

手で合図をして二人を呼び、彼はクルっと背を向けて書斎に向かう。

「は、はい!」

二人は慌ててアッシュの後を追った。

***

「お前達、英二の行動にもっと注意しておけ」

書斎に入るなり、アッシュはボーンズとコングに忠告した。厳しい表情で言われると二人は申し訳なさそうに返事をするしかない。

「へ、へぇ。。。」

腕組みをしたまま、アッシュはつづけた。

「いいか、あいつは俺たちと違って危機意識に乏しい。あれでも本人は気をつけているつもりだが、時々危険を忘れちまうようだ」

「そう。。。ですね」

いくつか思い当たるところがあったのか、二人は頷いた。

アッシュに日々教育された子分達にとって当たり前のルールが英二には通じない時がある。子分のように扱うつもりは全くないが、最低限のことを守らねば、英二の命に危険が及んでしまう。それはアッシュが最も恐れていることだった。

アッシュは窓の外を眺め、ディノ・ゴルツィネのオフィスが入るビルを無言で見つめていた。

「突然、予想外の行動に出ることがあるかもしれない。お前達が傍にいる時はよく注意しろ」

「「は、はい!」」

返事をした後、コングがアッシュの様子を伺うように聞いてきた。

「あ、あの、、、ボス、聞いてもいいですか?」

「なんだ?」

「俺たち、英二のこと気に入ってます。優しいし、気も効くし、まるでスキッパーみたいだって、あいつのこと。。。」

「何を知りたいんだ?」

アッシュの苛立を感じたコングは、一瞬顔を青ざめながらも前から気になっていたことをたずねた。

「どうしてあいつを。。。手がかかるって分かっていながら、ここにいることを許したんですか?あいつの勝手にさせてもいいんですか?」

「。。。」

アッシュの眉間に深い皺が刻まれたのを見たボーンズは、冷や汗でびっしょりになっている。そしてコングの背中を小突いた。

「おまえ、何を言ってるんだよ!! ボスには。。。考えがあるからそうしてるに決まってるだろ?」

「ボ、ボス。。。す、すみません。余計な事を!」

コングはようやく余計な事を言ってしまったことに気づき、アッシュの背中に向かって頭を何度もさげながら謝り始めたが、彼の耳には全く入ってこなかった。

(オーサーとケリをつける前に英二を日本へ帰さねば。。。)

そう思った途端、胸の奥が重く感じられた。

”そばにいてくれ。今だけでいい。”

身も心もボロボロになり、英二の膝にすがりついて泣いた夜。英二はアッシュを励まし、ずっとそばにいることを約束した。

英二が「ずっと傍にいる」ことを願ったとしても、それは到底無理な話だとアッシュは頭では分かっている。だが心が追いつかない。どうしても英二に向かって「日本に帰れ」と言うことが出来なかった。

あの夜、自分がどれほど弱く、どれほど人の愛情に飢えているのかをアッシュは自覚し、そして英二がそれを無条件で与えてくれることを知ってしまった。

涙を流すアッシュの背中に置かれた英二の手や、すがりついた彼の膝の体温にどれほど安心し慰められただろうか。冷えきって空っぽになってしまった心に、英二からの優しさや無償の愛情が注ぎ込まれ、自分が血の通った人間であることを思い出したあの夜から、アッシュの中での英二の存在は絶大的なものになった。

「チッ…」

子分からの指摘は当然のことだった。アッシュはまるで自分が英二に執着しているかのように感じられ、思わず舌打ちをした。

それをアッシュの怒りだと勘違いした子分はすっかり怯えて固まっていた。

しばらくの沈黙の後、アッシュは振り返った。

「。。。英二が勝手にしたわけではない」

落ち着いた声でそうかえした後、彼は瞳を閉じた。

「。。。ボス?」

「俺があいつに頼んだことだ」

つぶやくようにぼそりと答え、アッシュは再び窓の外に視線を向けた。

子分たちは理解していないようだったが、それ以上聞いてはいけないと感じたようで、何も聞いてはこなかった。

*続*





(あとがき)
アッシュは子分たちに「英二に危険が及ばないようよーく見ておけ!」とふだんから言っていたのではないでしょうか。。。

英二から見たアッシュと子分から見たアッシュは全く違う姿でしょうね。本当のアッシュを知っているのはごくわずか、そして彼と心を通わせられたのは英二のみだと思います。


明日はハロウィンですね。皆さんどのように過ごされるのでしょうか?

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