タコ焼きパーティー (前編) | BANANAFISH DREAM

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もしバナナフィッシュがハッピーエンドで終わるなら~365日あなたを幸せにする小説■BANANAFISH DREAM


 その日、59丁目のアパートに日本からの荷物が届いた。

 

「英二、日本から何か届いたぞ――」



 アッシュは宅配業者から荷物を受け取り、キッチンで料理をしていた英二に呼びかけた。



「あ、やっと届いたんだね? 今そっちへ取りに行くよ!」



 英二がバタバタと足音を立ててアッシュのいるリビングにやってきた。荷物が届くのが待ち遠しかったようで、彼はとても機嫌がよかった。



「この荷物は中に何が入っているんだ?小さいくせに結構重たいぞ。」



 何が入っているのか不思議に思いながら、アッシュは英二に荷物を渡した。 



「いつ届くかずっと楽しみに待っていたんだよ!」



 受け取った英二は口笛を吹きながら箱を開け始めた。それは鉄板で、小さな丸い窪みがいくつも入っていた。



「何だ、この鉄板は? 窪んでいるぞ……何か型をとるのか?」



 アッシュが不思議そうに鉄板を凝視し、指で触ろうとしたが 独特の油っぽい匂いがしたので手を引っ込めた。



「これはね、日本の調理道具だよ―― 『たこ焼き』 の鉄板さ!」



「たこ焼きって何だ?」



「日本の食べ物だよ。おやつみたいなもんだな。この鉄板で焼くんだよ」



 英二は妹に頼んで、日本からたこ焼きの鉄板を送ってもらった。新しい鉄板より、油が適度にしみこんだ鉄板の方が作りやすいので、実家で使っていたものを送ってもらった。



「ふぅん、こんな変わった鉄板で焼くのか」



「このへこんだ部分に生地を入れて焼くんだよ。なぁ、今日さっそく作ってみていいかい?」



「別に構わないよ。ぜひ、その『たこ焼き』って料理をお前がどんな風に作るのか見てみたい」



 アッシュは たこ焼きに興味を持ったようだ。彼が日本に関することに興味を持ってくれて英二は嬉しく思った。



「ありがとう! ボーンズとコングも呼んでいいかな? たこ焼きは皆でワイワイ食べると美味しいんだ」



 大学の友達たちと時々たこ焼きパーティーをしたことを思い出した英二は、ぜひアッシュにも友達同士で楽しむささやかなホームパーティーを体験してほしいと思ったのだ。


「まぁいいけど」



 そっけない返事だったが、英二は十分嬉しかった。


「よし、今日は『たこ焼きパーティー』だ! さっそく買い物をしなきゃ!」



 腕まくりをし、英二は冷蔵庫の中を確認しだした。楽しそうに準備にとりかかる彼を見て、アッシュは密かに微笑んだ。





  ***




 夕方、英二に招かれたボーンズとコングがアパートにやって来た。



「よぅ英二、今日は変わった料理を作るらしいな――」



「楽しみにしているぜ――」



「うん、じゃぁ始めようか!」



 エプロン姿の英二はあらかじめ作っておいた生地を温めて油を塗った鉄板に流し込んだ。



「へぇ――! 変わった鉄板だなぁ」



「これ、どうするんだよ?こんな板で本当に料理ができるのか? 」

 

 二人はたこ焼き用の鉄板を不思議そうに色々な角度で見ている。



「俺も不思議に思っていたんだ」



 アッシュもそう言い、リンクス達は不思議そうに鉄板を囲んでいる。



「じゃぁ始めるよ。油を塗った鉄板に 生地と切った材料を入れるんだ」



 英二が生地を流し込み具を入れようとした時、



「俺、それをやってみたい!」



 コングが手伝いを申し出た。



「うん、じゃぁ窪みにタコを入れてよ」



「オーケー」



 コングはスプーン山盛りにタコをすくって鉄板のひとつの窪みに全て入れた。



「あっ、コング! 窪みには、切ったタコを一つだけ入れるんだよ」



 慌てて英二がタコをとりだした。



「そうなのか? ケチらずにたっぷり入れればいいのに」



「タコ以外にもネギとか生姜とか入れるものがあるからね……僕が手本をみせるから、見ておけよ」



 苦笑いしながら、英二は手際よく材料を入れ始めた。リンクス達は興味深くその作業を見ている。



「――え英二、生地が焼けてきたみたいだぞ」



「あ、本当だ。そろそろひっくり返そうか」


 

