数日後、英二はコングと一緒にダウンタウンを歩いていた。彼はポップコーン店の前で立ち止まった。
「英二、ポップコーンを買うから少し待っていてくれ」
「うん、分かった。僕はあそこにいるよ」
英二はポップコーン店のすぐ近くにある売店を指さした。漫画の最新作をチェックしようと移動すると一台のバイクが目の前で停まった。フルフェイスなので顔は見えないが、その人物は英二をじっと見ていた。
(なんだ…?)
思わずコングを呼ぼうかと思ったが、聞きなれた声が聞こえてきた。
「よう、英二!」
ヘルメットを外した人物を英二は良く知っていた。
「シン!」
こんなところで会うとは思わず、英二は驚いた。
「何やってんの?」
「これからアッシュと会う約束をしているんだ。そっちこそどうしたんだよ?」
「今から張大へ行くんだよ。この通りは近道だから時々通るのさ」
「マーディアのところ……」
「ショーターが死んでしまって寂しくなっちまったから、時々顔をだしているんだ」
「そう……」
ショーターの死に責任を感じている英二は俯いてしまった。シンは慌てて英二の肩を軽く叩いた。
「お前のせいじゃないって!」
「でも……」
その時、ダウンタウンをみまわってたリチャードがシンと話す英二を見つけた。
(あれはチャイニーズのボスだ……どうして英二と話している?)
シンに慰められている英二を見てリチャードは硬直した。
(何を話している? やっぱりあいつはスパイじゃないのか?)
「英二、悪かった。嫌味を言うつもりはなかったんだ」
「うん、分かっているよ
「そんな顔するな。そうだ、これやるよ」
そういってシンは小さな袋を渡した。
「これ、何?」
「チャイナタウンで人気の中国茶さ。リラックスするぜ」
「ありがとう」
「俺、そろそろ行くわ。それじゃ」
「うん!」
英二は手を振った。
ずっと二人のやりとりを見ていたリチャードは英二が何かを受け取ったのを見てますます疑いを深めていった。
(あいつ、何を受け取ったんだよ? 確かめてやる)
彼は英二をつかまえて白状させよう思ったが、ポップコーンを抱えたコングが先に英二のところへ行った。
「英二、おまたせ……むしゃむしゃ」
「わ、すっげー大きいポップコーンだな」
「こんなのSサイズじゃないか」
「……ははは。行こうか」
コングと英二は歩き出した。
(ち……運のいい奴。でも俺は騙されないぞ。あいつは敵だ、追い出してやる……)
リチャードは英二の背中を睨みつけた。
<続>
更に誤解されてしまった英二…。大変です!