英二はアパートの部屋を一室ずつアッシュに見せて説明した。
「ほら、ここが君の書斎だよ。たくさん本があるだろう? 君は勉強家だからよくこの書斎で本を読んだりコンピューターで調べ物をしたりしているんだよ」
アッシュは本棚に置いてある一冊の本を手に取って見つめた。
「――この本……以前に読みたいと思っていたやつだ。こっちの本もだ……」
「あっ、少し思い出したんじゃないのかい?」
「うーん、微妙だな……」
「じゃぁ他の部屋も見てみよう」
二人は寝室に入った。
「――結構たくさん服があるな。これは全部俺が着ていたのか?」
「そうだよ。君は時々すごいお坊っちゃんに変身して僕を驚かせることもあるんだよ。でもその度、クリーニングに出さないといけないから、僕は結構大変なんだよ」
英二が愛嬌たっぷりに、おかしな顔をして言うのでアッシュは思わず笑ってしまった。
「ハハハ……でもこんなにあると整理が大変だな」
アッシュはクローゼットからスーツを取り出して眺めた。一瞬、そのままベッドに放り投げそうになったが、
(おっと、いけない――叱られちまう)
そう思い直して、元にもどした。
「……えっ?」
アッシュは自分の行動に驚いていた。
「どうしたの?」
「俺、無意識にこのスーツをクローゼットに戻したけど――ふだんの俺なら絶対にそのままベッドに放り投げるはずだぜ」
「それってどういうこと?」
「服を放り投げようとした時、あんたに叱られるって思ったんだ……」
「じゃぁ、僕の事を覚えているんだね」
「――すまない、こんなことしか分からない」
「いいんだ、仕方ないよ」
「あんたって優しいんだな」
「変な事言うなよ、全く。それにあんたじゃなくていいって……英二でいいよ」
「じゃぁ英二、この寝室は誰が使っているんだ? 」
「あぁ、僕達が一緒に使っているんだよ」
「一緒に……? 他にも部屋があるのに俺はお前と同じ寝室を使っているのか?」
アッシュは驚いて英二を凝視した。
「そうだけど―― 何か変かな? どうしたの? 」
「――そういうことなのか、なーんだ、ははは……」
アッシュは一人で勝手に納得して笑っているが、英二には分からない。
「ここは――本当はおまえが所有している家で、俺が世話になっているってことだろう?」
「――えっ? 違うぜ――ここは君の家だよ」
(アッシュ、勘違いしている――?)
アッシュが何を考えているか分からず、自分でもどううまく説明していいか分からずに英二は困った。眉を寄せて固まっている英二を見て、アッシュは彼の背中から体を抱き寄せた。
「アッシュ? どうしたの? 」
(な、なんだよ?突然……)
至近距離で自分の顔を見つめられて、たまらず英二は赤面していまった。
「世話になっている御礼をしないとな……」
アッシュの視線はどこか挑発的だった。
「君――何を言っているの?」
「いーから、もう黙れよ」
アッシュは英二の唇を人差し指で抑えた後、突然ベッドの上に彼を押し倒した。
「……!!」
<続>
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あれれ? アッシュ、どうしたのかな? 勘違いしているみたいですけど……次回をお楽しみに
シリアスが精神的に重いので、ちょっと気分転換します……
バナナフィッシュ・スペシャルボックスのパクリで、「らぶばな・スペシャルボックス」を作りました(←もちろん妄想上ですよ)
その中に入れたいグッズその1.【アッシュ・グラス】です。
※こんなグラス、ありませんよ~。おふざけです(笑)
他のグッズもまたご紹介します♪