シリーズ、酒づくり唄、第5回。  ---- 酛すり唄 ----     | “Mind Resolve” ~ この国の人間の心が どこまでも晴れわたる空のように澄みきる日は もう訪れないのだろうか‥

   2007-02-22 16:50:50
   
   
うんどりゃぁ~んっ! 
すっかしまぁ、どうしたもんかねぇ、この地球わ? 
んまぁ、それでも佐渡の朝は、この時期、それなりに寒いし 
通常の40代の方々よりは全身の筋肉が硬めの俺は
朝はやくに風呂へ入って身体を温めて全身の血液の循環を整えてから
一日の動きをはじめるようにしてんだけど
昨日や今日なんて、いつものように朝から贅沢にも湯船につかって
目を瞑って耳を澄ましてしると 瞑想に耽ってるわけではない。決して。
風呂の窓の外から、今頃から彼女を捜し求めて泣いてる鶯がいたぜ。
徳川家康が待つまでもない
既に佐渡でも2月なのに鶯が鳴いてる。
今、自然界は織田信長なのか?  
いや、まだ目に見えて、そこまで は行ってねぇよな。この日本では
   
さて、今期の酒づくりの仕込みも、残すところ一週間となり 
来月から夏を迎えるまでには ほとんどすべての仕込みタンクの酒が
火入れされて便に詰められる。
季節労働者の酒づくり職人(5年生…実質3年)
とはいえど
今年の俺は失業者にもニート・モドキにもならずに
そのまま蔵元で製品づくりの手伝いをさせてもらおうとは思ってるんだけど
アルバイトだけでは家族を養うのがギリギリの自給自足…
稲作と野菜づくりの野良着作業が控えてる。
ファーム・ビギナーズの生活も3~4年目になるので
そろそろ今年からは、何かそれなりにプロフェッショナルなこともしねぇとなんだけど
プロといのは、俺の中では、常にカネになる仕事をやっているということで
「カネもらったら素人じゃねぇんだよ」
が口癖の俺としては、カネにならないことはすべて、単なる作業か趣味でしかない。
どちらにしても今日を生きるためには重要なことなんだけど
やはり何事も、やるからには、それなりにカネに結びついた方がいい。
目的は、稼ぐことや何かの成功のためではない。
生きるために必要な経済。
自分がやりたいことをやるための経済。
やってみたいことに挑戦するための経済だ。
ところがだ。やりたいこと、挑戦したい、チャレンジしたいことが先行して
食い繋ぐために収入を得ようとしてしまう生活に嵌められちまう場合も
なくはないんだよな。
そこで大事なのが心のヨリドコロなんだろうけど、
以前の俺は、それがすべて酒だった。
飲んだ飲んだ。
騒ぐためにビールを飲む。
女を口説くためにブランデーとウィスキーのボトルを空ける。
カクテルはナンパにつかい、日本酒で頭がパーになる。
胃液を吐こうと胃に穴があこうと血を吐こうと
飲んで飲んで飲みまくる。
稼いだカネの大半は酒に消えて
食パンとカイワレ大根で過ごす月末。
そんなふうに毎晩のように飲み明かした日々もあったし、
独りで飲むのが面白くないので
ヤスコちゃんのいた店で一晩で8万つかったこともある。
たいしたことはねぇな。たかが8万円。
世間一般の労働賃金で残業代含めて約一週間程度の金額だ。
でも大変な金額。春闘のベースアップ親父も驚く金額! 
六本木や赤坂の座っただけで4万の高級クラブや
新宿の桜通りでドアのノブを触って開けただけで2万! 
という世界とはちがう! 
   
人類は、玉蜀黍やモルトから蒸留式に酒を造ってみたり 
米や葡萄を醗酵させて酒を醸造してみたり 
芋で焼酎を造るとか、麦とホップでビールを造るとか
酒造の方法や製法にも様々な生き方がある。
とくに日本酒なんて、「こんなの誰が考え出したのか?」というほど奥が深い。
   
