シンの戸惑いと憧れ  第四話:友達 | BANANAFISH DREAM

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 アッシュは腕組をして、冷ややかな視線を二人に送っていた。いつも無表情でいることが多いのに、表情はやや歪み、眉を寄せ、苛立ちを隠そうともせず睨みつけていた。



「何をやっていると聞いているんだ――」



 もう一度彼は聞いてきた。英二とシンのどちらに聞いているのか言わなかったが、シンはきっと自分に聞いているのだと感じた。



(怒っている……あのアッシュが感情的になっている……)



「これは――ストレッチをしていて……」



 英二の上にのっかっていたシンは慌てて立ち上がった。



「ふぅーん……英二を押しつぶしてストレッチしていたのか?」


 

 アッシュは更にシンを追い詰める。


「いや……そうじゃなくて……」



 スキンシップをとるためにストレッチを更にリクエストしたシンは少々歯切れ悪く答える。



「シン、お前―― 他にやることがあるだろう?」



 凄みをきかせた声で睨まれ、シンはゾクリとする。



「あ……それは……」


 

 仲間を助けるために調べ物をしていたのに、こんなところを目撃されてしまったシンは口をにごす。



「あいたたた……」



 その時、英二が腰に手をあててようやく立ちあがった。そしてアッシュを見た。



「――やぁアッシュ! いま帰ってきたのかい?」



 にっこりと笑ってアッシュを見るが、彼は少し口をすぼませて英二をジロッと見ただけで何も答えない。



「……」



 明らかに機嫌が悪いアッシュを見て、シンは「やばいぞ――」と内心思う。リンクスの子分なら絶対に近寄らないであろう。



 ところが英二は全く気にせずアッシュに近づき、彼の背中をポンと叩いた。



「――アッシュ、おかえり! 昼飯食べるかい? 君の好きなエビとアボカドのサラダを作ったけど――、誰かに食べられちゃうんじゃないかってハラハラしてたんだよ?」



 機嫌の悪いアッシュに愛想よく話しかける英二を見て、シンは彼が怒鳴られるのではないかと心配になった。



 ところが――アッシュはニヤッと軽く笑った。



「おいおい――お前は俺よりもサラダの心配をしているのかよ? 薄情な奴だな」



 その表情は穏やかで、つい先ほどまで怒りのオーラを漂わせていた人物だとは思えない。


 

(――あれっ? アッシュ、機嫌悪かったはずなのに……)



 驚いてシンはアッシュを見た。



「そうさ、僕はサラダの方が心配だよ――あははは……。今、用意してくるよ」



「あぁ、頼むぜ」



 シンは茫然としていた。



(何だよ、こいつら……)



 どこか羨ましい想いで二人を見ていた。




  ***




 その後―― アッシュ達は縫製工場の地下に拉致されたチャイニーズの仲間を救助した。



 英二は面倒をみる人数が増え、忙しそうに動き回りながら全員の面倒を見た。笑顔を絶やさずに世話をする彼に対し、シンは感謝の気持ちでいっぱいになる。



 シンは兄や仲間の様子を見る為に、彼らが眠る部屋に入ろうとした。すると部屋の中から明るい笑い声が聞こえてきた。



「――日本のお粥をはじめて食べたよ。俺は結構いけるな」



「英二、こんどチャイナタウンに来いよ。メシをおごってやるぜ」



「――本当に!? ありがとう――。僕、中華料理好きなんだよね。特に麺類が」



「焼きソバでも汁ソバでも、好きなもの食わせてやるよ」



「やったね! じゃぁ僕もなにか日本料理を作っていくよ」



「楽しみにしているぜ」



 いつの間にか英二はチャイニーズの仲間とも打ち解けていた。



「すげぇなぁ、英二は……」 



 シンは思わずつぶやいた。その声で英二がシンに気づいた。



「やぁシン! 皆――今日はお粥を食べてくれたんだよ」



「そうみたいだな――英二、ありがとうよ」



「どういたしまして、じゃぁ僕、洗濯してくるよ」



 器をのせたトレイを持って、英二は部屋を出て行った。シンは兄のラオと目があった。



「あいつ――変わった奴だな。あんなガキみたいな奴がアッシュ・リンクスと行動を共にしているだなんて不思議だぜ」



 
「そうだな、でもあいつ――いい奴だぜ」



「確かにそうみたいだな」



 他人には厳しいラオが珍しく誰かを誉めた。シンは自分のことのように嬉しくなった。



「本当に変な奴なんだぜ。年上のくせに、あいつと話しているとガキといるみたいだ――」


 
 思い出し笑いをするシンを見て、ラオが言った。



「いつの間にか、あのジャパニーズと仲良くなったんだな。お気に入りか?」



「えっ、そうか? まぁ――そんなところだ」



 思わぬつっこみを受けて、シンは動揺を隠そうと落ち着いて答える。



「でもあいつはリンクスの人間だぞ」



「英二はリンクスの仲間じゃねぇよ」



 シンの言葉を理解できずにラオは眉を寄せる。



「は? じゃぁどうしてアッシュと一緒にいるんだ?」



「さぁ? 友達だからじゃねぇのか?」



「アッシュ・リンクスとお友達――? はっ、笑わせるぜ」



 アッシュを敵視するラオには、無感情で冷酷に見える彼が友達を必要としているようには見えなかった。ましてアッシュと英二の人間性は正反対で、共通点など全くないように見えた。


「俺にはよく分からねぇよ……。兄貴、ケインに用があるからちょっと行ってくるよ……」



 アッシュと英二の関係について考えたくなかったシンは逃げるように部屋を出た。



<続> 次回最終


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チャイニーズのグループにも大人気の英二です(笑)。またアッシュが怒っちゃうかな…?(笑)



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