 英二はタコピンを手にして、型から生地をくるりとひっくり返した。焼けた生地はきれいな半円になっていた。



「おぉ、すっげぇ! 魔法みたいだ!」



「まるでショーターの頭みたいにつるっつるだぜ!」



「きちんと丸くなるんだな――」



 リンクス達はそれぞれ感嘆した。とくにボーンズは綺麗に丸く焼けたたこ焼きに驚いて、



「俺、ひっくり返してみたい!」


 鉄板を指さしてアピールした。



(なんか皆、子供みたいだな……)


 英二は優しくにっこりとほほ笑んで答えた。

 

「もちろんさ!さぁ、やってみて!」



 英二はボーンズにタコピンを渡した。



「うわ、この鉄板の上は熱っちいな――」



 そう言いながら、ボーンズは鉄板の端の窪みの生地をぐりぐりといじるが、まだ完全に焼けていないので上手にかえすことができない。タコピンでかき混ぜ過ぎて、ボロボロになるだけだった。



「おっかしいな、英二はちゃんとひっくり返せたのに」



 不思議そうにボーンズは英二を見た。



「鉄板の端は火が通りにくいからな。真ん中から返すといいよ。見ておけよ」



 そうアドバイスをしながら英二は器用にたこ焼きを返した。



 いくつか焼けたたこ焼きを皿に盛り、ソース・かつおぶし・青のりをかけた。



「さぁできたよ!皆、食べようぜ! これはビールがとてもあうんだよ。僕、とってくるよ……」



 冷蔵庫のあるキッチンまで行こうと思って英二が立ちあがると、アッシュが人数分のビールを手にして立っていた。



「もう完成したんだろう?とりあえず、ビールでも飲もうぜ」



 そう言ってねぎらうように英二にビールを渡した。



「ありがとう! さすがアッシュ、ナイスタイミングだ! 皆、乾杯して食べよう」



 つまようじをたこ焼きにさしてリンクス達に渡したが、ボーンズとコングは眉をしかめていた。



「英二、何だよこの枝は? 」



「これ、食えるのか? 」



 つまようじを見るのが初めてだという事に、英二は気が付いた。



「これは『つまようじ』といって、これでたこ焼きを食べるんだよ」



 そう言って、見本を見せる為に英二はつまようじにたこ焼きを刺した。



「美味そう~」

 


 出来たての熱いたこ焼きを丸ごと口に入れた英二はその熱さに驚いた。



「あっちぃ―!!」



 その様子を見たアッシュは慌てて冷水をグラスに注いだ。



「何やっているんだよ……ほら、これを飲めよ」



 アッシュは熱さで涙ぐむ英二をいたわるようにグラスを渡した。その様子をリンクスたちは不思議そうに見ていた。



(ボスって優しいんだな……)



(こんな事ボスにされた事ねぇよ)



「本当だね……僕、そそっかしいな。君たち……もし猫舌なら、ちゃんと冷ましながら食べたほうがいいかも」



「しっかりしろよな――英二!」



 笑い声とともにそれぞれたこ焼きを頬張tった。




<続>


たこやきたこやきたこやきたこやきたこやきたこやきたこやきたこやきたこやきたこやきたこやきたこやきたこやきたこやき


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たこ焼きって食べるのはもちろんですが、作るのも楽しみのひとつですよね。私が作ると上手に丸くなりませんが、キレイに丸く焼けるのも見ていると自分もひっくり返したくなりますナイフとフォーク。でも上手くひっくり返せないんですけどね……しゃぼんちゃん


何だか粉モノを食べたくなってきちゃいました(笑)。たこ焼き買ってこようかなぁラブラブ

次回の後編もお楽しみに……★


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