   酒づくりに使う米というのは何種類かあるんですが
   中でも六甲の清水で育つ山田錦というのが
   吟醸酒を造るのに最も適していることになってて
   それを半分(50%)以下まで磨く…精白するんですが
   それに加える酵母のタイミングやバランス、センスも
   どなたかの作詞・作曲の、曲づくりのように大切です。
   そして水は、研ぐときに最初にその米が吸い上げる量も
   愛称(水分バランス)がベストマッチでないとならない。LIVEの準備の如く。
   んで、研いで一晩 寝かせた米を翌朝に120度の蒸気でLIVEする…
   じゃなくって、釜で蒸すわけですが
   早朝、一番で触る米というのが
   そのホンモノに限って、なんというか
   女の肌のように、白く美しく、ひんやりとしていて、たまんない。

   
どこかの掲示板 へ、こんなことを書き込んでしまった覚えもありますが 
どこが奥深いのか? 
この内容では意味がよく通じない。
まず、雨の日も風の日も夏の暑さの中はオロオロ畦道を歩き
自然界の苗を稲に育てて、それを秋に借り入れてから
モミガラを取った米を用途に応じて精白する。
これも30キロの袋入りの米が何百トンともなると、てぇへんな仕事だ。
運ぶテマヒマも木枯らしに吹かれようと汗まみれのTUNAMI 星人。 ???? 
酒米というのは、そのままは使わない。必ず芯白を残して丸く磨く。
それを水で研いで、米に浸透した水の加減を
センス、バランス、タイミングよく見る。
これはねぇ、その蔵元の杜氏さんの腕による 。 http://ameblo.jp/badlife/entry-10019346988.html
して、しばらく時間(半日程度)を置いた米を釜で蒸すわけなんだけど
蒸した酒米というのは、普通に一般家庭で炊いた米とはぜんぜんちがう。
堅い。芯があって、喰ってみても歯ごたえがありすぎる。
んで、その蒸米をまずは、酒母【しゅぼ】というものを作るために
ある程度の温度を保った状態を見計らって酵母を加え
これまた時間をかけて丁寧に麹米にしてゆく。
それをじゅうぶんに乾燥させた物に水を加え、
翌日に通常に蒸した米を掛米【かけまい】として掛け合わせる。
そうしてできた酒母というのが、
酒づくりでは酛【もと】という仕込みの最初になるわけなんだけど
この時点での乳酸の生成が
次なる仕込み段階を経て良質な醪【もろみ】として育成される酒づくりには
とても重要なポイントのひとつでもあるらしい。
でもって、その酛という“酒の源”に更に、3~4段階で
造ろうとする酒の種類(吟醸、純米、本醸造、レギュラー種など)に応じて
添仕込、仲仕込、留仕込という工程で、
毎日毎日、同じように研いで蒸した物を
麹米と掛米に分けて仕込んでゆく。
多いときで1t の酒米を120度の蒸気釜で蒸す。
デカイ釜が床から約1.5メートルの高さに足場台で囲われているので
その お立ち台の上でステンレスのスコップを持って踊る俺…
じゃなくって、掘り出す俺。毎朝。
ほかの人は、翌日に仕込む米を研ぐ人もいれば
既に仕込んでいる状態のタンクや気温と湿度も含め 
四六時中、常に仕込む温度を気にしながら醪をつくる。
それを2週間~半月~一ヶ月…、場合によっては
それ以上の醗酵期間を経て、醗酵の程度がいちばんいい状態に達した時に搾る。
その搾った物が、はじめて酒となる。搾ったあとに残った物が酒粕となる。
搾りたての日本酒は すべてナマの状態なので
保存期間を長くさせるために、“火入れ”という作業で
便に詰める前に60度以上の熱を加えるわけなんだけど
通常はタンクから出すときと便に詰めるときの、合計2回の火入れ作業がある。
それをまったくやらないのが生酒で、一回だけが生貯蔵酒ということになる。
同じ酒でもすべて味が変わってくる。
まぁ、そういう感じで作ってるわけ。“日本酒”という米から作る酒は。
ほんとはもっと複雑なんだけどな。
   
んで、長らく更新が途絶えていた感じの“酒づくり唄”。
今日は、ようやく5回目で、やはり…
   
    酒造り唄は、酒造り作業のときだけ唄われる「作業唄」である。
   作業時間を計ったり、仕事疲れなどを癒すために唄われるもので、
   『越後酒造り唄』の中で伊野義博大学教授が著したところによると、
   酒造り唄の役目には次の六つがあるという。
   ①計時や回数確認、作業の開始、終了の合図、仕事をしている確認、
   危険防止、作業の効率化、といったように作業を円滑にする役目、
   ②眠気覚ましや防寒のため、肉体的な苦しさを和らげる役目、
   ③ストレス解消、思いの発露、気分の高揚、といった神経的なつらさを
   克服するため、
   ④いい酒ができるようにと祈る、
   ⑤仲間意識を培う、そして、
   ⑥歌う行為自体を楽しむ。
   これらの役割を持って、それぞれの工程に合わせて酒造り唄が唄われた。
   唄は酒を造るために存在していた、としている。
    もちろん、佐渡においても同じように考えられる。しかも、かつての佐渡の
   酒男たちの多くは越後から来ており、したがって酒造り唄は越後のものが
   ほとんどそのまま使われていたようである。あるいは佐渡独自にアレンジ
   されたものがあるのでは、と佐渡在住の杜氏経験者たちに尋ねてみたところ、
        ---------------- 中略 ----------------
   これらの唄は人から人への「口伝」であるために、歌詞も節回しも当然 地域差・
   個人差があって、細かな点まで見れば杜氏の数だけのバリエーションがあった
   と考えてもよいように思われる。そして、佐渡の各蔵元での酒造り唄がどうだったか
   については、当時の酒男たちの唄を聞いてみるしかないのであるが、残念ながら
   そのような録音や資料は今のところ見つかっていない。
    したがってここでは、佐渡に来ていた酒男たちの二大出身地である越路町と
   赤泊町のうち、越路町に伝わっている酒造り唄を中心に、少し他とも比較しながら
   書いてみようと思う。資料は「越路町酒造り唄保存会」がまとめたものと、
   新潟県教育委員会発行『越後の杜氏と酒男』によった。 
   
   
(一) 流し唄  本格的な仕込みの前の準備に、
         ササラという道具で酒造りの道具を洗うときに唄われた。
   
(二) 桶洗い唄  シゴキという竹製の道具を使って桶を洗うときに唄った。
   
(三) 米洗い唄  とぎ桶の中に一斗ずつの米を入れて足洗いするときに唄った。
   
(四) 数番唄 (数え唄)  漬米に水をかける回数を数えたりするときなどに唄われた。

   
       sadoshyushi1500
   『続 佐渡酒造誌』(新潟県酒造組合佐渡支部) からの抜粋による。

   
   
ということが書いてある、 この本からの抜粋。
   
   
(五) 酛すり唄 朝方仕込んだ酛(酒母)が夕方に柔らかくなったら半切りという平たい木桶に分け、
           櫂ですりつぶすときに唄われた。
   
     一、 トロリトロリと いまする酛は 
          酒に造りて江戸へ出す 
   
     一、 江戸へ出すとは昔のことよ
          今は世が世で 地ではける 
   
     一、 地でもはける酒 名取りのお酒 
          酒は剣菱 男山 
   
     一、 男山より 剣菱よりも 
          わしが好いたは 色娘 
   
     一、 娘島田に 蝶々が止まる 
          止まるはずだよ花じゃもの 
   
     一、 花と見られて 裂かぬは口惜し 
          咲けば身がなる 恥ずかしい 
   
     一、 花は千咲く なる実は一つ 
          九百九十九は 無駄で咲く 
   
     一、 早く突け突け 東が白らむ 
          白らむ館で鳥が鳴く 
   
     一、 館屋代で 鳴く鳥 軍鶏【しゃも】だ 
          軍鶏が三度 鳴きゃ 夜が明ける 
      
     一、 どれもどなたも ここらでチョイト 
          チョイトつけましょ 長煙草 
   
   
という具合に、今でこそ、こういう唄は誰も歌わなくなったし、
唄の記述にあるように誰もが煙草を吸ってるわけじゃない。
造り手も、煙草でバカになった舌では、その酒の本当の風味は判らない…と思う
そしてそのように、その蔵元の仕込みの大きさ(年間の酒造量)によって 
秋から冬場の間、週に何度かずつ酒の酛づくりが繰り返された昔も今も 
俺が務めさせてもらっている蔵元では変わらない。
とにかく伝統的な手づくり。
米は、佐渡産の五百万石が主流。
水も、すべて井戸水。小佐渡山脈伏流水。
その恵みで、丁寧に仕込むことが基本。
だから、全国新酒鑑評会、6年連続の金賞受賞。
新潟県内ではトップの栄冠。
杜氏さんの腕がちがう 。   
   
   
   
   
       次回は、“仕込櫂”